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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
帝国のアドバイザー
92/122

92出陣前日

ロウル   記憶喪失の主人公・ノリクの相談役(★4テンロウ)

ローゼリア ロウルを助けた貴族令嬢(人間)

ノリク   ローゼリアの父親でハキルシア帝国宰相(人間)

タンゴ   ノリクの側近(★5キリン)


帝国主要貴族(御三家)

ピュートル公 本拠レオグラード(反乱軍側)

ニコラ公   本拠ワルシュア(中立)

パヴェル公  本拠バイカル(帝国軍側)


レニン    パヴェル公側近の内政官

 5日後、バイカルからレニン内政官が到着し、ノリク様からの引継ぎが行われる。


 ノリク様も引継ぎが終わり早く帰れるようになったようで、その夜は早く帰ってきた。

 そして、夕食後、俺はお嬢様とノリク様・アンナ様の部屋に呼ばれる。



「私も王宮の仕事から解放されて反乱軍との対決に専念できるようになった。

 今日からは時間も取れるようになったので、ロウル君と直接相談したい。」

 ノリク様が言う。


「俺もできる限りの知恵を出します。」


「ありがとう。

 実は、君と話す時間が取れなかったが、王宮での仕事の合間に色々と指示を出していた。

 その報告も兼ねて、これから情報共有をして今後の方針を相談したい。」


 ノリク様がしていた策はこうだ。

 まずは、強力な存在関連について。


 ノリク様は強力な存在の正体について、俺が予想した魔王レオニエルである可能性も高く見て、レオグラードや反乱軍の重要人物がいると思われる場所に手あたり次第に紙をばら撒いたようだ。

 内容は、魔王レオニエル宛に帝国内のモンスターの待遇を改善するから敵対しないでほしい旨を記載したという。

 勿論、強力な存在が魔王レオニエルではない可能性も十分想定した上で。

 紙の内容を見た反乱軍の幹部の反応で強力な存在の正体について推測しようというのがノリク様の1つ目の目的。

 確かに、反乱軍の上層部が魔王レオニエルについて知っているかどうかで、反応は変わるよな。


 次に、強力な存在の正体が魔王レオニエルかそうでないかについて場合分けして考える。

 まずは、予想通りに魔王レオニエルの場合。


 今までの調査で魔王レオニエルに関する情報が全く入ってきていない事から、魔王レオニエルについて知っているのは反乱軍の中でも極一部の幹部だけの筈である。

 そんな存在がいることを初めて知った反乱軍の別の幹部からすれば、不信感を持つ事になる。特に、ピュートル公が魔王レオニエルについて知らされていない場合、大陸東部の貴族連合に不信感を持ち、ピュートル公と東部貴族との間に亀裂を入れることを期待できる。

 そこまで上手くいかなくても、紙を見た人物の反応の情報をしっかり入手することで、今後反乱軍内部での足並みの乱れを狙う材料の手掛かりとなる情報が得られるというのがノリク様の2つ目の目的。


 そして、これだけ騒ぎになれば反乱軍の幹部も情報の隠滅はできず、遠からず魔王本人にもこの情報は入るはずで、実際に交渉に入ることができるかも知れないというのがノリク様の3つ目の目的。


