ヒロイン 〈寝癖〉
「はい。いつ頃の予言計算をすればいいんでしょうか、誠先輩。」
「予言計算の能力は確か、時が離れれば離れるほど負担が大きくなるものだったよね。」
「多分。」
「じゃあ、三日先の予言計算を、お願いできるかな。場所はどうする?このまま保健室でやる?能力用の部屋に行く?」
「三日先ですか?それぐらいだったら今やってしまいますね。紙とペンをもらえますか?」
「三日でも、そこそこの負担じゃなかったっけ?試験の時はどれぐらい先の未来を計算を?」
「5年先です。つい調子に乗っちゃって。...ペンと紙ありがとうございます。」
すうっと息を吸い込む。神経ひとつ一つに意識を集中させて。脳みその中に無数の可能性が浮かび始める。少しの気圧の変化、時間のズレ、起こりうることを予測する。紙に書きだす。
「終わりました。」
私がふうっと息をつくと、すでにもう誠先輩の姿が見えなかった。時計を見ると、一時間ほどたっている。体調も問題ないし、定期考査の書類を職員室に提出しに行こうか、と思いベットから出ようとすると膝のあたりに重みを感じる。自分の膝のあたりを見ると、そこには誠先輩の美しい顔がすやすやと寝息を立てていた。
いやあ。美形が自分の膝に乗っている状況って、これから何度あるんだろう。
「あの...誠先輩...」
「ん?...ああすまん。寝てしまっていたな。計算、終わったか?」
寝ぼけている誠先輩も美しい。
「あ...あ、ハイ。終わりました。」
「見せてくれる?」
私は、誠先輩に書いた紙を手渡した。私が渡した紙をしげしげと眺める先輩の髪には、ぴょんとはねた寝癖があった。私は、先輩の寝癖を直そうとしてベットから立ち上がろうとすると、、、立ち上がれない。もがいている私を見て、誠先輩が申し訳なさそうに言った。
「ごめんね。僕が寝てたからだね。」
「え...いいんですいいんです!それよりも少しかがんでもらえませんか?」
私がそういうと、誠先輩は長い脚をまげて、かがんでくれた。先輩の綺麗な紙についた可愛い寝癖を直す。わあお。髪サラサラ。柔らかい。艶やか。ヤバ~い!!
「もしかして、寝癖ついてた?」
「あ、ハイ!直りましたよ。」
「ありがとう。僕、すごい寝癖つきやすくてね。計算、早いし、すごくきれいに書けてるね。今から三日後、特殊能力室に来てね。あとは、特にないかな。」
すると、ガラッと保健室のドアが開いた。
「希!大丈夫か?戻ってこられる?」
「希さん!授業に戻れそうですか?」
嵐のような二人が戻ってきた。
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