72騎士団長ルフトーラ
登場人物
ウル(主人公)狼に転生した元人間。メキロ家アドバイザー(★4テンロウ)
スレイル ドンロンモンスター部隊大将(★5キリン)
アウルス ドンロン領主アドバイザー(★5ナイトメア)
ローラン ドンロンモンスター部隊副大将(★5ペガサス)
パール リッチモンド家当主・息子に監禁された居たところを救出される(人間)
(魔法を使ってくる気だ。一気に仕留めるぞ。)
スレイルさんが言う。
俺は慌てて技の精神集中を始める。
ルフトーラは、自分に何か魔法をかけると空中に飛び出し、俺に向かって飛んでくる。
フライトだな。
俺の精神集中も完了した。
(アナライズマジック)
フライト・ディスペルガード
俺は、ルフトーラが、予め何か強化をしていることも想定してかかっている魔法を確認した。
最低限の魔法だけをかけて近接戦をしてくるつもりらしい。
俺は近接戦闘は得意でないのでルフトーラの接近を見て、咄嗟に右方向に飛んで逃げる。
しかし、ルフトーラは飛行方向を修正してすれ違いざまに俺に向かって剣を振るう。
ルフトーラの剣が俺の腹を削ぐ。
俺の咄嗟の動きを読んでいたかのごとく剣を合わせてきた。強い。
(敵にフライトとディスペルガードかかってます。)
俺は痛みをこらえてスレイルさん達に知っている情報を渡しながら、近くにいたスレイルさんの後ろに隠れる。
ルフトーラが俺に止めを刺しに来ても、前にスレイルさんがいる。簡単にはいかないはずだ。
(効かんな。)
アウルスさんの声が聞こえる。
ルフトーラが近くのアウルスさんに攻撃魔法を放ったらしい。
リフレクションもリベンジカースもかかっているアウルスさんには当然効くはずはない。
(リザレクション)
ローランさんが回復技をかけてくれた。
傷がふさがっただけでなく、俺の生命力も一気に全快した。
助かった。
「敵襲か?」
フォッサマグナの範囲外にいた敵兵たちが騒ぎを聞きつけて集まってくる。
弓を持っている兵も少なくない。
(フォッサマグナ)
スレイルさんが再び技を放つ。
騒ぎを聞いて近寄ってきた敵兵は一瞬で全滅する。
「化け物だあ。」
前を進んでいた兵士が一瞬で全滅したのを見て、後続の兵士たちは近寄ってこなくなった。
スレイルさんはこの効果とルフトーラへの追加ダメージを見込んでいたのだろう。
ルフトーラを見ると、剣による近接攻撃でアウルスさんにかなりの重傷を負わせていた。
アウルスさんは一旦シャドウウォークで逃げる。
ルフトーラは、技の精神集中を妨害するべくアウルスさんに一撃を放つがコンセントレイトがかかっているアウルスさんは精神集中が乱れることはない。
「コンセントレイトまでかかっているのか。」
ルフトーラの声が聞こえる。
なるほど、★5ナイトメアは好相性技でないコンセントレイトはかかってないと踏んでいたわけだ。
悪いが俺達は誰かの好相性技は全部覚えて強化しているからな。
当然ディスペルガードもかかっている。
(ライトニング)
俺は次の技を放つ。
近接戦闘を得意とする相手には、生命力が尽きるまで攻撃技をぶつけ続けるしかない。
そして、姿が3体に増えたローランさんがルフトーラに向かっていく。
★5ペガサスの専用技のミラーイメージだ。
自分の影分身を2体出して敵の攻撃をかわす技だ。しかも分身は常に現れては消えるので、本体を見極めることはできない。
ルフトーラと言えど攻撃が3回に1回しか当たらないはず。
そして、ローランさんの攻撃を確実にかわすには3倍の攻撃を全部回避しなければならない。
しかし、ルフトーラは3回に1回は確実にローランさんに攻撃を当てつつ、ローランさん3匹分の攻撃を全てかわすという離れ業を軽々とやってのける。動きに自分の生命力が危なくなっている気配は微塵も感じない。
自分の体力が尽きる前に1匹ずつ確実に仕留めてくるつもりらしい。
攻撃技では間に合わない。先にこちらが全滅する。
何か手はないか?