 次に、強力な存在が魔王レオニエルではない場合。


 紙を見た反乱軍幹部は、自分が知っている強力な存在意外に魔王レオニエルと言う切り札があるのに自分は知らされていないと考える可能性が低くないこと。

 正体が魔王レオニエルであった場合同様に、2つ目の目的の反乱軍内部での足並みの乱れが狙えること。


 そして、この策のいいところは、見込みが外れても、ノリク様が反乱軍内部の分断の策をしてきたと思われる程度で、デメリットが殆どない事。


「すごいです。

 確かに、デメリットらしいデメリットはありませんね。

 最悪魔王が堂々と表に出てくるくらいでしょうか。そうだとしても魔王はエネルギーの無駄遣いはしないでしょうし。

 俺が気になるのは、魔王と実際に交渉に入れそうな場合に、タンゴさんのやってきたことが、足枷になるかもしれない事です。」


「それについても、レニン殿との引継ぎで対応してきた。

 これまでモンスターを使い捨てにしたことを反省し、今後半年を目途に首輪を使ったモンスターの支配を禁止する方向でレニン殿に進めてもらう。

 そして、第1弾の情報を早い段階で反乱軍の耳に入れ、遠からず魔王レオニエルの耳に入るように準備した。」


 ノリク様は言う。

 これは全く予想外だった。

 タンゴさんの関係もあるから難しいだろうなと俺は思っていたし、だからこそ、反乱軍鎮圧後に俺が主導で進められるようノリク様にお願いしていたのだ。

 まさか、俺の望んでいた事をノリク様に積極的に取り組んで貰えているとは思っていなかった。

 ここまでして貰えると、俺としても策を出した甲斐があってとても嬉しい。

 ノリク様には感謝でいっぱいだ。

 方針転換は嬉しいのだけど、実際にするとなるとそんな簡単にはいかない筈。


「いきなり方針転換して、タンゴさんは納得するのでしょうか?」

 俺は自分の思いついた危惧を聞いてみる。


「タンゴが今までの方針を主導してきたのは、人間世界の中で自分の地位を上げるためだったからな。

 反乱軍鎮圧後、タンゴに爵位と領地を与えてもらうようパヴェル公にお願いして承諾を貰った。

 タンゴにも自分が人間世界で貴族になれるのならと、方針転換に納得してくれたよ。」


 モンスターに爵位とか前例がないし、タンゴさんの苦労を考えると相当な反発が予想される。

 ノリク様の宰相の地位では困難だっただろうし、筆頭貴族になるパヴェル公が命じ、さらに敵対貴族を滅ぼした直後なら反発が一番小さいタイミングだろう。

 流石ノリク様、手回しが完璧だ。パヴェル公もよく認めたと思う。


「パヴェル公の承認があれば今は大丈夫でしょうが、将来的に皇帝陛下が成人されてから問題が起きないでしょうか?」

 俺は、別の視点からの危惧も聞いてみる。


「以前ロウル君に言われて驚いたが、実はイワン皇帝は偽物だ。

 本物は既に死亡しており、反乱軍鎮圧後はパヴェル公が新たなハキルシア皇帝となる。」

 パヴェル公が皇帝になるのならタンゴさんの件は何とかなりそうか。


「偽物を使ったりして大丈夫なのでしょうか?」


 俺の疑問にノリク様はこれまでの経緯を話してくれた。


「前皇帝が崩御された時、唯一残されたイワン皇帝はまだ3歳だった。

 当然政務などできるはずもない。

 本来であれば御三家から宰相として皇帝を補佐する者を出すべきなのだが、誰が宰相となるかで揉めに揉めた。

 ここで宰相になることはイワン皇帝に何かあった時の次期皇帝になることを意味するため、ピュートル公もパヴェル公も譲らなかったからだ。

 結局、ニコラ公が折衷案として当時ウォルタンを治めていた私に白羽の矢を立てた。

 ピュートル公とパヴェル公の対立の中で、当時ミューゼル家は中立を保っていたこともニコラ公が私を選んだ理由の1つなのだろう。


 私も出世欲はあるからな。

 宰相の任を受けて帝都で政務を行うことになった。

 その結果、ピュートル公・パヴェル公の両者から睨まれる事になってしまったが。

 それどころか、嫉妬により少なくない貴族から嫌われる事になってしまった。


 イワン皇帝は元々体が弱く、2年後崩御された。

 これで再びピュートル公とパヴェル公の争いが起こる。

 そして、私は両者から睨まれた存在だ。

 下手をすればミューゼル家の滅亡の可能性もあった。

 その時、タンゴが皇帝陛下の偽物を立てる案をくれてな。

 戦争を避ける事とミューゼル家の生き残りを考え、

 この案なら王宮の者達の協力も得られるため、私はその案を実行した。

 そして、イワン皇帝がまだ生きていると見せかけて宰相として政務を続けたのだ。


 しかし、いつまでもそのような策を続けられる筈もない。

 君のアドバイスでパヴェル公との関係が修復できたことを機会に、パヴェル公には全てを話した。

 パヴェル公も反乱軍鎮圧後に自分が堂々と皇帝になれることが分かり、了承してくれたよ。

 反乱軍鎮圧後にイワン皇帝の葬儀とパヴェル公の即位を行う。

 私が立てた偽の皇帝は、ミューゼル家で一生面倒を見るつもりだ。」


「そう言う事情があったのですね。

 今から取り繕うとなると、ノリク様の案しかなさそうですね。

 いずれにしても反乱軍に勝たないといけないですが。」


 その後、ノリク様が既に実行している他の策についても聞く。

 工作部隊を使って東部貴族軍の本隊の行軍を遅らせたり、エルシア商人の対立を煽ったりとなるほどと思える策ばかりだった。

 ここまでしているなら、俺が追加でできる事がないと思えるほどだ。


「ところでロウル君。

 タンゴには爵位と領地の約束をしたが、

 君は、反乱軍に勝った後の希望はあるかね?」


 ノリク様が聞いてくる。

 ノリク様は俺の事も考えてくれているんだ。


「俺はハキルシアでモンスターの暮らしに関する意思決定に関わりたいです。

 ハキルシアのモンスターが人間の中で幸せに生きることができるように努力したいと思います。」

 俺は自分の希望を言う。

 今までのタンゴさんのやり方を完全に否定して、俺のやり方でモンスターの待遇を決めたい。


「分かった。

 パヴェル公に話して、そのような役職を作ってもらうようお願いしておこう。」


 ノリク様は俺の考えや希望を聞いてしっかりと対応してくれる。

 ノリク様に仕えてよかった。

 俺はそう思った。


「あと、パヴェル公の軍が帝都に到着したら、我々も出陣することになる。

 今のままでは、君は館を出ると私の傍から離れることができないからな。

 君の支配の首輪の効果を解除しておこう。

 まだレニン殿から通知は出ていないから、効果を解除した首輪を形だけ残しておくが。


 とは言え、自由に動けるようになっても、決して単独行動はしないで欲しい。

 君の存在は重要だ。

 君の存在と役割を反乱軍が知れば、優先的に狙ってくるに違いない。

 常に精鋭の護衛をつけるから、護衛を離れることのないようにして欲しい。」


 ノリク様が言う。

 この後、俺は首輪の効果を解除してもらった。

 形だけはそのままの首輪をしているが。


 ついに、明日はレオグラードに向けて出陣か。

 いよいよだな。

 反乱軍に勝ち、この国でモンスターが幸せになれる体制を作りたい。



20230313


話番号修正・誤字等修正

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