36モンスター攫い
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★3シルバーウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)
ガルガン レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)
パワー ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)
俺達が、センターに依頼完了の報告に戻ると、センターが慌ただしい。
ご主人様が何かあったのか聞いてみると、先日の虎島大会で大会でベスト4に入った熟練モンスター使いのグレイファスさんがモンスター攫いに殺されたという。
グレイファスさんは馬島南町で仲間モンスターが攫われたモンスター使いの依頼を受けて一緒に救出に向かっていたところ、返り討ちにあったらしい。
グレイファスさんに捜索を依頼していたモンスター使いのサイアスさんが逃げ帰ってセンターに報告したことで事件の発生が発覚したとのこと。
センターは討伐隊の結成等で大わらわだ。
当然ご主人様も協力を要請される。
最近仲間モンスターがいなくなる事件多いなと思ったが、結構大きな問題になっていたんだな。
討伐隊には部隊長の指示に従う義務が発生する代わりに高額の報酬が支給される。センターはこういう時のためにかなりのお金を貯めこんでいるらしい。確かにセンターで何かしてもらうと高いからなあ。
また、治安維持費用を町の商工会などから徴収している。そのお金をこういう時に世の中の平和のために使うわけだ。
魔王でも復活しようものなら多数のモンスター使いに高額の報酬を払うことになるんだろうな。
とりあえず、俺達は討伐隊に参加するため、馬島南町を目指すことになった。
馬島南町は、五島諸島の南にある鳥島との連絡港として栄えている。
馬島は五島諸島の中央にあり、かつ、最も大きな島である。南町までは歩くと4日かかる。
とは言え、人間が1日歩く距離ごとに町が出来ており、街道沿いに進む限り野宿の心配はない。
今日はもうお昼だし、今から出発すると隣町まで着けないなあ。
この時間だと護衛の依頼もないし。
「今日はこの町に泊まって情報収集だけをして、明日から出発することにしましょう。
そうすれば、1回も野宿せずに南町まで着けるから。」
ご主人様が言う。
「そうですね。」
俺が答える。
「そうだな。」
パワーが答える。
「パワー、お前はそう言うことも考えるようになったんだ。」
「ブランカに言われたんだ。ウル様に頼りきりにならずに、自分でもどうするか考えろってな。早速実践しているんだぜ。」
なるほどな。
ブランカは何でも自分でも考えて決断するということを実践していた。だから、パワーにだってできるはずだと言いたかったのだろう。パワーはこれまでも自分の気付いたところをささえてくれてはいたけど、俺がご主人様と相談する判断には参加していなかった。そういう事も考える経験を積ませた方が絶対パワーのためにもいいはずだ。
ブランカは下心ありありだったけど、コーチとしてはしっかりしているんだなと俺は思った。
「それじゃあ、今度からはパワーにも相談するわね。
無理しなくても、最初は分かる範囲からすればいいからね。」
ご主人様もそれを聞いて、なるべくパワーに考える機会を増やしてくれるみたいだ。
「今日は、情報を集めるんだろ。俺様はブランカに今分かってる情報を聞いてくるぜ。」
パワーが自分で判断して動き出した。すごいな。
やはり、パワーも限界突破種で間違いなさそうだ。
「それじゃあ、ブランカの所に入っている情報の確認はパワーに頼んだぞ。
夕方にここで落ち合おう。」
「ああ、任せてくれ。」
パワーはブランカに会いに行った。
パワーなら仕事そっちのけと言うことはないだろう。
「ご主人様、俺達は依頼書にあるモンスターがいなくなった依頼人に会いに行きませんか?