(ウィーク)
俺はルフトーラに技を放つ。
敵に使える補助技が他に思いつかなかった。
ルフトーラが一瞬こちらを見た。
わずかとはいえ、効果があったのかもしれない。
ならば、重ねがけだ。
上限はあるものの効果が累積することを知っているからだ。
スレイルさんとローランさんが2匹がかり、ミラーイメージを入れると4匹がかりで攻撃しているが、それでもルフトーラに押されている。分身がないスレイルさんが集中的にダメージを喰らっていた。
俺は、ウィークを何度もかけた上で再度アナライズマジックをかける。
フライト・ディスペルガード・ウィーク効果減少中
ウィークを3重にかけても効果減少中って技防御が高すぎる。
でも俺にできることはこれしかない。
力が弱くなって剣を振るう速度が遅くなるまで使い続けるしかない。
その時、ルフトーラの後ろからアウルスさんが突然現れ、アウルスさんの後ろ蹴りが決まって、ルフトーラが飛ばされる。回復した後チャンスを見て、シャドウウォークを解除したようだ。
スレイルさんは、重症ながらなんとか無事だが、俺達全員が圧倒的優位な状況から軽くない怪我をしてしまった。
対して、ルフトーラは必殺技フォッサマグナ4連発の不意打ちから既に五分以上まで押してきている。
フルバフの★5を3匹と俺も入れて4匹で同時に相手してここまで押されている。強い。
ルフトーラはこちらを振り向くと何か魔法を自分にかけている。
俺のその間に精神集中を完成させたリザレクションをスレイルさんにかけ、スレイルさんの生命力がほぼ全快まで回復した。
分身を出しているローランさんは俺が回復させてあげることができないので、ローランさんは自分でリザレクションをかけ生命力が全快したみたいだ。ローランさんは好相性技だからな。
次の近接戦闘が始めれば、また回復している余裕はないだろう。
(スレイルさん、ローランさん、ウィークがかかった感触はありました?)
俺が聞く。
(ないな。ウィークがかけられることも想定した軽い装備になっているようだ。)
敵が自分の力にあった強力な武器を持っているならウィークの効果も大きいが、余裕のある軽い装備しかもっていなければ殆ど意味はない。
他の手段を考えなければならない。
ルフトーラは魔法が終わったのか、再び攻撃に向かってきた。
見ると生命力が回復している。こいつもリザレクション使ったのか。ほぼ全快じゃないのかこれ。
分身のあるローランさんとスレイルさんで攻撃に入るが、当たり前のようにこちらの全ての攻撃をかわしながらスレイルさんに一撃を与えてくる。
アウルスさんと俺も加わっても勝てる気が全くしない。
(ウル殿、まだスローは覚えていなかったな。
スローなら確実に相手の動きを鈍らせられる。
私が放つからその場で習得して放ってくれ。
私のスローでは相手の技防御力に阻まれて完全に無効化された。
ウィークが効いたウル殿の精神力なら重ね掛けすれば効果が出てくるはずだ。)
アウルスさんが言う。
確かに動きを鈍らせるスローなら、着実にスレイルさん達の支援になる。
すぐ覚えられる2レベル技とは言え、ぶっつけ本番か。
でもやるしかない。出来なければスレイルさんが殺される。
俺は、アウルスさんの精神集中を見てスローを覚える。
同じ弱体化カテゴリのウィークや反対効果の技であるスピードは習得しているから原理は分かる。発動方法も分かった。
(スロー)
俺はルフトーラに技をかける。
効いた様子はない。
(ウル殿、焦るな。精神集中を急ぎすぎて貯めるエネルギーが完全になってない。
ウィークと同じペースで同じ量だけエネルギーを貯めるのだ。)
