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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
はじめての冒険
6/122

6初めてのクエスト

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    モンスター仲間。(★2イーグル)

ガルガン   モンスター仲間。(★1ヤングタイガー)


 次の日の朝、俺達は調理されたご飯を食べ、部屋を出た。


「依頼を受けてくるから、ちょっと待っててね。」

 ご主人様は、そう言ってモンスターセンターの中を進んでいく。

 後をついて行くと、その先には、いくつもの張り紙が張ってある巨大な掲示板があった。


 ご主人様は、貼ってあるいくつもの張り紙を見比べて考え込んでいる。


(ご主人様、難しい顔をしてるね。何を考えてるの?)

 俺が聞くと、


「どの依頼を受けようか考えているのよ。」

ご主人様が答える。


(どうして、依頼を受けるの?)

俺がさらに聞くと、


「簡単に言うとね、モンスターセンターで、ウルは技を教えてもらったでしょ。

 その代わりに何かセンターの斡旋している仕事を引き受けてあげないといけないの。

 本当はもっと複雑な仕組みなのだけど、お金とか言ってもウルには分からないでしょうから。」

 ご主人様は、依頼を受ける理由を教えてくれた。


 いや、お金とか凄く分かるんですが。前世では人間だったし。

 だけど、ここはあまり突っ込まない方がいいような気がする。

 何となく、俺が技を教えてもらった分のお金を稼がないといけない感じだ。

 ご主人様は俺のためにそこまでしてくれたのだから、俺が頑張らないと。


 でも、俺には張り紙の文字は読めない。

 前世のゲームの世界でも、たくさんある依頼の中からどれがいいかあれこれ考えた記憶が懐かしい。

 どんな依頼があるか見てみたいけど、やっぱり、人間の文字を勉強しないと無理だよね。


「まだ朝なのに依頼日が今日になってるし報酬もいいし、これにしようかな。」

 そうこうしているうちに、ご主人様は受ける依頼を決めたようだ。


(紙にはなんて書いてあるの?)

 俺は、ご主人様の選んだ依頼になんて書いてあるかを聞いてみた。


「商隊の護衛ね。森の奥の村に行くから護衛をしてほしいという依頼よ。」

 本当は依頼の内容じゃなくて、書いてある文字をそのまま読んでほしかったのだけど、そんなことは言えないよな。


(森の奥は危険なの?)

 仕方ないので、他に思ったことを聞いてみる。


「依頼で向かう村の奥には強いモンスターがいるのよ。

 でも、依頼は村までの護衛だから、大丈夫よ。」


 こういうのって、依頼する側は最悪を想定して依頼するんだよなあ。

 こんなに安直に考えて大丈夫なのだろうか。

 でも、ご主人様は今までこうやって依頼を受けてきたわけだし、信じるしかないよなあ。


 俺達はセンターの宿泊施設のチェックアウトを済ませ、ご主人様に連れられて、依頼人の商人のところにやってきた。

「モンスターセンターから派遣されたレンディールです。依頼を受けるためにやってきました。」


 商人はご主人様と話しているが、当然商人の話の内容は分からない。

 ご主人様の話から内容を推測していくしかない。


「でも、商売でフルゴ村へ行くなんて珍しいですね。」


「ああ、貴方の故郷ですか。商隊って書いてあったのでもっと大人数かと思ってましたが、貴方だけなのですね。」


「いや、お一人でも構いませんよ。報酬さえ貰えれば。寧ろ、お一人なら何かあった時、守りやすいですからね。」


 俺は、ご主人様の言葉から依頼内容を推測する。

 目の前の商人をフルゴ村まで安全に送り届ける。

 それだけ分かれば十分だ。


「それは、すぐにでも出発したいですよね。大丈夫ですよ。冒険者たるもの、いつでも準備はできています。

 早く帰って、お父様に手に入れた薬草を使ってあげたいですよね。

 では、すぐに出発しましょうか。」


 すぐに出発か。この商人の親父さんが病気か何かなのかな。

 それなら、確かに急いだほうがよさそうだ。

 ご主人様は、目の前の商人に俺達を紹介すると、すぐに出発することになった。



 俺達は、俺を先頭にして街道を進んでいく。

 真ん中にご主人様が商人と並んで歩いている。

 リーザは、ご主人様が背中に背負った荷物につかまっている。

 徒歩の速度でずっと空中を飛ぶのは流石に疲れるだろうからなあ。

 そして、一番後ろをガルガンが警戒しながらついて来る。


 とは言え、この辺りは見晴らしもよく、何かが出るような場所には見えない。

 一応警戒はしているが、森に入るまでは大丈夫のような気がした。


 特に何事もなく、日が暮れてきた。

 今日はこの辺りで野宿かなと思っていたら、ご主人様が商人に話しかけている。


「本来なら、今日はこのあたりで野宿ですが、今日はもう少し歩きましょう。」


 ご主人様が、夜の強行軍するなんて何かあるのだろうか?

