表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

5

「なんだあの公爵、あんな一面があったのか。あいつはヤバい。殺される」


 院長は決して早くない足を一生懸命動かし、エミーリアを監禁している場所へ向かう。





「おい、逃げるぞ」


 その言葉と共に勢いよく入ってきたのは院長だった。


「は?何言ってんだよ」

「あいつはヤバい」

「あいつって?」

「私のことかな?」


「「・・・・・・・・」」


「なっ…ななななっ何で!?」


 いつの間にか会話に1人加わっているのに気付いた2人が扉の方を見ると、そこに公爵をはじめ5人が立っていた。


「気付かれていないとでも思ったか?私は最初から君を疑っていたよ」


 公爵の鋭い目つきが2人の男を捕らえる。


「大丈夫か?」


 義兄たちが、私に駆け寄り拘束を解いてくれた。


「…大丈夫です」


 みんなの顔を見てホッとする。


「その子を外に連れ出してくれるか?」

「「はーい」」


 公爵に指示された義兄たちは私の背中を押し、外に連れ出した。



「さて、私の娘を誘拐・監禁した罪は重いよ」


「「ぎゃ―――――っ」」




 外に出た瞬間、建物の中から悲鳴が聞こえる。


「なっ、なに?」

「気にしなくていいよ」

「無事で良かった」


 優しく頭を撫でられると強ばっていた体の力が抜け、その場にへたり込む。そして目からポロポロと大粒の涙が溢れてきた。


「怖かったね」


 クラウスが抱き締めて、あやすように背中を撫でてくれる。彼の胸で肩を震わせ嗚咽を漏らした。



「…君は子供らしくない泣きかたをするんだね」


 彼が何かを呟いたけど、私には聞こえなかった。




 涙を流して少し気持ちが軽くなった。そして冷静になると急に恥ずかしさが込み上げてきた。

 私を抱き締めているクラウスの腕から離れようとすると、急に体がフワッと浮いた。


「へっ!?」


 クラウスが私を軽々と持ち上げている。

 小さな子供のように抱っこされ、端整な顔が目の前に…。男性に免疫のない私は、全身が真っ赤になり固まってしまった。


 想定外の出来事にパニックになっていると、公爵が建物のから出てきた。

 抱っこされている私と目が合うと、公爵も固まる。それに気付いたクラウスは、クスッと笑って私を降ろした。





「すまない…私のせいで君をこんな目に遭わせてしまった」


 公爵は膝をつき、私の目を見て話しをしてくれる。


「公爵様…」

「もうこの町は住みにくいかもしれない」


「…分かりました。そちらでお世話になります。でも公爵家の娘にはなりません。だから見習いのメイドとして雇ってください」


 気付いてしまった。私はこの人たちのことを家族として受け入れていることに。

 だから一緒に住むことにする。そう、住むだけ。


「そんなことできるわけないだろ」


 公爵は私の提案に反対のようだ。困った顔をしている。


「嫌ならいいです。他の町の孤児院か修道院に行きます」

「えぇ…!?」

「どうしますか?」


 二択を提案する。

 私の提案にオロオロする公爵は見ていて面白い。


「では居候として住んでは?」

「ダメです。タダほど怖いものはありませんし、お世話になるお金も払えませんから」

「なぜそんなに公爵家に入るのを嫌がってるんだ?」

「私、将来は騎士学校に入学して騎士になります」

「ええ!?ダメだよそんな危ない…」

「認めてくださらないと?」

「だって」

「でしたらここでお別れです」

「そんな…」


 大の大人…しかも公爵が8歳の子供に翻ろうされている。少し離れた場所で話しを聞いている義兄たちは笑っていた。

 彼の様子を見かねた側近が口を挟んだ。


「旦那様…ここは折れるしかないと思います」


 まさか側近が私の味方をするとは思わなかった。2人して彼を見ると、凛とした佇まいでこちらを見ている。

 側近の様子に何かを察したのか公爵は、ため息をついた。


「分かったよ…でも()()()だからね」

「よろしくお願いします」


 不服そうな顔をしながらも、私のお願いを聞いてくれた。


「ロイ、分かってるな」

「はっ」


 その言葉の意味が分からなかったが、とりあえず公爵家に向かうことになった。



目処が立ったので今日から最後まで毎日更新したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