54ノアの迷宮(5)
登場人物
ウル(主人公)狼に転生した元人間。(★3シルバーウルフ)
パワー ウルの仲間モンスター。(★4モサ)
ロウガ ウルの体の元の持ち主。
ケルティク ロウガの友人でメキロ伯爵配下(★4ヘルハウンド)
俺達は、戦術の試練の1つ目を突破した。
すると、扉に入る前の部屋に戻ってきた。
俺達全員の傷も癒え、生命力もしっかり回復する。
このあたりのサービスはやたらいいな。
残っているのは技ありの扉だ。
(今度は技ありで戦うんだよな。
最初にお互いの使える技を知っておいた方が良くないか?)
俺は2匹に提案する。
(俺様もそれがいいと思うぜ。)
(そうだな。その上で作戦を立てよう。)
2匹の同意が得られたので、俺達は自分の使える技をお互いに申告する。
俺は忘れないように、地面に文字を書く。
(これって技の名前を書いたんだよな?)
パワーが俺が書いた文字について聞いてくる。
(そうだ。何度でも見直せるから忘れたら聞いてくれ。)
文字というのは、後から何度でも見返せるのが便利だ。
前世では当たり前だったことがこれほど便利だとは思わなかった。
ウルの習得技
ヒーリング・リジェネレーション・クリアランス
サンダー・ライトニング・ダブルスラッシュ
ウィーク・ホールド・ディスペルマジック・デストラクション
ストレングス・スピード・ウォーターブリーズ・フィッシュムーブ・フライト
フリーアクション・アナライズマジック・エレメンタルガード
パワーの習得技
ヒーリング・リジェネレーション
ベアハッグ・トリプルスラッシュ・ジャンプアタック
インパルス・ウィーク・ホールド
ストレングス・スタミナ・ウォーターブリーズ・フィッシュムーブ
エレメンタルガード
ケルティクの習得技
ヒーリング・リジェネレーション・クリアランス
サンダー・ライフスティール
スリープ・コンフュージョン・ディスペルマジック
ストレングス・スピード・スタミナ・フリーアクション・フライト
トリプルスラッシュ・ジャンプアタック
ブラッドファング・ディスペルファング
(どこから考えるか。
まずは絶対かけられたくない技とかあるか?)
俺は2匹に聞いてみる。
(ホールドと言うのは、敵の動きを止められるのか?)
ケルティクが聞いてくる。
(縛るツタとか縄とかがないと使えないからホールドは考えなくていい。
この展開で敵だけホールドが使えると言うことはないだろうからな。)
(なら、フリーアクションは必要ないな。)
(ああ、そう思うぜ。
必要ない技を消して考え直さねえか。
フリーアクションとホールドと水中用の技は要らないな。)
自己申告で地面に書いた技一覧から該当技を消してみる。
ウルの習得技(一部除外):
ヒーリング・リジェネレーション・クリアランス
サンダー・ライトニング・ダブルスラッシュ
ウィーク・ディスペルマジック・デストラクション
ストレングス・スピード・フライト
アナライズマジック・エレメンタルガード
パワーの習得技(一部除外):
ヒーリング・リジェネレーション
ベアハッグ・トリプルスラッシュ・ジャンプアタック
インパルス・ウィーク
ストレングス・スタミナ・エレメンタルガード
ケルティクの習得技(一部除外):
ヒーリング・リジェネレーション・クリアランス
サンダー・ライフスティール
スリープ・コンフュージョン・ディスペルマジック
ストレングス・スピード・スタミナ・フライト
トリプルスラッシュ・ジャンプアタック
ブラッドファング・ディスペルファング
(あと、時間のかかる技も基本的には要らないよな。サンダーで精神集中が妨害されるし。)
(それなら、先にエレメンタルガードをかけておけばいいんじゃねえか?)
確かに、パワーの言う通りかも。
(私はスピードだけをかけて、相手に近付きディスペルファングをしようと思うが。)
ケルティクが言う。
(ディスペルファングは肉体技だから、精神集中は要らないんだよな?)
(若干貯めの時間がかかるが精神集中は必要ない。)
なら、今回はケルティクがメインで動く方向で考えるか。
(それなら、当然敵も狙ってくると思うぜ。フライトで飛んで防ぐのか?)
パワーが聞いてくる。
(敵もフライトを使ってくるかもしれないぜ。)
(ディスペルマジックとフライトってどっちが早いんだ?)