依頼は受けられないでしょうけど、色々情報が聞けると思いますし。」
「なるほど。実際に襲われた人だと詳しい話が聞けるかもしれないわね。」
俺達は、依頼書の掲示板を見に行く。
昨日の2件のうちステッドさんのは依頼が終了したらしく見当たらない。
メディカル医院の方は受けている人がいるようだが、聞いても相手の情報は分からないだろうな。
残念ながら今日は、新規の捜索依頼がない。
しょっぱなからあてが外れた。
どうするか。
「それにしても、ステッドさんの依頼の達成が早いですね。
センターで解決の経緯とか聞けないですかね?」
「そうね。相手が分かれば情報になりそうね。」
俺達は、センターの依頼受付に向かった。
ご主人様が、ステッドさんの依頼の顛末について聞く。
すると、ステッドさんが依頼を取り下げたとの返事が返ってくる。
ステッドさんと依頼を受けたポップさんは、モンスターを攫ったのが南町で騒ぎになっているモンスター攫いの可能性が高いと判断して、今朝2人で南町に向かったそうだ。
そりゃあ南町の事件と繋がってる可能性は高いだろうな。
解決したわけじゃないんだ。
討伐隊に入って報酬を貰いつつ、自分のモンスターも探すつもりなんだろうな。
俺でもそうする。
ご主人様が、グレイファスさんを殺した相手について聞く。
逃げ帰ったサイアスさんの話では、モンスター使いの姿は見てないらしい。
敵の主力は★5キリンで、それ以外にも種族バラバラで★2とか★3があわせて10匹くらいいたそうだ。
ご主人様は担当者にお礼を言って、窓口から出る。
「★5が敵で出てくると言うだけでも厄介ね。しかも★2★3とは言え10匹のおまけつきだし。」
「以前倒したオニクビみたいにはいかないですかね?」
「あのオニクビは虫がついてたから技を使えなかったみたいだけど、今度の相手は普通に技を使ってくるわよ。もし、フェンリルがラグナロクを使ってきたら倒すのは無理でしょ。」
「それなら、キリンの好相性技を確認した方がいいですね。」
「そうね。訓練担当に聞きに行きましょ。」
俺達は、今度はセンターの訓練担当のところへ向かう。
そこで聞いた★5キリンの好相性技は以下の通り。
回復系…ヒーリング・リジェネレーション・クリアランス
攻撃系…ストーンエッジ・アースクエイク・フォッサマグナ・ディスペルマジック
防御系…フリーアクション・コンセントレイト・アースイミュニティー
強化系…アウェイキング・エクステンド・レンジワイド
探知系…●ディテクトエネミー
肉体技…後ろ蹴り・体当たり
「●はキリン専用技」
俺は、まだ知らない技の効果を確認していく。
フォッサマグナ…大地系最強技。自分中心の広範囲に大地系のダメージを与える。
アースイミュニティーもあるよな。
仲間だけは大地系無効にして、広範囲攻撃技がかけ放題か。ガルム・フェンリルの大地版だ。厄介だな。
フリーアクション…対象の動きを制限する技をすべて無効化する。仲間も可。
俺のホールドを目の敵にしたような技だな。
動きを封じて倒すという戦い方ができない分、俺は相性が悪そうだ。
アウェイキング…すぐには効果がなく、発動後、全ての能力が徐々に上昇する。準備時間が長い。自分のみ。
しかも、長期戦になると不利になるときた。厄介だな。
エクステンド…自分にかかっている技の効果時間を延ばす。自分のみ。
これとアウェイキングと組み合わせると凶悪じゃない?
何と言うか、厄介な技が詰まってるんですけど。
コンセントレイトもあるから、エクステンドしようとする隙にサンダーで集中を妨害することもできないし。
レンジワイド…次にかける技の効果範囲を広げる。仲間も可。
かなり遠くからフォッサマグナとか言われるんですね。凶悪な技しかない気がする。
ディテクトエネミー…視認した相手に敵対意思があるかどうかが分かる。自分のみ。キリンしか習得できない。
反応した奴は全部敵っていうわけね。騙して近づくことも不可能か。
何と言うか、敵にしたくない技がてんこ盛りなんですけど。
流石に★5だな。
これらの技を使いまくる相手に勝てる気がしない。
ただ、これは今のまま戦った場合の話だ。
俺は、キリンの技のラインナップを見て、1つ隙があると思った。
「ご主人様、急いでディスペルマジックを覚えることはできないですか?」
俺はご主人様に聞く。
「なるほど、厄介な技が揃っているけど、自分にかける防御・強化技が殆ど。
それなら、相手が自分にかけた技を消せれば、勝機が見えるというわけね。
ちょうど訓練担当のところにいるし、コーチの予定を聞いてみるからちょっと待ってて。」