 俺は依頼人である商人の言葉は理解できないので、2人の会話をご主人様の言葉だけから状況を判断する。


「今日、あと2時間くらい歩いておけば、明日の夜にはフルゴ村に着けます。」


「そうです。本来2日半かかるところを、2日で行くつもりです。」


「朝早くからセンターに依頼されて、しかもかなり割高な報酬まで用意したということは、急いでいるのでしょう。

 お父様、心配ですよね。分かります。1日でも早く薬草を届けましょう。」


 ご主人様は優しいなあ。少しでも早く薬草を届けたい商人に気遣っているんだ。

 商人が、ご主人様に頭を下げている。ご主人様の気遣いが嬉しかったのだろう。

 分かるよ、その気持ち。


「ウル、ガルガン。これから暗い道を進むからしっかり警戒してね。」

 ご主人様はそう言うと、荷物からランタンを出して、火をつける。


 センターの宿泊施設にはシャワーがあったから懐中電灯とかもあるかと思ったから、意外だった。

 そう言えば、センターの宿泊施設の明かりはランプだったよな。

 俺の中でこの世界の科学水準が分からなくなってきた。

 それは、おいおい確認していくことにしよう。


 ここから先は森に入るから、何かと遭遇する可能性が高くなるはずだ。

 今は警戒しながら森に入っていかないといけない。


 俺達は、森の中を進んでいく。

 フクロウか何かの声が聞こえる。

 流石に、フクロウは襲ってこないだろうが、フクロウの声に紛れて何かが襲ってこないとも限らないから警戒を怠らないようにしないと。


 3時間ほど歩いただろうか。

 今のところ特に何にも遭遇していない。

 しばらくして、ちょっと開けた場所に来た。


 野宿するならここかなあ。俺がそう思っていると、ご主人様が商人に話しかける。


「今日は、この辺りで野宿にしましょう。あまり無理して明日に差し支えてもいけませんが、予定より少し多めに歩いたので、明日ちょっと早めに着けそうですよ。」


 やっぱりね。

 ご主人様も同じこと考えていたみたいだ。


 ただ、今夜はご主人様だけじゃなく依頼人の商人も守らないといけない。


(ねえ、ご主人様。森の中は見通しが悪いし、依頼人の商人も守らないといけないし、今日は交代で起きて番をした方が良くない?)

 俺は、ご主人様に提案してみた。


「そうね。明日は、村の中で休めるでしょうから、そうしましょうか。

 でも、リーザは夜は遠くが見えないでしょうから、私とウルとガルガンで番をしましょう。」


 ご主人様が、あっさり俺の案を受け入れてくれて驚いた。

 モンスターの意見でも偏見なく判断してくれるんだなあ。

 それなら、今度から思ったこと言ってみようかなと思った。


 結局ガルガン、俺、ご主人様の順番で番をすることになった。


(ねえ、ウル。交代してよ。)

 俺は一度寝たが、ガルガンに起こされて目が覚める。


 次は俺の番か。

 何も起こらないといいけど。

 俺は耳を澄ましながら何か近づいてこないか警戒する。

 夜行性の小動物がこそこそ動く音があちこちでする。

 何か近づいてこないか警戒するのには邪魔だが、これだけ餌が多いなら腹を空かせて襲ってくる動物もいないか。


 俺は、3時間くらい辺りを警戒していたが、幸い何にも襲われることはなかった。

 そろそろ時間だし、ご主人様を起こそう。


(ご主人様、起きてください。)

 俺はご主人様をゆすって起こす。


「何も起きてない?」

 ご主人様は、さっと目を覚ますと、俺にそう聞いてきた。


(今のところ何も起きてないです。)

 俺はそう答える。


「ウル、お疲れ様。ガルガンは寝ているみたいね。ウル、あとは私が見ているからもう休んで。」


(それじゃあ、後はよろしくお願いします。ご主人様、おやすみなさい。)

 俺はそう言うと、ご主人様の傍で眠りについた。



 次の日の朝、俺はご主人様に起こされて目が覚めた。

(おはようございます、ご主人様。)


「おはよう、ウル。幸い何も襲ってこなかったわよ。」

 こういうのって、得てして来てもいいようにしっかり警戒した時ほど拍子抜けするほど何もなかったりする。

 交代で番をしたのが無駄になったかなあ。でも、色々な動物がいた森だし、意味がなったわけじゃないと思う。

 ご主人様も番が無駄になったことを気にしていないようでよかった。


「それじゃあ、さっと保存食食べて出発しましょうね。」

 既に、リーザとガルガンは起きて保存食を食べている。

 今回の依頼は、獲物の現地調達に時間をかけるわけにはいかないから、町で保存食を買い込んで食事はそれで済ましているのだ。



 食事を済ませ、俺達はフルゴ村へ向かって出発した。

 そして、工程は順調に進み、日が暮れるころ無事フルゴ村に到着した。


 商人に案内されて、商人の実家に向かう。

 商人は薬草を母親と思しき人物に渡すと、ご主人様と話し始めた。


 ここもご主人様の言葉から、状況を推測する。


「早く到着してよかったですね。お父様、良くなってほしいですね。」


「いえ、ダイクさんにとってその方が良いかなと思っただけですので。」

 依頼人の商人の名前が分かった。今更だけど。


「ええ、私たちは今日はこの村の宿に泊まります。」


 商人が荷物から袋出して、ご主人様に渡している。これが、依頼の報酬かな?


「はい、約束の報酬確かにいただきました。ありがとうございます。」


 商人とご主人様は握手すると、俺達は商人の実家を後にした。

 これで、無事依頼を終了できたようだ。

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