(試してみるか。)
俺は、ケルティクと精神集中の速さを比べた。
1回目は俺がフライトでケルティクがディスペルマジック。
2回目はその逆。
どちらも、ディスペルマジックの方が早かった。
フライトは一度切れるとほぼかけ直せないと考えた方がいいようだ。
(なら、俺様達全員空飛んだ状態で、敵を全部地上に落とせば勝ちなんじゃねえか?)
パワーが言う。
この状態なら偽ケルティクのディスペルファングは届かない。
敵のディスペルマジックはサンダーで妨害できる。
敵のフライトもサンダーで妨害できる。
(確かにかなり有利になるけど、そうなるとサンダー・インパルスの打ち合いになるな。ダメージ量で不利になっていると危ないかもしれない。
ただ、ここまで来れれば敵は遠距離技撃ちまくるしか手がなくなるのは大きいな。)
俺が言う。
(そもそも空を飛ぶ必要があるのか?
結局最後はサンダーの打ち合いになるなら、サンダーより早い技がない以上、サンダーを撃ちまくるしかなく、空を飛んでいるアドバンテージがなくなるのだが。)
ケルティクが言う。
確かにそうだな。何か強化技を維持したとしても、サンダーの打ち合いになればアドバンテージがあるとは思えない。
(ただ、支援なしで入ってサンダーを撃ちまくるだけと言うのも芸がない気がするな。最初に誰かを集中して狙うかくらいか。)
(サンダーには、敵の技を妨害する意味があるから、なるべく対象はばらけさせた方がいい。敵に強化技かけるのに成功されると不利になっていく。)
これはケルティクの言う通りか。
(俺様のインパルスは、サンダーほど早くねえから、俺様は遠距離技の打ち合いには入れねえぜ。
相手が地上にいるなら、俺様は突っ込んで敵を蹴散らしに行こうと思うぜ。)
(パワー、最低限ほしい強化技は何だ?)
(ストレングスとスピードだな。)
(それじゃあ、事前にかける支援は俺のかけるスピードとパワーが自分でかけるストレングスだけにするか。両方とも2レベル技だから時間はかからない。それだけなら敵のフライトは間に合わない。)
(では、私は自分にスピードだけをかけて、場合によってはディスペルファングを狙うか。)
(基本はそれでいいと思うが、敵が固まっているところに自分だけ突っ込むようなことだけはするなよ。)
俺は念を押す。
(だとすると、俺様は最初はすることねえぜ。敵がバラバラに動いてくれればいいけどよ。)
突っ込めない、サンダーの打ち合いにも参加できないとなると、確かにパワーのできることがないな。
(パワー、最初はダメもとでインパルス撃ちまくってくれないか?)
(サンダーで妨害されるだけだぜ。)
(それも承知の上だ。そうすることで、俺の偽物か偽ケルティクのどちらかはパワーにサンダーを撃ちまくらざるを得ないはず。
2レベル技のインパルスの方が1発のダメージがでかいからな。
その隙を付いて、俺も大技を撃てそうか考えてみる。)
(分かった。敵が固まっている間はそれでいくぜ。)
パワーは納得してくれた。
(時間的に敵が使える技もストレングスとスピードだけだ。
敵は耐久力に劣るらしいから、敵が先に動き出すはずだ。)
(それじゃあ、扉に入るか。)
俺達は、予め決めた強化技だけをかけて扉に入る。
すると、前の部屋と同じように俺達の偽物が待っている。
偽パワーだけでかいな。ストレングスがかかっているようだ。
俺は、精神集中しているのを確認し、偽パワーにサンダーを放つ。
偽パワーの技を中断させる。
パワーも偽ケルティクからサンダーを食らい、精神集中を中断させられたようだ。
そして、俺は自分の偽物からサンダーを食らう。誰が撃ってくるかはともかく予想通りの展開だ。
敵はまだ動かないようなので、俺は再度偽パワーにサンダーを放つ。
偽ケルティクがパワーにサンダーを放って再度精神集中を中断させる。
しかし、今度は俺の偽物はサンダーを撃ってこない。
偽パワーの陰に隠れた。そうか、何か大技を使う気のようだ。
俺からは偽パワーの体が盾になって、俺の偽物にサンダーの射線が通らないため、俺の偽物の大技が妨害できない。
なるほど、図体がでかいパワーの陰に隠れて大技の準備をすると言う手があったか。
敵にしてやられた感はあるが、そんなことを考えている暇はない。
勝つために、俺もすぐに相手と同じことを実行することにした。
(パワー、しばらく守ってくれ。)
俺はパワーの後ろに隠れる。
そして、精神集中を始める。
