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6

メイドとして働き始めるので途中から呼び方変わります。

 公爵家に着いた次の日、私は父親(公爵様)の部屋に呼ばれた。


 そこには公爵様の他に町に来ていた執事と護衛の騎士、義兄たちと初めて見るメイド服を着た女性計6人が居た。


「エミーリア、君をようやくこの家に迎え入れることができて私は嬉しいよ」


 言葉とは裏腹に公爵様の顔はどこか暗い。


「改めて紹介する。私はアルベルト・ヴァレリー。ヴァレリー公爵の現当主だ。そして君の義兄クラウス10歳とカール8歳」


 公爵様に紹介された2人は私に会釈したので、私も会釈をする。


「そして私の補佐をしてくれている側近のロイと護衛のラーシュ」


 ロイさんとラーシュさんも同じくだ。


「そして彼女はオレリア。この屋敷のメイドたちを統括しているメイド長だ」


(ということは私の上司になる人ね)

「よろしくお願いします」


 私がお辞儀をすると、オレリアさんもお辞儀を返す。


「エミーリア、君のことはここにいる6名だけが知っている。本当にメイドとして働くのか?」

「はい。私の気持ちは変わっていません」

「そうか…」


 公爵様は明らかにガッカリした顔をしている。



「エミーリア、あなたの仕事ですが…」


 落ち込んでいる公爵様を横目に、ロイさんが話を始めた。


公爵邸(ここ)では子供のメイドを雇ったことがないため、あなたの仕事についてオレリアとも相談しました。あなたにはクラウス様とカール様の専属の見習いメイドとして働いてもらいます」


「…え!?」

「専属と言ってもしばらくは何もできないでしょうから、もう1人のメイドと2人で担当してもらいます。そしてあなたはまだ子供ですので、カール様の家庭教師が来ているときは一緒に勉強してもらいます。あとマナーとダンスのレッスンもです」


「えっ?何で…?」


「マナーはメイドをする上でも役に立ちますし、ダンスは後々、お二人の練習相手となっていただくためです」


 上手いこと説き伏せられているが、外堀から埋められている感じがしてならない。

 昨日は私の味方をしてくれたはずなのに…どうやら違ったようだ。この側近、侮れない。


 チラリと公爵様に視線をやると、今にも拍手を送りそうな顔をしてロイさんを見ていた。



 こうして義兄たちの専属見習いメイドになったのだ。





 それから1ヶ月が経った。

 最初は慣れないことに苦労したけど、先輩メイドのジーナさんの教え方がとても丁寧で分かりやすかった。


 私のことを知らない人たちには、領地の視察中に保護した子を連れて帰ったということにしている。

 素性も分からない私のことをみんな受入れて優しくしてくれる。


 単純だけど、今ではここに来て良かったと思う。ただ、たまに旦那様が覗き見しているので怖い…。


 今は父親(公爵様)のことを旦那様って呼んでいる。ここではそういう決まりみたい。それに義兄たちのこともちきんと"様"を付けて呼ぶようになった。


 この前旦那様に呼び出されて部屋に行ったら「お父さんって呼んでくれないか?」って言われたけど丁重にお断りしといた。



 ****



 今日は義兄たちの友達が来る日らしい。

 ジーナさんと一緒にお茶やお菓子の準備をしている。


「ジーナさんは今日、誰が来るか知ってるの?」

「ええ、第一王子と騎士団長のご子息よ」

(さっそく攻略対象キター)

「そうなんだ…私が居ても何もできないから他のお手伝いしててもいい?」

「私は構わないけど、メイド長に念のために確認しなくちゃね」

「…はい」



「坊ちゃまたちのメイドとして給仕しなければ駄目ですよ」


 ジーナさんと一緒にオレリアさんのとこに行くと却下されてしまった。


「…でもこの国の王子様だよね?粗相をしたら怒られない?」

「王子はお優しいから大丈夫よ」


 ゲームは学校に入ってからスタートだったため、幼少期に出会う設定ではなかった。学校が違えば会うことはないだろうと踏んでいたのになんてことだ…。

 義兄たちと友達になってるなんて…こんなところでもシナリオが変わってるなんて思いもしなかった。





「レオン、フィデル」

「よぉ!」


 ついに攻略対象たちとの対面となった…。

 この国の第一王子レオン・グランクヴィストと騎士団長オースブリンク公爵の嫡男、フィデルが目の前にいる。


 やはり乙女ゲームだけあってみんな整った顔をしていた。


(エミーリア、お茶を出すわよ)


 ジーナさんに声をかけられ、ソファーに座った全員にお茶を出そうと近付く。すると最初に私に気付いたのはフィデル様だった。


「ん?こんな小さい子供が給仕するのか?」

「ああ、可愛いだろ?」


 クラウス様が変なことを言い出すので危うくお茶をこぼすとこだった。


「前に領地の視察に出たときに保護した子なんだ。妹みたいに可愛がってるよ」


 カール様まで変なことを言い出すもんだから2人の視線が私に向いている。


「へー、この2人が女の子を可愛がるなんてな。ん?よく見ると珍しい瞳の色してるな」


 フィデル様が私の腕を掴み自分に引き寄せる。


「ちょっと…」

(どうしよう…メイドだから下手なことはできない)


「フィデル、レディの腕を掴むなんて失礼だよ」


 助けてくれたのはレオン様だった。


「ごめんごめん」


 そう言うと手を放してくれた。

 私は急いで元の場所に戻り、ジーナさんの後ろに隠れるようにして立った。これ以上の接触は危険だと本能が告げる…。


 攻略対象たちとの初対面はフィデル様への警戒心を強めただけだった。

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