ディスペルマジックは4レベル技。そして、俺がシリウスまで進化しても好相性技にはならない。
だけど俺は★2の時に3レベル技のホールドを習得したことがある。
★3の今、4レベル技であっても習得できるはずだ。
それに、ディスペルマジックは今回に限らず、今後技を主体で戦う相手に対してかなり役立つはず。
今から覚えておいて損はない。
「ウル、馬のコーチだけど今空いてるコーチがいるわよ。それでもいい?」
ご主人様が確認したところ、ディスペルマジックを教えてくれるコーチで空いているのは、馬で★4テンマのコーチだという。
センターで技を教えてもらうときは基本同族のコーチをあてる。
体の作りが同じであるが故に、コーチが具体的なアドバイスがしやすいからだ。
しかし、今回は急いでいることもあり、同族でなくてもいいので教えてもらうことにした。
俺としてはディスペルマジックを習得してからキリンを相手にしたい。
今回のコーチは馬で丁度★5キリンの1つ進化前の★4テンマ。向こうの立場で、戦闘の助言も聞いてみたい。
「こちらが、本日のコーチのテンマのグランです。」
俺は早速トレーニングルームに案内され、コーチが紹介される。
「ウルです。
どうしてもディスペルマジックを覚えたいのでよろしくお願いします。」
「グランです。
狼族でしかもまだ★3なのにディスペルマジックを習得しようとは熱心ですね。
私は狼族に教えるのは初めてですので至らぬところがあるかもしれませんが、精一杯指導させていただきます。
よろしく。」
今回のコーチは、礼儀正しい感じだ。
まずは、実際に技を消すところを見た方がいいということで、俺は自分にストレングスをかけたところに、コーチがディスペルマジックを使う。
俺は、コーチの技の動きをじっくりと見る。
コーチの精神集中が終わり、俺に向かって精神力のエネルギーが放たれる。
攻撃技に分類されるだけあって、エネルギーが相手に飛んでいくところが目に見える技なので、比較的覚えやすそうだ。俺はそのまま受ける。
コーチのディスペルマジックを受けて俺のストレングスの効果が弱まる。
1回見ると、大体の動きは分かった。あとは、効果を出すための動きの要点と言うかコツを聞ければ発動までは行けそうだ。
「では、もう一度かけてみますね。」
コーチが言う。確かに、何度か見てみた方がいいだろう。
2度目のディスペルマジックの効果で俺のストレングスの効果はほぼなくなり、僅かに残っている感じだ。
「ウルさん、あなたは限界突破種ですか?」
コーチが聞いてくる。何と言うか驚いている感じだ。
「どうも、そうみたいです。」
俺は答える。
「そうですか。
ディスペルマジックの技は相手の技の効果を弱める技ですが、その威力は使用者の知恵・精神力に依存します。
ですので、知恵や精神力の高い相手の使った技を完全に消すには何度もかける必要がありますし、
ウルさんのように知恵・精神力の高い方でしたら、当たれば大抵の相手の技は確実に消すことができるでしょう。
私が2回もディスペルマジックをかけて効果を完全に消せないので驚きました。
これは限界突破種どころか、人間の中でも高いレベルですよ。」
さすがコーチ。鋭いな。
はい、実は「元」人間です。言わないけど。
やはり限界突破種と人間では知恵・精神力に大きな差があるんだ。
それがパワーと俺のコストの差だろうか。
そして、俺もディスペルマジックの発動の練習をする。
コーチにコツを教えてもらったので、すぐに習得することができた。
非効率なところも矯正してもらい完璧だ。
俺は、次にコーチに戦い方について聞く。
「ご主人様の話では、俺は南町で募集している討伐隊に参加して★5キリンを相手に戦うみたいです。
コーチは★5キリンの進化前の★4テンマですよね。
ディスペルマジックを持っている相手に対してどう戦うか、相手の立場で思ったことを教えてください。」
「南町を騒がしているキリンですね。
確かに私テンマやキリンの技はディスペルマジックに弱いです。
敵の視点で対策として考えることは、
1つめとして、予めかけておく技の種類を増やすこと。
そうすれば、ディスペルマジックの効果がかかっている多くの技に分散されますので、一度に全部の技が消えることはなくなります。」
なるほど、消す対象の技の数が多ければどれかは残るということか。
これは十分あり得るな。ディスペルマジックを連発するか、他のモンスターと同調するか何か考えないといけないようだ。
「2つめとして、好相性技ではありませんので野生のキリンであれば考えなくて大丈夫ですが、5レベル技にディスペルガードと言う技があります。
