53ノアの迷宮(4)
登場人物
ウル(主人公)狼に転生した元人間。(★3シルバーウルフ)
パワー ウルの仲間モンスター。(★4モサ)
ロウガ ウルの体の元の持ち主。
ケルティク ロウガの友人でメキロ伯爵配下(★4ヘルハウンド)
俺達は、知恵の試練を突破した。
すると、最初の部屋に戻ってきた。
知恵の扉が消え、残るのは戦術と判断力の2つの扉だ。
「次は、どこへ行く?」
ケルティクが聞いてくる。
「俺様はやっぱり戦いたいぜ。」
パワーが言ってくる。
「それじゃあ、次は戦術の扉に進むか。」
俺はそう言って、戦術の扉を開ける。
扉の奥には、再び部屋があり、奥にさらに2つの扉がある。
部屋に入ると声が聞こえてくる。
「この先にはお前達全員と同程度の能力を持つ敵が待っている。
左の扉は技が使えぬ。
右の扉は全ての能力が使える。
両方の敵を倒して汝らの戦術を示せ。」
自分のコピーと2回戦うのか。
それも技なしと技ありの2回。
入る前に強化したらダメかな?
「扉を開ける前に技で強化してもいいのか?」
俺は聞いてみる。
迷宮の主がどこにいるか分からないが俺達を見ているのは間違いない。
「左の扉は入るときに全ての技は解除される。
右の扉は、敵も汝らと同じ時間自らの強化を行うことになる。」
時間的に互角の勝負をしろと言う事か。
「敵も同じ支援を使うのか?」
「そうとは限らない。
同じ時間で可能な支援を行う。
また、敵は支援に必要な時間が分かった上で支援を行う。」
つまり、途中で急に扉に入って不意を突くことができないってことか。
「負けたらどうなる?」
ここも気になるので聞いてみる。
「汝らが最終関門を突破するまでに1回だけ失敗が許される。
2度目の失敗により、汝らは迷宮の外に追い出され、二度と挑戦する事ができなくなる。」
負けても殺されることがないというのは結構な安心感ではある。
「まずは、最初は技なしの扉で様子を見るのがいいと思うが。」
ケルティクが言ってくる。
「そうだな。」
パワーも同意する。
「俺もそれがいいと思うが、入る前に作戦を立てておこう。
正直技なしの扉は俺は足手まといにしかならないと思う。
俺はなるべく時間を稼ぐから、敵を倒すのはパワーに頼みたい。
パワーは俺達の中で一番でかいから俺とケルティクの偽物両方でも相手にできると思う。」
「私は素早さにはそこそこ自信があるからパワー相手でも立ち回れると思うが。」
ケルティクが言ってくる。
「なあ、本番のつもりでここで練習しないか?」
パワーが言う。
それがいいな。お互いの力を知った上で挑んだ方がいい。
多少怪我をしても回復技で治せるわけだし。
「それじゃあ、パワーとケルティクで技なし一騎打ちしてみてくれないか。」
俺が言うと、パワーとケルティクが向かい合った。
ケルティクが先に仕掛ける。
パワーの左足に飛び、牙で一撃を加えて離脱する。
パワーも爪で攻撃するが一瞬遅く空を切る。
その後も同じような展開が続く。
ケルティクの攻撃は半分は防がれながらも着実にパワーにダメージを与えていく。
逆にパワーの攻撃はケルティクには当たらない。
「これくらいでいいんじゃないか。」
俺は2匹の戦いを止める。
お互いに力のほどは分かっただろう。
俺はパワーにヒーリングとリジェネレーションをかける。
「1発も当てられなかった。悔しいぜ。」
パワーが言う。
「パワー、もっと練習すればいいさ。
今は試練のことを考えよう。
見てて思ったんだが、ケルティクには偽のパワーを相手してもらうのがいいと思う。
その間に、俺とパワーで偽ケルティクと俺の偽物を倒そう。」
「どのようにやるのだ?」
ケルティクが聞いてくる。
「ケルティクはパワーの攻撃を全部かわしていたけど、結構ぎりぎりだった。
俺もパワーと一緒に攻撃に入って2対1になると、全部はかわせないだろ?