その間も両ケルティクが両パワーにサンダーを撃ちまくっている。
俺の偽物が何をしたかは分からないが、俺は精神集中が終わった。
(リジェネレーション)
俺はパワーに技をかける。俺は好相性技だから回復速度も普通より早い。
そして、状況を確認するために前に出る。
その瞬間、俺の偽物からライトニングが飛んできた。かなり痛い。
しかも俺の偽物の周りにバリアのようなものが見える。自分にエレメンタルガード(推定サンダー)までかけてやがる。
偽物は先に精神集中を始めたため、3レベル技を2つも成功させたようだ。
俺は、早く敵のエレメンタルガードの効果を消すために、俺の偽物にサンダーを放つ。
当然1回くらいでは効果は切れない。
ケルティクは偽パワーにサンダーを使わざるを得ないので、俺だけで削り切るしかない。
サンダーを連発していると俺に2度目のライトニングがくる。
あと2-3発食らうと危ないかも。
すると、パワーが俺の前に出て代わりにライトニングを受けてくれた。
パワー助かったぜ。とても声に出して言う暇はないが。
俺はサンダーを連発して、俺の偽物のエレメンタルガードをなんとか削り切る。
とは言え、ライトニング2発のビハインドは大きい。
俺もパワーも敵に比べてかなりのダメージを食らってしまった。
だが、こちらはパワーにリジェネレーションがかかった。
時間が経てば経つほど、風向きは俺達に向いてくるはずだ。
俺は再度パワーの陰に隠れ、今度は自分にもリジェネレーションをかける。
そして、またサンダー連射に戻ると俺の偽物がいない。また、パワーの陰に隠れているようだ。
俺は、相手の出方を確認しながら、サンダーを連射する。
すると俺の偽物が飛び出すと偽ケルティクに何か技をかけた。
今度はエレメンタルガードじゃないよな。
俺は、今度は偽ケルティクにサンダーをかける。バリアも見えなかったし、ダメージは通っているようだ。
その直後、偽ケルティクが空中から突っ込んでくる。
フライトか。
空中から高速移動してディスペルファングしまくる作戦のようだ。
最初俺達も同じことを考えていたが、手間の割に効果が小さいと判断してやめたのだが、現状ダメージでビハインドが大きいからリジェネレーションが消されると厳しい。
それを見て、俺は技の精神集中に入る。
今、俺の偽物はパワーのインパルスを防ぐのに手いっぱいだ。
今なら技を使える。
(ディスペルマジック)
俺は偽ケルティクに技を放つ。
偽ケルティクはスピードを付けたまま地面に落ちる。
うまく着地してダメージを減らしたみたいだが、それでもかなり痛いはずだ。
それを見て、パワーが偽ケルティクに突っ込んでいく。
ケルティクもすぐに続く。
よし、偽パワーの抑えは俺に任せろ。
俺は、偽パワーが動くまでサンダー連打モードに入る。
すぐに、偽パワーが偽ケルティクの方へ走り出した。
俺はサンダー連打の対象を俺の偽物に切り替える。
俺と偽物はお互いに相手に大技を使わせないよう、サンダーの打ち合いモードに入った。
俺とパワーには偽物に対してライトニング1発分のビハインドがある。
だが、ほぼ無傷のケルティクに対して、偽ケルティクはかなりのダメージを負っている分アドバンテージもあるはずだ。
なるべく早く偽ケルティクを倒したい。
それは、パワーもケルティクも同じことを思っているようで、突出した偽ケルティクに2匹で集中攻撃をはじめた。
だが、偽ケルティクは偽パワーが追いつくまで時間を稼ごうと、かわすのに専念して2匹の攻撃をかわしまくっている。一応ケルティクの攻撃が何回か当たっているが、致命傷にはほど遠い。
俺も同調するため、サンダー連発のターゲットを偽ケルティクに切り替えた。
俺の偽物が大技を使い始めないかだけはしっかり見ておく。もし、俺の偽物が大技を使い始めたらサンダーを俺の偽物に撃って技の妨害をするつもりだ。
パワーは偽パワーに偽ケルティクの援護をされないよう、偽パワーの前に立ちはだかった。そのまま偽パワーと殴り合いに入る。
パワーが時間を稼いでくれている間に、俺とケルティクで偽ケルティクを倒さないと。パワーはライトニングのビハインドがある分、殴り合いを続けたら負ける可能性が高いからだ。
ケルティクが攻撃を優先して強引に攻めに行ったところを、偽ケルティクがブラッドファングで反撃してきた。ケルティクの生命力が奪われる。
まずい。これで偽ケルティクとのアドバンテージが失われたかも。
