囚人たちの策謀
最近ペットを飼いたい携帯充電器です。
家に犬はいるんですが、母が基本的に面倒を見ているので自分のペットって言う感じがしないんですよね。
まあ、自分もシーツを変えたり水をあげたりしているんですけど何かが足りない! と感じてしまう。
…独占欲が強い? いやいやまさか。
次の日の朝、グリースは全身を覆い隠すように布団をかぶって寝ていた。
看守が囚人たちを起こすために巡回しに来て、ついにグリースの牢を覗き込んだ。
「…223番?具合でも悪いのか?」
いつもと様子が違うグリースに困惑する看守はグリースに声をかけるが、グリースは返事をしない。
「…223番、返事くらいしてくれ。223番?」
いつまで経っても返事をしないグリースに不信感を募らせる看守、ここでようやく看守の頭に『脱獄』の2文字が浮かんだ。
…もしかして、あのベットに223番はいないのでは?
布団が膨らんでいるのは中に着替えの服でも入れていて、実際は朝礼で看守がグラウンドに集まっている隙に逃げたのではないか?
嫌な考えはどんどん加速し、看守はグリースの牢の鍵を開けて布団に手をかける。
そして、布団を引き剥がそうと右手に力を込めたその時!
ガシィ!!と布団から手が飛び出して看守の右手を力強く掴んだ。
「う、うわぁ!!」
「うるさいな…こっちが気持ちよく眠っているときに布団を引き剥がそうとしやがって」
布団がズレたことによって横になっているグリースの不機嫌そうな顔が看守に見えた。
「にっ223番!?」
「…どうした?驚いた顔をして、まるで俺がいる事がおかしいみたいじゃないか」
看守はグリースに右手をつかまれているため逃げる事ができずガタガタと震えている。
「…こっちは無理に起こされて気分が悪いんだよ。次…また布団を引き剥がそうとしてみろ今度は掴んだ手首を引きちぎるぞ!!」
「ヒィィィィ!!!」
グリースが右手を離した瞬間、看守は一目散に逃げ出してしまった。
「…鍵くらいかけろ」
朝礼があるため鍵をかける必要はないが、朝礼に行かないグリースはそんな事お構いなしに文句を言って牢を出る。
『…良い演技だったぜ』
「うるさい、必要な事だからしただけだ」
二人が向かうのは食堂、昨日と同じ早めの朝食だ。
いつもと同じ朝食を食べ終え、いつもと同じように牢に戻って昼寝をする。
いつもと違うのは、朝と同じように体を覆うように布団を被るようにして寝ることだ。
寝ているところに先ほどとは違う看守が見回りに来る。
「…223番、いるのか?朝礼をさぼるのはこれで何度目かわかっているのか?」
グリースは返事をしない。
看守は布団の中にいるであろうグリースに向かって話を続ける。
「そろそろ、こちらもお前の態度に具体的な処置をしなければならなくなる」
看守は震える手で牢の鍵を開けて中に入る。
「…何が勇者殺しだ、所詮は奇襲して殺しただけじゃないか…それに、そのときだって勇者に殺されかけてたらしいじゃないか」
看守は腰に差してあった警棒を構える。
「もう、こいつに怯える生活とはおさらばだ…どうせ死刑になるなら、この俺が!!」
看守は警棒を振り上げ、グリースの頭があるだろう位置に思い切り振り下ろす!
ガチンッ!!と金属が硬いものにぶつかったような音が刑務所の牢屋に響く。
「手荒い目覚ましだな」
「…に、223番…起きていたのか!?」
「寝てる横であれだけぶつぶつと言っていれば死人でも目を覚ますだろうな」
看守の警棒はグリースの手によって軌道を逸らされ、横になっているグリースの頭の上にある壁に小さな穴を開けていた。
看守は汗をだらだらと流して顔を青くしている。
グリースはニヤリと笑って警棒がに決まられている看守の右手をグッと掴む。
「さっき俺を起こしに来た看守にも言ったんだがよ…俺は誰かに起こされるのが嫌いなんだ。次…また俺の眠りを妨げてみろ、もう2度と警棒なんて握れなくしてやる!」
「ば…化け物だあっ!!」
看守はそう叫んで涙を流しながら逃げていく。グリースはその姿が多くなっていくのをを眺め、またベットに潜り込んだ。
この日、グリースがいる牢屋の前を通る看守がグリースに声をかけることはなかった。
そして日が暮れて、脱獄を明日に控えたグリースはいつもと同じように夕食を食べて牢に戻った。
『いよいよ明日だな』
「…あぁ」
『どうした、緊張でもしてるのか?』
アーモンの言葉にグリースが笑う。
「そんなもの、故郷に忘れてきちまったよ」
それから二人の会話はなく、ただ静かな夜を過ごした。
明朝、グリースは昨日の朝と同じように布団を頭からかぶって寝ていた。
『まったく…よくやるぜ』
ロエースでその姿をのぞいているアーモンの呟きは誰にも聞こえていない。
それから数分、朝礼のために起こしに来た看守がグリースの牢屋を見る。
「………」
その看守は昨日の朝と同じ看守であり、グリースに声をかけることもなく逃げるように去っていった。
『…おう、どっか行っちまったぜ』
「そうか、それは残念だ」
アーモンがグリースにそう伝えるとグリースはニヤニヤ笑いながら布団から出る。
『残念そうな顔じゃあねえな』
「看守は昨日と同じだったか?」
『おうよ、担当が決まってるんじゃねえか?』
「それは…とても残念だな?」
『お前にとってじゃないだろ?』
グリースは笑顔で牢屋を出て、いつも通りの朝食を食べに食堂に向かった。
その頃、刑務所の女子棟。
「おい!103番、朝礼の時間だ!早く運動場に向かえ!」
「…はい」
看守の言葉に静かにうなづいて牢屋から出る少女。
長い焦げ茶色の髪に隠れた美しい緑色の瞳が静かに看守を見つめている。
「早く行け」
「…はい」
牢から出て、運動場に向かう103番の姿を確認した看守は先ほどまで少女がいた牢屋を見つめる。
「…まだ幼い少女だってのに。この国は腐ってやがるな」
そう言って、看守は巡回を再開した。
看守が去った後にベッドの下から這い出てくる103番の姿を見る者はいない。
「…腐ってるのは、国じゃない。腐ってるのは国民」
その少女の呟きを聞くものもいない。
「もう少し…もう少しで出られる。あの人と会えてよかった」
彼女の微笑みは、その立場、いる場所に相応しくないほどに明るく美しかった。
「…グリース、さん。いや…グリース様?どっちがいいかな」
103番と呼ばれた少女、アンリは微笑みながら未来のために動き出す。
脱獄は今夜、策は既に練ってある。
明日も投稿できるかな?