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すみません、今回も少し短めですm(__)m


  ◇◇◇


「今年の候補生は、龍学をはじめとする座学に全員合格ですか……」


 陸源に渡された名簿を見て、可丈は驚きの声を上げる。


「そうじゃ、可丈。なかなか面白そうなのがおってな。そやつが引っ張ったようじゃぞ。仲間の事まで考えて行動できるとは、立派な男の子(おのこ)じゃ!」

「……面白そう? 丁蓮ですか?」

「そうじゃ、そうじゃ。あやつめ、全ての科目で主席をとりおった。なかなか見どころがあるぞ。それにどこで学んできたのか、もともと龍学の素養もあるようじゃ。あやつが龍騎士になりおったら、龍談に花を咲かせたいところじゃのう」

「そうですか……」

「なんじゃ、浮かない様子じゃのう……」

「はい。実は……」



  ◇◇◇



「んじゃ、試験を始めんぞ~」


 次の試験は可丈の槍術だ。難関だった龍学の試験に全員が合格し、候補生には気がゆるんだ者が出ていたが、蓮花にとってはこれからの方が難関なのだ。自然と気合が入る。


「同じ相手と三戦行う。勝ち負けは問わないが、根性を見せろ」


 蓮花は「はい!」と返事をする。

 槍術を一緒の場所で訓練してきた龍騎士たちは、物見遊山といった気軽な様子で勝手気ままな応援をしていた。


「じゃあ。最初の組は朧月と氾洛修、前に出ろ」


 洛修に試験対策帳を破られてから、隼が朧月に、蓮花の近くにいて嫌がらせの抑止力になって欲しいと進言したそうだ。以来、朧月は講義にも訓練にも参加するようになっていた。とはいえ、参加するだけで、講義では窓の外の鳥を見てはそっと微笑み、槍の訓練中は木陰で昼寝をしてばかりで、真面目な様子はみせないのだが……。

 蓮花は、隣にいた朧月に声をかける。


「洛修はとっても強いよ! 頑張ってね!!」


 ふっと笑った朧月は、腰をかがめて蓮花の耳元で囁く。


「あの小僧には、我も少し腹が立っておる。少しこらしめてくるぞ」


 蓮花が「へっ?」と間抜けな顔をさらした。そして臘月が洛修を怒っている理由は、蓮花の試験対策帳を破いた事だと気が付いた時には、朧月と洛修は開始線に立っていた。


「始め!!」


 キン!


 合図とともに、朧月の槍が、洛修の槍を弾き飛ばしていた。

 何が起こったか分からずに、誰しもが呆然としている。訓練の時に、龍騎士相手にあれだけ圧勝した洛修が、こんなに赤子の手を捻るようにされるとは思わなかったに違いない。



「い、一本!」


 気を取り直した可丈が宣言せる。

 あれは、洛修が気を抜いていたのだ……と、誰もが思い直したところで二本目が始まった。


 二本目は、一本目とはまったく別の試合運びになった。

 洛修が、朧月に雨あられと、絶え間なく槍を突いたのだ。

 最初は、うまくいったと喜色が浮かんだ洛修も、次第に様子がおかしい事に気付く。

 朧月は、一歩も動かずに、片手だけで洛修の鋭い槍の攻撃を全てかわしているのだ。実力の差は明らかなのに、これでは試合にならないと、可丈が朧月に一本を与えた。

 そして三本目。

 それは、あまりにも一方的だった。ただの一薙ぎで運動場の端まで吹っ飛ばされたのだ。

 さすがに、候補生だけでなく、龍騎士達も口をあんぐりと開ける。

 三戦を終えて、「物足りぬ……」と、スッキリとしない表情の朧月に、蓮花は「やり過ぎ!」と雷を落とした。洛修は医務室に行くのも断り、木陰で膝を抱えていた。どうやら、朧月の攻撃は、見た目ほど威力はなかったようだ。そんな洛修の下に、集まる訓練生はいない。あの試験対策帳を破ったときから、取り巻きはいなくなり、洛修は一人で過ごすようになったのである。

蓮花への嫌がらせも、ピタリと止んだ。やはり首謀者は洛修だったのだろうか……。しかし、蓮花はそれを確認するのは怖かった。


 次の組の隼も、あっけなく勝利をおさめる。

 本当は隼の早さとか、見どころがたくさんあったはずなのだが、なにせ朧月の試合の後だ。記憶に残らないのも仕方がない。



 そして、最後の組。蓮花と浩が前に出る。


「お互い頑張ろうね」

「……」


 蓮花の声を無視して浩は開始線の上に立ち、槍を構えた。いつもの純朴そうな顔はなりを潜め感情が読みづらい。


「浩?」

「あ! すまんのす! 考え事をしていたのすよ」

「しっかりしないと!」

「ははは、始まるのすよ!」

「あ……、うん!!」


 蓮花も槍を構える。

 可丈が、ピッと笛を鳴らす。

 とたんに、浩が蓮花の足を踏みつけた!


「うわあ!」


重心を崩した蓮花の喉元に、槍が迫る。

 思い切り後ろに飛び退こうとしても、足を踏まれている蓮花は逃げられない!

 と、なんとか体を捻って、槍の直撃を避けた。

運良く直撃は避けたものの、首の皮一枚かすったようだ。


「一本! 浩!」


 ひりつく首を蓮花は撫でた。


――あんな鋭い突きを浩ができるなんて。当たっていたら、大けがをしているところだったわ。ううん。大怪我どころか、……死んでいたかもしれない。

 ふと、浩が蓮花の足を踏んだのは、蓮花の逃げ道をふさぐためだったのではないかと気が付いた。


「浩……。さっきの足は、わざとじゃないよね……?」


 浩は、質問に答えず、暗い視線を蓮花に返すだけだった。


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