ヒロイン
山上司。私の幼馴染。年は一個上で、兄弟のいない私にとってはお兄ちゃんの様な存在で、最近はあえていなかったけれど、たまにこうやってふらりと我が家にやってくる。
「希!心配したよ!急に倒れたっていうし...天龍学園なんてやめた方がよかったんじゃ...」
「司にぃ大丈夫だよ。ちょっと顔が強すぎる方々にやられちゃって...」
「それに、あの峻...いや空原さんと婚約ってどういうことだ?」
「なんで、司にぃが知ってるの?」
「なんでって、ニュースに出てるよ。ほら」
司にぃは、私にスマホニュースを差し出した。見出しは、
「空原コーポレーションの御曹司、海友財閥の取締役令嬢と婚約破棄!謎の少女と婚約を結びなおすことを宣言!」
「えっ?なんでニュースなんかに?」
「当たり前だよ。日本でも有数の名門企業の御曹司がわざわざ婚約破棄までして選んだ少女は、無名の少女だったんだからね。」
司にぃは両手を広げた。司にぃが両手を広げたら、抱き着くのが常識である。いつもの通りに私は司にぃの両手へ飛び込んだ。
「司にぃ、あったかいぃぃ。太陽のにおいする~!」
「そう?希は体温低いねぇ。あったかくした方がいいよ。」
背の高い司にぃは手も長くて、よくスポーツをやるから体温も高い。低体温な私とは対照的にいつもあったかい。だから、小さいころから寒くて凍えているときはよく抱きしめてもらった。その癖はいまだに抜けなくて、良く抱き着いている。大好きなお兄ちゃんだ。
「そういえば、司にぃはどこの高校だっけ?前は教えてくれなかったでしょ。」
「あー、言ってもわからないと思うけど。」
「いいの!教えてよ~」
司にぃは私を膝の上にのせて、話し始めた。
「嶺鶯大学高等部ってわかる?」
「嶺鶯大学高等部って、超難関校でしょ!なんで教えてくれなかったの??」
嶺鶯大学高等部とは、日本一の男子校である。嶺鶯大学になると、それこそ国内外にも名が知れ渡るほどの、名門校。ここに進学できるだけで、将来の保証はされているといわれるほどの。
「いやあ、自分で入ったわけじゃないから。」
「ん?どういうこと?」
「ううん。何でもない。それよりも、最近の予言計算はどう?」
優しい司にぃの声が子守唄みたいになって、私はまた眠りについてしまった。
「寝ちゃったか...おやすみ...希」
司は希を横抱きにして、ベットに運んだ。ベットに浅く腰かけて、司はつぶやいた。
「峻...お前はどうするつもりなんだ...俺の希を...」
そして、そっと窓から夜の暗闇へ消えていった。
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