アウルスさんが、コーチとなって俺の覚えたばかりのスローを矯正してくれる。
また、スレイルさんにルフトーラの大きな一撃が決まった。
落ち着け。早く完全なスローを決めないと、スレイルさんが却って危険なんだ。
技は完成している。あとは、完全な威力で放つだけだ。
俺はもう一度精神集中を行う。
(スロー)
俺は再びルフトーラに技を放つ。
よしっ、今度は完全な威力で出せた。
ルフトーラの動きが気持ち遅くなった・・・気がする。
よし、連発するぞ。
(スロー)
(スロー)
俺は、発動と同時にすぐに次の精神集中をはじめスローを連発する。
3回もかけると、ルフトーラの動きが目に見えて遅くなってきた。
高レベル同士の戦いでは僅かなスピードの差は致命的だ。
俺の技が大丈夫と判断したアウルスさんはルフトーラに攻撃に向かっていた。
フルバフの★5が3匹で一斉攻撃している上に、敵にはスローまでかかっている。
これで倒せなければ化け物だ。
俺は4回目のスローをかける。
しかし、ルフトーラの動きが却って早くなる。
俺のスローをスピードで打ち消したか。寧ろかける前より早くなっている。
嘘だろ。
こんなの勝てるのかよ。
しかし、スレイルさん達は誰も怯まない。
俺のスローを信じて傷つきながら戦い続けてくれている。
安全な場所にいる俺が諦めちゃだめだ。
(スロー)
俺はスローの連射を続ける。
人間が使う魔法は予め準備しておけばいつでも使える優れものだが、弾数が尽きたら終わりだ。
ルフトーラは魔術師じゃない。一度に準備できる魔法の数はそこまで多くないはずだ。
しかも、フライトやディスペルガードまで使っていた。
スピードは多くてもあと1~2回のはず。
俺はそう信じて、スローの連射を続ける。
ルフトーラは再びスピードを使って俺のスローを打ち消すと、スレイルさん達の包囲から攻撃を喰らってでも、強引に抜け出し、俺に向かって真っすぐ飛んでくる。恐らく、今のが奴の最後のスピードだな。
俺は精神集中が終わったスローを放つと下に急降下する。
ルフトーラは俺の動きを先読みして的確に近づいてきた。
俺は急に方向を変えてスレイルさん達の方へ向かおうとする。
ルフトーラは反射的に剣を繰り出し、俺に一撃を加える。
さっきよりも深いな。かなり痛い。
だけど、そんなこと言ってられない。スレイルさん達の傷はその比じゃないんだ。
もう一度スレイルさん達に包囲してもらってスローの体制を整えないと。
ルフトーラはすれ違いざまにもう一発俺の背中に一撃を入れてきた。
なんとか、無事に追いかけているスレイルさん達のところまで来れた。
ルフトーラは、スレイルさん達に阻まれ、俺に止めを刺すのが無理だと分かるとスレイルさん達の方へ向かって飛んでいく。
(スロー)
俺は、少しでもスレイルさん達が楽になるようにスローを連発した。
ルフトーラは3匹の中で一旦後ろに下がろうとしたスレイルさんに強引に近づいて一撃をぶつける。
既にぎりぎりまで傷ついていたスレイルさんがついに力尽きた。
フライトのコントロールができなくなってスレイルさんの体が落ちていく。
誰も助けに行く余裕はない。
スレイルさん無事でいてくれ。
俺はそう祈りながら、スローを連発する。
どさっとスレイルさんの体が地面に墜落した音が聞こえる。
精神集中を乱しちゃだめだ。
俺は落ち着いてスローを続ける。
あのあと5回ほどスローをかけただろうか。
ルフトーラの攻撃が残るアウルスさん、ローランさんに当たらなくなった。
さらに2回ほどかけると、アウルスさん達が押し始めた。
ルフトーラはスピードをかけない。