しかも、俺は相打ち覚悟で噛みつきあいでも構わない。動きが止まったところをパワーの一撃で偽ケルティクを倒せるだろうから。
だから、偽ケルティクは逃げ回るしかない。
安全のために距離を開けるようなら、その隙に俺の偽物を2匹がかりで一気に潰す。
こんな作戦でどうだ?」
「俺様は、ウル様の偽物の動きが気になるぜ。」
パワーが言ってくる。
確かにほぼ足手まといとは言え、敵には俺の偽物もいる。
こいつが何をしてくるかが一番読めない。
この戦い、足手まといになると思っていた俺と俺の偽物がキーパーソンになるのかもしれない。
考えよう。
もし、偽パワーと俺の偽物が、ケルティクと俺に襲い掛かってきたらどうするか。
ケルティクにパワーを任せ、俺は自分の偽物と噛みつき合う。
本物の俺の方が耐久力が上なら勝てるはず。勝った後加勢に行けばいい。
だが、偽物側は耐久力に劣る。偽物はこの手は使えない。
やはり、偽の俺を早めに潰して数で優位に立とうとするな。
「俺を狙ってくると思う。
数で優位に立つために。」
「私もそう思っていた。」
ケルティクも同意する。
「なら、俺様はケルティクの偽物からウル様を守ればいいんだな。」
「そうだな。そうしてくれると助かる。
パワーはでかいからケルティクに短時間では倒されないはず。
隙を見て、俺の偽物を倒せれば勝利が見えるはずだ。」
あと、1つ心配事が出来たので、迷宮の主に聞いてみる。
「仲間と仲間の偽物は一目で見分けがつくのか?」
「色が違うから分かる。
入口で入り口で戦ったはずだ。」
そう言えば俺の偽物は体毛が黄金だったな。
「俺の偽物は体毛が金色だった。」<本物は銀>
「俺様の偽物は灰色だったぜ。」<本物は茶色>
「私の偽物は白色だったな。」<本物は黒>
それなら、味方と見間違えることはないな。
「それじゃあ、作戦の確認をしよう。
ケルティクは、偽パワーを相手に時間を稼ぐ。
俺とパワーで隙を見て俺の偽物を倒す。
パワーは偽ケルティクから俺を守ることを優先する。
俺の偽物を倒したら、偽ケルティクを2匹で倒してケルティクの支援に入る。」
「了解した。」
「分かったぜ。」
よしっ、では扉に入ろう。
扉に入ると、少し大きめの部屋になっている。
十分に動けるだけの広さはあるようだ。
そして部屋の奥に俺達の偽物が待っている。
みんな、予想通りの体色をしているので見間違えることはない。
敵は3体に分かれて走ってきた。
迷宮の主は俺達が立てた作戦を実行できるよう、手は抜いてくれているらしい。
事前の打ち合わせ通り、ケルティクが偽パワーに向かって突っ込んでいく。
俺はパワーに続いて、偽ケルティクに注意しながら、俺の偽物に向かって走る。
急に、偽ケルティクが方向を変えて俺の方に突っ込んでくる。
俺は、パワーを信じて自分の偽物に突っ込む。
俺の偽物は、爪の一撃を与えて走り去ろうとしてくる。
俺は自分の偽物に突っ込んで行って体当たりをする。
敵の攻撃をそのまま食らうが構わない。
牙で俺の偽物の体に食らいつく。
俺の偽物も逃げられないと知って俺に噛みついてくる。
よし、噛みつき合いになった。
後はパワー待ちだ。
その前に、偽ケルティクが俺の首に噛みついてくる。
2対1か。だが、パワーがいないお前達なら俺でもある程度の時間は度耐えられる。
俺は偽物の俺を離さないように噛みつきながらパワーを信じて待つ。
すぐにパワーが来て偽ケルティクの背中を巨大な爪でひっかこうとする。
が、偽ケルティクはパワーの攻撃をさっとかわす。
あとは、パワーが動けない俺の偽物を倒すのを待つだけだ。
俺の偽物に攻撃しようとするパワーに偽ケルティクが飛びかかる。
パワーは偽ケルティクの牙をかわさずに受け、俺の偽物を倒すのに集中した。
パワーの爪が2回3回と俺の偽物を腹を削ぐと俺の偽物は動かなくなった。
よし、ここまでは作戦通りだ。
俺とパワーは偽ケルティクと対峙して立つ。
偽ケルティクはまだ無傷だ。それに対して俺もパワーも浅くない傷を負っている。
だが、俺の偽物を倒した以上俺達は2対1で戦える。
あとは、偽ケルティクがパワーを攻撃する隙を付けばいい。
そう思っていると、偽ケルティクは偽パワーの方へ向かって走り出す。
想定外の動きで俺達の作戦を潰すつもりらしい。
偽パワーの一撃を食らうとケルティクでも危ない。
「ケルティク、お前の偽物が向かったぞ。」
俺は叫ぶ。
ケルティクはすぐに偽パワーから離れて距離を取る。
間に合った。
これで偽ケルティクと偽パワーを俺達3匹で囲む構図になった。
だが、偽パワーが、ケルティクに突っ込んでこない限り、俺達の当初の作戦は通用しない。
「ウル様の偽物は倒した。
俺様は、俺様の偽物と戦うぜ。
後は、ウル様に任せるぜ。」
パワーはそう言うと、自分の偽物に突っ込んでいく。
それを見て、ケルティクも自分の偽物に突っ込んでいく。
自分との戦いなら互角に戦えるとの判断だろう。
あとは、俺が数の差で勝負を決めなければならない。
「パワー、偽ケルティクを倒すまでは負けるなよ。」
俺はそう言うと、偽ケルティクに向かう。
ケルティクと偽ケルティクは、素早い動きで戦っている。
普通に割り込むのは難しい。
だが、俺は噛みつき合い以上に持ち込めれば勝利だ。
かわされても、ダメもとで強気で攻め続ける。
遅めの攻撃でも無駄ではないようで、ケルティクの攻撃が偽物に何度も命中する。
ケルティクも噛みつき合い覚悟の攻撃に切り替える。
いかに素早い偽ケルティクといえども、相打ち覚悟の2匹の攻撃を全部はかわせない。
すぐにケルティクに捕らえられる。
俺はその隙を見逃さず、ケルティクの首に噛みつく。
あとは、噛みつき合いだ。
俺は偽ケルティクを噛む牙にどんどん力を入れる。
そして、偽ケルティクの喉を噛み切ると、偽ケルティクは動かなくなった。
残るは偽パワーだけだ。
ここまで来ると一方的な戦いになり俺達は勝利することができた。