この技をかけておけば、ディスペルマジックによる解除を完全に無効化することができます。
私は、★5に進化することができれば覚えたいと思っています。
それに対する対抗技でアンチディスペルガードという策もあるみたいですが私は詳しくありませんので、後ほどセンターの担当者に確認してください。」
「ありがとうございました。特に前者は十分あり得そうなので、仲間と同調して同時にディスペルマジックするとか工夫しようと思います。」
俺は、コーチにお礼を言って訓練が終わった。
訓練終了後、センターの訓練担当のところでアンチディスペルガードについて聞く。
5レベル技にはアンチディスペルガードという、対ディスペルガード専用の技があるという。
相手が技で防御をガチガチに固める+ディスペルガードということでもしない限り全く役に立たない技だという。
使う機会が限られる+技を覚える枠を5レベル分も取ることから、覚えるモンスターはほとんどいないらしい。
知られている限りで、使えるのは前回の虎島大会の優勝者シーザーの仲間モンスターの★5セイリュウだけらしい。
やっぱ、優勝者ともなるとあらゆる場合を想定してそう言う技も習得させているんだな。
確かに使う状況は限られるけど、その状況になった時に持っていなかったら詰むわけだから、保険の意味でも有用な技だと思う。
「ご主人様、もしキリンにディスペルガードを使われたら、撤退してその優勝者を呼んだ方がいいですよね。」
「そうね。
野生のキリンだったらその心配は無用だけど。モンスター使いも見かけなかったみたいだし。
たしかシーザーさんは竜島出身だったから、今は竜島に戻ってるでしょうね。
呼びに行くとなると、日数がかかりそうね。」
「ご主人様、俺もいつかこの技を覚えたいです。
覚えているモンスターが少ないなら尚更貴重だと思います。」
「ウルはこういうことろ所に拘るのね。シーザーさんに会うことがあったら頼んでみるわ。
今、5レベル技まで覚えられるかと言うのはあるけど。」
「★4テンロウになったら大丈夫でしょ。今までの実績から言って。」
「そうね。それじゃあ、ウルが今度進化したら考えましょうね。」
俺はご主人様に希望だけは言っておいた。
そろそろ夕方だ。
パワーと合流して情報交換をした方がいいな。
俺達は、パワーとの待ち合わせ場所へ行った。
すると、既にパワーが待っていた。
「パワー、待たせたな。部屋に行って情報交換をしよう。」
ご主人様は、明日移動にあわせて護衛依頼を受けることを想定してセンターに宿を取っていた。
パワーと合流し、センターの部屋に入って情報交換をする。
「それじゃあ、俺様の方から聞いた話するぜ。
出会った敵はほぼキリンという奴だけっぽいな。
10匹くらいいた取り巻きの連中のほとんどは攫われたモンスターみたいだ。」
「なんだって?」
俺はいきなり核心にせまる話が出てきて驚く。
確かに攫われたのは★2とか★3のモンスターばかりだったな。
「キリンを見て逃げ帰った奴に色々聞いた話が、この町のセンターにも知らされたんだけどよ、俺はブランカと一緒にその情報を教えてもらいに行ってきたんだ。」
と言うことは、南町のセンターがサイアスさんに事情を聞いて、その情報を各地のセンターが共有したんだな。
攫われたモンスターの種族とサイアスさんが見た★2★3の種族が一致したという事か。
サイアスさんにしてみれば、自分の攫われたモンスターも混じっていたのだろうし、見間違えるはずもないか。
「と言うことは、犯人は★5キリンで間違いなさそうだな。
問題は、野生なのかどこかにマスターがいるかだな。」
「あと、少なくともキリン以外にも誰かがいるらしい。
南町と西町で同時に事件が起こっていた。
キリン1匹だけじゃ両方はできないぜ。」
ブランカと一緒だったとはいえ、すごい情報と判断だ。
「と言うことは、西町の方は★5キリンのマスターがやったのかしら。」
「そうかもしれませんね。
今日西町で何も起こらなかったのは、★5キリンと合流しに南町に向かったからと考えれば辻褄はあいますし。」
「まだあるぜ。
攫われたモンスターは操られていたみたいで、攻撃してきたみたいだ。」
「なんだって!」
パワーの話は重要な内容が多いな。
ブランカと一緒にセンターに集まってきた情報を聞いてきたにしても、しっかりと内容を理解できているところはすごい。
パワーは頑張っているな。
「マスターがいないとそんなことはできないわね。
これで、ほぼ野生じゃないのは確定みたいね。」
「と言うことは、ディスペルガードの可能性も想定しないとだめみたいですね。」
「なんだそれ?