ケルティクは一旦距離をとった。ここで焦ってミスを重ねるわけにはいかないからな。
(偽パワーを頼む。)
俺は、そう言いながら俺の偽物のサンダーを受けつつも偽ケルティクに突っ込む。
偽ケルティクは俺が自分と同様にボロボロなのを知って俺に突っ込んできた。
ケルティク、俺の言いたいことを分かってくれているよな。
俺は偽ケルティクと殴り合いに入る。
当然相手の方が強い。
だが、先ほどの偽ケルティクのブラッドファングを見る限り、技の前に一瞬ための動きがあった。
肉体技といえども、追加効果を出すための動きというのがあるのだろう。その分かわしやすい。
ブラッドファングだけは絶対かわす。
俺はそう思いながら、偽ケルティクと牙と爪を当て合う。
よし、1発目のブラッドファングをかわした。
そこで、一旦偽ケルティクと離れて距離をとる。
いつの間にか、俺の偽物からのサンダーが飛んでこなくなっていた。
パワーの方を見ると、偽パワーが小さくなっていた。
ケルティクは俺の言いたいことを察して偽パワーにディスペルファングを決めてくれたようだ。
そして、そのまま俺の偽物に向かっていた。
俺の偽物はケルティクにサンダーの標的を変えていたんだな。
これで、パワー対偽パワーの戦いは、パワーだけがストレングスがかかった状態になった。生命力にライトニング1発分のビハインドがあっても、ここは圧倒的有利だ。
ケルティク対俺の偽物の戦いも、肉弾戦闘力の差でケルティク有利のはずだ。
問題は俺対偽ケルティク。俺の生命力はボロボロだし、肉弾戦闘力も相手の方が上。なんとかパワーが偽物を倒すまで時間を稼がないと。
偽ケルティクが、パワーの方を見た。
ディスペルファングするつもりだな。絶対にさせないぜ。
俺は偽ケルティクよりも先にパワーの方へ走る。そして、走り出した偽ケルティクの前に立ちはだかる。
偽ケルティクは走る前にためを行った。ディスペルファングのはずだ。
なら、俺が受ける。
既にボロボロとは言え、この一撃くらいなら耐えられる。
俺は敢えて偽ケルティクの牙を受けた。
生命力は吸われない。やはりディスペルファングだったな。
パワーのストレングスを消されるわけにはいかないからな。
その隙に俺も偽ケルティクに噛みつき、噛み合いに入る。
その瞬間偽ケルティクがニヤリと笑ってために入る。
しまった。ブラッドファングか。噛み合い状態じゃかわせない。
俺は必死に振りほどこうとするが、時すでに遅し。
ごめん。ミスっちまった。
パワー、ケルティク、後は頼んだぞ。
そう思ったところに、パワーのトリプルファングが偽ケルティクの背中に直撃する。
1回ブラッドファングで回復したとはいえ、偽ケルティクもぎりぎりだったようで、偽ケルティクは動かなくなった。
(ウル様、大丈夫か。)
そこへ偽パワーが後ろからパワーにトリプルスラッシュを決めてきた。
だが、図体のでかいパワーは今までに散々サンダーを喰らっているにも関わらず、まだ耐えている。
(パワー、助かったぜ。)
俺はすぐに精神集中に入る。
パワーは大きな一撃を受けつつも再び偽パワーと対峙する。
(ウィーク)
偽パワーに技をかける。
俺の偽物はケルティクの相手に精いっぱいで、サンダーでこちらの妨害をしてくる暇はない。
これで俺はほぼ精神技がかけ放題になった。数の差で圧倒的に有利になったはずだ。
力の出なくなった偽パワーをパワーは掴みあげてベアハッグを決める。
片や強化中、片や弱体化中。支援にここまで差が出るとパワーと偽パワーの戦いは一方的になった。
俺もダメ押しのライトニングをぶつけて偽パワーを倒す。
2匹倒すとあとは一方的な戦いになって、無事勝利することができた。
だが、勝てたとはいえ、今回の戦いは反省することが多い。
偽パワーの陰に隠れて精神集中するという方法で敵にアドバンテージをとられたし、何より敵のブラッドファングを甘く見すぎていた。
パワーが気を利かせて助けれくれなければ、俺は偽ケルティクにやられてそのまま負けていただろうな。
俺は肉体技が苦手なこと、そして攻撃力が上がらないからと軽視していたけど、ブラッドファング・ディスペルファングの強さを思い知った。
時間があればケルティクに教えてもらおう。
そんなことを考えていると、
「見事だ。汝らは戦術の試練を突破した。」
と言う声が聞こえて、最初の部屋に戻ってきた。
俺達の傷も癒えて生命力も回復している。
このへんのサービスはやたらいいな。
よし、残りは判断力の扉だけだ。




