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公爵は私に話していいものかと躊躇していたが、クラウスとカールに促され重い口を開いた。
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公爵と亡くなった奥様は政略結婚だった。浮気はなかったが奥様にはずっと好きな人がいたらしい。いくら彼が心を寄せようとしても奥様がそれを拒否していた。
冷めきった夫婦関係に疲れていたとき、メイドだった母と出会い恋におちたが、すぐに2人の関係は知られることとなった。
浮気の後ろめたさから、奥様に逆らえなかった公爵によって身重な母は追い出された。
彼はお金を渡そうとしたが受け取ってもらえなかった。その後も彼は何度も連絡を取ろうとしていたが、母は見つかる度に姿を消すのだった。彼は母の負担を考え連絡を取ることを止めた。
養子を迎い入れた公爵家はしばらく平穏な生活が続いていた。
2年前母が亡くなったと知った彼は葬儀への参列と、私を迎え入れる準備をしていた。しかし、彼の行動を知った奥様は自殺を図る。そのため葬儀に参列することも、私を迎えに来ることもできなくなった。
奥様は一命を取り留めたものの、心を病んでしまう。
彼は自分を責めた。
その後奥様は体調を崩し病床に伏していたが、ひと月ほど前に亡くなったそうだ。
ゲームでは知ることのできなかった話ばかりだった。
「君を孤児院に預けることになってしまって申し訳なく思うし、今さら父親として引き取りたいなんて迷惑な話かもしれない。でもこの先、君を1人にはしたくないんだ」
公爵がとても真剣に私を思ってくれているのが伝わる。だから気持ちが揺らいでしまう。
でもここは心を鬼にして断らなきゃ…。
「でもあなたが本当に私のお父さんかなんて分からないでしょ?」
目の前で侯爵が目を丸くさせ、やさしく微笑んだ。
「君のお母さんは一度に何人もの人に好意を持つようなお母さんだったの?」
その一言についカッとなってしまった。
「違うもん!お母さんはそんな人じゃない」
「そうだね。君のお母さんはとても一途な人だ。当時私と彼女が愛し合っていたのはうちの使用人たちは知っている。これで分かってくれるかな?」
彼はまっすぐ私を見てくる。それが居た堪れなかった。
「一緒に来てはくれないか?」
「…ごめんなさい」
「そうか。私は君が受け入れてくれるまで、いつまでも待つよ」
公爵は私の頭を撫で、帰っていった。
 