技の名前か?」
パワーが聞いてくる。
「俺達は、キリンの使う技を調べてきた。
そうしたら、厄介な強化・防御技がたくさんあることが分かったから、対策として相手の技を消すディスペルマジックの技を覚えてきたんだ。
だけど、それにはディスペルガードという天敵の技があって、野生のキリンは使わないけど、マスターがいるなら使ってくるかもしれない。」
俺は、なるべく分かりやすくパワーに説明してみる。
「その天敵の技がなければ勝てそうだけど、敵が持ってたら困るってことか?」
パワーは要点を理解するのが上手いな。
「その通りだ。パワー、理解するが早いな。
しかも、その天敵技に対抗出来る人が知っている範囲だと竜島にしかいない。」
「なら、状況をセンターに言っておいた方がいいんじゃねえのか。
場合によっては、竜島まで呼びに行かなきゃいけねえんだろ?」
「そうね。念のため、センターに説明してくるわ。」
ご主人様はそう言うと、部屋から出ていった。
その間に、俺とパワーはキリンと戦闘する時のことについて相談する。
「で、パワー。キリンが使うかもしれない技は覚えておいたほうがいい。」
俺は、キリンの技についてパワーに説明する。
「俺様思ったんだけどよ、技を使う暇がないくらいに、みんなで攻撃しまくっちゃダメなのか。
討伐隊ってことはたくさんのモンスター使いが協力するんだろ?」
俺の話を聞いて、パワーが言う。
なるほど、確かにその通りだ。
討伐隊なんだから、数で囲んで近接攻撃しまくるところまでこれば、勝ったも同然だよな。
俺はパワーが急に頼もしく見えてきた。
「確かにそうだな。問題は、どうやって近づくかだよな。
距離があるうちに最強技のフォッサマグナを使われると、弱い奴は一撃で倒されかねないからな。
そうだ。スピードだ。
ガルガンに教えてもらおう。キリンに出会ったら、素早く近づいて近接できれば勝ちが見えてくるからな。」
「ウル、難しいことわかんないけど、スピードを使うところを見せればいいの?」
ガルガンが聞いてくる。
パワーはがんばって着いてきているが、限界突破種ではないガルガンが理解するには流石に厳しい話だ。
「ガルガン、よく分かったな。今度の戦いで勝つにはスピードで速く動ける人数がものをいいそうだからな。
スピードを使って見せてくれないか。」
俺が頼むと、ガルガンはスピードを使って見せてくれる。
同じ強化技のストレングスと共通するところがあるな。
俺は何度か見せてもらって、技の動きを確認するとガルガンにお礼を言って、自分の練習に入る。
「ウル様は、教えてもらわなくても見ただけで覚えられてすごいぜ。」
パワーが言ってくる。また、コンプレックスモードに逆戻りしないよう注意しよう。
「俺がスピード覚えれば自分以外にもかけられるようになるから、覚えるのは俺だけでもいいな。
俺は近接戦闘が苦手だから、パワーにスピードかけて走ってもらうことになるから頼むぞ。」
「分かったぜ。俺様に任せろ。」
よしよし、とりあえず収まったかな。
そんなことをしている間にご主人様が戻ってくる。
「アンチディスペルガードについて話してきたわ。
シーザーさんに呼ぶ可能性もあることを伝えることになったわ。」
「それはよかったです。最悪を想定して打てる手は打っておきたいですからね。
パワーにもキリンと戦う話を相談したら、技を使う暇ないくらいみんなで押しまくればいいのではないかと。
俺も思ったのですけど、最初はこれが一番いいのではないかと。」
「討伐隊も基本はパワーが言ったような方法で行くみたいよ。
ディスペルガード対策は、守りを固められて押しきれなかったときに考えるみたいね。」
討伐隊の方針もだいたい決まっているんだ。
俺達は4日かけて南町に向かうしかないか。
何とかそれまでにスピードを自分のものにしよう。
明日に向けて、俺は、センターの部屋の絨毯でゆっくりと休んだ。




