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 目を覚ますと手足を縛られ知らない場所にいた。


「ここ……どこ?」


 部屋には窓もなく真っ暗だ。


「なにがあったの?」


 自分の身になにが起こったのか全く分からない。ゲームではこんな展開はなかった。少しずつシナリオが変わり始めたのだろうか…。

 こんなことを考えるなんて意外と冷静な自分に驚いた。





「目ぇ覚めたか?」


 誰かが入ってきた。見たことのない男の人がそこに立っている。扉の向こうにもう1人居る気配がするけど入ってくる様子はない。


「…おじさん誰?」

「知らなくていい」


 少しでもこの状況を把握するため情報を集める。


「…私誘拐されたの?」

「そうだ」

「なんで?どこかに売られるの?」

「いいや、ちょっとばかし身代金をもらおうと思ってな」

「誘拐したから知ってると思うけど…私、孤児院の子だよ?」

「いや、貴族の娘だろ」

「なんで?」

「最近頻繁に来てんだろ、お前の父親。こんな田舎町であんな金持ち、目立って仕方がない」

「でもよく院の中にまで入って誘拐できたね?他にも子供がたくさんいるのに。私の部屋がどこかすぐ分かったんだ?」


 あんなに子供がいるのに私だけを連れ出すことができるなんて…考えればすぐに分かることだわ。


「そこに居るんでしょ?院長先生」

「「!?」」


 私の問いかけに答えるかのように、扉から恰幅の良い、人の好さそうな顔をした院長が姿を現した。


「はっはっはっ、なんで分かった?」

「馬鹿じゃないの?たくさんいる子供たちの中から私だけを連れ出したのよ?そんなの考えればすぐ分かるわ」


 お粗末すぎて馬鹿にした態度をとってしまった。

 院長は少しだけムッとした表情をする。


「こんな田舎では金なんて稼げないからな。持っているやつから奪うしかない。まさかお前が貴族の娘だったなんてな…ラッキーだよ。明日は父親が来る日だろ。2日~3日はここで我慢してもらう」


 気持ち悪い笑みを浮かべ、もう一人の男と一緒に部屋から出て行った。


 ゲームの中で院長は殆ど出てこなかったが、悪い人ではなかった。子供たちを大切にしているように見えたし、私もこの2年間ずっと信頼していた。


「…私が素直に公爵家に行かなかったから?」


 あんなに優しかった院長先生が変わってしまった…それとも元々あんな人だったんだろうか。今となっては分からないことだ。




 ****



 週末いつものように、公爵が子供たちを連れて孤児院にやって来た。


「公爵様、大変です」


 馬車が着くなり、待ってましたと言わんばかりに院長が飛び出して来た。


「院長、あの子はどこですか?」

「それが今朝起きたら、あの子のベットの上にこんなものが…」


 ”娘は預かった。返してほしければ5,000万(ギラ)用意しろ。期限は明日の午後5時までだ。用意ができたら、山小屋に持ってこい。金を確認したら娘を返してやる”


 院長が渡したのは身代金を要求する犯人(自分)からの脅迫状だった。


「そんな…なぜあの子が」


 その手紙を見た公爵はショックを隠せない様子だった。

 よく見ると震えている。院長はその様子に口元が緩んだ。


「――っ許さない。ロイ、今すぐ調べろ」

「はっ」


 公爵に指示されたロイという名の若い側近はすぐに動き始めた。



 院長は先ほどまでの様子と打って変わり、額からは脂汗が流れ、表情が強ばる。


 彼の目の前にいる公爵は、これまでエミーリアに見せていた優しい顔とは異なり、こめかみに青筋を立て怒りに満ち溢れているのだ。震えは怒りからだろう。



「義父さん、俺たちは?」

「お前たちはあの子が寝ていた部屋を調べてくれ」

「「了解」」

「院長先生、お話伺えますか?」

「ひっ…」


 公爵の怒気を含んだ声に圧倒され、思わず声が上擦った。



 ****



「どうだった?」


 短時間で各々調べ終わり、みんなが集まったところで公爵が尋ねた。


「小さな田舎町ですので、貴族が来ていることは全員知っていました。山小屋に行きましたがお嬢様の姿はありませんでした」

「あの子の部屋、他に3人と一緒でしかも窓際なんだ。窓は子供一人が出入りできるぐらいの大きさだから、犯人の出入りは扉からだよ」

「これ犯人一人しかいないじゃん。早く捕まえようぜ」

「まぁ待ちなさい。奴にあの子の所へ案内してもらうんだから」


 クラウスとカールは呆れ気味にため息をつき、公爵の口元には笑みがこぼれる。



「旦那様、院長が逃げました」


 密かに院長を見張っていた護衛から報告が入る。


「ほら、動いた」


5000万G=5000万円です。

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