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帝国の勇者

キャラを作るのって楽しい

【怪力の勇者】

帝国に2人いる勇者の1人、もう1人の勇者の情報が全くと言っていいほどに無いのと違い、彼の名は帝国にとどまらず王国でも有名である。


彼の逸話は数多くあり、その中には事実かどうかも怪しいものもあるがグリースはこの日、その逸話の数々が本当なのかもしれないと思ってしまった。


「ここで出会ったのも何かの縁、俺の勇姿をとくと見やがれっ!」


例えば、十歳の時に帝国一の力自慢と力比べをして相手の腕をへし折ったとか。


怪力の勇者は雄叫びと共に自らの脚力のみで身長が10メートルはあるワイバーンの顔面まで飛び上がると…

「うおりゃぁぁ!!」

力任せにワイバーンを殴り飛ばしたのだ。


「…は?」

「本当に人間なの? あれ」

殴られたワイバーンは5メートル程吹っ飛んでそのまま倒れ、起き上がる様子はない。

そして、殴った怪力の勇者は笑顔でグリースの元まで手を振りながら近づいてくる。


「いやぁ、あのワイバーンは冒険者ギルドで討伐依頼が出ていたんで追いかけていたんだが…なかなかすばしっこくてな、お前さん達に驚いて止まらなかったらどこまで行っていたか。」

「…そうなのか。」

怪力の勇者は近づいてくるなり喋りかけてくるが、グリース達は警戒を解くことはない。


…そもそも、ワイバーンを素手で殴り飛ばせる奴相手に初対面で好意的に接しろという方がおかしい。


怪力の勇者もグリース達が警戒していることには気づいているようだった。

「まあ、こんなところで話すのもアレだ。こっちの方角に歩いてんだったら帝国に行きたいんだろ? 俺が案内してやるぜ?」

「…いいのか?」


怪力の勇者はなぜかグリース達の道案内をしようと申し出て来た。グリースは何か裏があるのではないかと思ったが、笑顔で話す怪力の勇者の次の言葉で察した。


「言っただろ? これも何かの縁だってな」


怪力の勇者は底抜けのお人好しなのだと。



「なぁ、どうしてアンタは勇者になったんだ?」

怪力の勇者の道案内で帝国に向かう道中、グリースは彼にそう聞いた。

怪力の勇者はその質問に対してすぐに答えた。

「そうだな、国に勇者として魔国の魔王を倒せと命を受けたってのもあるが…お前が聞きたいのはそういうことじゃあないんだろ?」

「…ああ」

グリースはうなづく。グリースが見た勇者は神速の勇者と紫電の勇者、どちらも自身の村を襲って同胞を殺した人でなしだった。


しかし、目の前にいる怪力の勇者はどうだ?

あの2人と同じ勇者であるが、短い時間で接しただけでも彼らとは違う何かがあった。


「俺は帝国のために動こうなんて思っちゃいねえ。別に魔王を倒して世界を救おうとも考えちゃいねえ」

「…なら、どうしてアンタは戦う?」

「簡単なことだ、国のためでも世界のためでもない…『人のため』に俺は動くんだよ」

「人のために…だと?」

怪力の勇者は笑顔でうなづいた。


「顔も知らねぇ誰かじゃねえ。俺は俺の周りにいる友人知人、今朝挨拶を交わした居酒屋のばあちゃんのために戦う。ただそれだけだよ」

「…………」

グリースは、怪力の勇者が持つ『何か』。それの片鱗…いや、片鱗にも満たない小さなものを感じた気がした。

アンリはそんなグリースを見て、すぐに顔を逸らした。彼女の顔が少し赤かったのはきっと気のせいだろう。



彼の道案内は的確で、二日かかるはずの帝国まで1日で到着した。帝国は王国とは違って国境に高い壁を建設して国を囲っており、東西南北にある門からでしか入国できない。

そもそも王国は周囲に高い山脈があるため壁を必要としないのだが、それは今はいいだろう。


「ついたぜ、ここが帝国だ。良いところだろう?」

「まだ壁しか見えないぞ」

「…愛国心?」

「せっかちなだけだろ」

言いたい放題なグリース達を放って怪力の勇者は門を叩く。基本的に朝晩問わず門は閉じられているのだ。


「おーい! 俺だ! 怪力の勇者様のご到着だ!」

少し離れているグリースの耳にもうるさく聞こえる怪力の勇者の叫び声にアンリは耳を塞ぐ。

しばらくして、門の奥から声が聞こえた。

「自分で様をつけるならもっと立派に勇者をしろ! この酒狂い!」


そんな罵倒と共に門が開かれた。

肩までかかった赤い髪の若い門番は輝かんばかりの笑顔を見せる怪力の勇者に悪態をつく。


「おいおい、容赦ねえなカレン。お前が5歳の頃はシテン兄ちゃん!って俺の後をくっついて来てたってのに」

「なっ! 何年前の話だよ!」

カレンと呼ばれた門番の女と怪力の勇者の言い合いに取り残されるグリースとアンリはどうしようもなく立ち尽くす。


5分ほど経っただろうか、ようやく怪力の勇者は置いてけぼりの2人に気づいた。


「そうだカレン、こいつらの入国許可を出してやってくれ!」

「…はあ?」

カレンはそこでやっとグリース達を見る。

グリース達は怪力の勇者の隣に立ち、カレンの判断を待つ。


「…まあ、アンタが良いってんなら別にいいか。この2人に面倒な手続きさせたくなんでしょ?」

「おお! 良いのか!?」

「今回だけだよ?」

「すまん! ありがとなカレン!」

怪力の勇者はカレンの頭を撫でる。カレンはなすがままに怪力の勇者に頭を撫でられる。


「じゃあ行くか! グリース、ついて来い!」

「…私もいるのに」

怪力の勇者はグリース達を引き連れて帝国を歩く。カレンは怪力の勇者の後ろ姿を見て呟いた。


「…シテン兄ちゃんのバカ」

カレンちゃんはもう出てこないと思います。

ただこう言うキャラが書きたかっただけ!

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