準備していたスピードの回数が尽きたな。
とは言え、まだ他に準備している魔法があるはず。油断は禁物だ。
(スレイルさんの回復に行きます。)
俺はそう言って、落下したスレイルさんの方へ向かう。
意識はないが、まだ生きていた。
よかった。
なら助かるはずだ。
(リザレクション)
俺は、今度は回復技の連発モードに入る。
2回かけるとスレイルさんの意識が回復した。
出来ればあと1~2回かけて生命力もほぼ全快させたい。
(ウル殿、もう大丈夫だ。
決めに行くぞ。)
スレイルさんは、上で戦っているアウルスさん達に向かって飛んでいく。
俺も後を追う。近接はしないが。
スローの効果は大きく、アウルスさん達は、ルフトーラを押していた。
そこへ復帰したスレイルさんが加わったのだ。
ルフトーラとしてはもう打つ手がないだろう。
隠し玉があるなら、既に使っているはずだ。
(諦めて降伏しろ。
もう貴様に勝ち目はない。)
アウルスさんが言う。
ルフトーラは何も返答はせず、何か魔法の発動をした。
凄い魔力が放たれるのが分かる。
「バーニングソウル」
スレイルさんの接近を待って、ルフトーラは自爆魔法を放ったのだ。
凄い光で何も見えない。
まだ、遠くにいた俺もかなり痛かった。
遠巻きに戦闘を見てたリッチモンド軍の兵士にもかなりの被害が出た。
俺は、再度リザレクションの精神集中を始める。
そして、精神集中が終わる頃光が消えてきた。
俺はスレイルさん達を見る。
3匹とも無事だった。よかった。自爆魔法なので全員気絶とか、下手したら即死とかを想像していたので俺はほっとした。
(スレイルさん、大丈夫ですか。今リザレクションをかけます。)
俺はスレイルさんのところへ飛んでいき、一番危なく見えたスレイルさんにリザレクションをかける。スレイルさんの生命力はほぼ全快まで回復した。
(ウル殿、ルフトーラが魔法を放った時何かしてくれたのか?)
スレイルさんが聞いてくる。
(いや、何もできませんでした。)
俺の答えを聞いて、アウルスさんとローランさんも顔を見合わせる。
(何者かが我々を守るべく何か防御壁らしきものを張ってくれた。
おかげで奴の自爆でも大したダメージを受けずに済んだ。)
アウルスさんが言う。
俺は周りを見回すが、それらしき気配はない。
さらに遠方に俺達を怯えながら見るリッチモンド軍の兵士達がいるだけだ。
(正体は分かりませんが味方ですよね。
ならいいんじゃないでしょうか。
予定を進めましょう。)
俺はそう言って、本来の予定を進めることにした。
まずは、一緒に連れてきたがリッチモンド軍から離れたところに置いてきたパール伯とジェラさんを迎えに行く。
そして、ジェラさんに、
アレンを討ち取ったこと。監禁されていたパール伯を保護していること。
パール伯はメキロ家を協力して反ノリクの連合をする予定であること。
ゆえに、ここにいるのは反乱軍だ。そうでないなら解散して地元に戻るよう宣言してもらった。
そして、横にはパール伯がそれに同調してお墨付きを与えてくれた。
最初は信じられないみたいで誰も動こうとしなかったが、アレンの遺体を見せ、パール伯が本物だと分かると、大半はアレンに強引に呼ばれた貴族だったらしく、同行していた貴族たちは次々と軍を引いて行った。
リッチモンド家の直属軍は指揮系統が破壊されて動けなくなっていたが、パール伯にまとめてもらい、俺達もパール伯を護衛しながらカージリアに帰ることになった。
本当にうまく行っちゃったよ。
ノリクの奴は何をやってるんだ?
まさか、ノリクが急死したとかないよな。
そうとでも考えないと、有り得ない大成功だ。




