入学式 〈ヒロイン〉
ここは、私立天龍学園中等部。全国のハイスペックな令嬢や令息が集まる、超がつくほどの名門校。
そんな天龍学園にある庶民の女の子が入学した。彼女の名前は、神埼希。超人的な能力を持ち、天龍で最も注目を浴びている生徒であった。
緊張で震えが止まらない。ここは、入学式前の新入生の待機場。待機場のはずなのにちょっとしたホテルのロビーと言う感じ。さすが名門校。ここは、初等部からの持ちあがりの為、みんな一応知り合いみたい。知らないクラスメイトに囲まれて、ただえさえ緊張しているのに。庶民中の庶民であるこの私がなぜ日本4代財閥に数えられる海友財閥の取締役令嬢と肩を並べ座っているのか?私は、ちらっと隣を見る。あぁもう美人過ぎる。ピンと伸びた背筋、陶器のように白い肌、くるんと大きい釣り目がちの真っ黒の目、少し青みも帯びた漆黒の肩まで伸びるロングヘア。少し、クールで冷たそうな感じもまたいい。天は二物を与えずというけど、与えてるよ!気付くと私はガン見しており、その行動を不審に思ったのだろう、ご令嬢が声をかけて下さった。ありがたい。
「どうなさったのですか?私の顔に何かついていますか?」
わぉ。声まで綺麗だわ。私は焦って返事をした。まだ上品な言葉も使えないのに。
「なにもついていないデスワ。」
絶対何か間違った。ご令嬢はクスクス笑っている。
「ただ、御顔に見惚れてただけなんです。私の無礼をお許しください。」
土下座しようとした私をご令嬢が慌てて止めた。
「そんな無礼だなんて!!全然違いますわ。お名前を伺ってもよろしいですか?」
ああ、もう殺されてしまう。今までありがとうお父さん、お母さん。私が今にも死にそうな顔でいたからだろう、ご令嬢がニコッと笑って言った。
「今、殺される!って思いましたよね?そんなことしませんよ。お友達になってほしいのです。だから、お名前をうかがいたいのですが。」
うそでしょ!?このどう見ても完璧なご令嬢とおともだちに!!
「私と友達にっ!本当ですか?私でよければ・・・・ほんとにわたしでいいんですか?ありがとうございます!私の名前は、神埼希です。よろしくおねがいします。」
ほぼ、倒れこむようなお辞儀をすると、彼女はクスッと笑いながら、可愛く言った。
「希様と、呼ばせて頂いてもよろしいですか?私の名前は海野麗子ともうします。」
の・の・希様っ!そんな恐れ多すぎる。
「そっそんな、様なんて付けなくても…私も麗子さまと呼ばせて頂いてもよろしいですか?」
麗子さま、麗子さま。友達が出来た~!嬉しい。
「もちろんですわ。」
何時その笑顔の破壊力。女の私が惚れてしまう・・
そんな妄想をしていると、入学式に参加するため、体育館へと、まだ全然知らないクラスメイトと向かった。