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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
モンスター使い
34/122

34コーチブランカ(2)

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★3シルバーウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)

ガルガン   レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)

パワー    ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)


 俺達は、アムルさんの依頼の件でセンターに被害届を出しに来た。

 そこへブランカコーチと出くわして、ブランカはパワーについて突っ込んでくる。

 俺は、別の場所で探し物中と最低限の答えをしたつもりだったが、ブランカは海中で指輪を探していると図星の予想をしてきた。


「何で知ってるの?」

 しまった。口が滑った。


「パワーだけが探している時点で、海中での探し物だというのは普通の推理でしょ。

 私は毎日港の海を泳いでいるんだけど、昨日、大きな岩の間に挟まった指輪を見つけたのよね。

 ひょっとして、その指輪を探しているのかな?って思っただけよ。」

 この推理力と鋭さ。ブランカは限界突破種の可能性は極めて高い。

 あまりに鋭いので俺は最初ブランカが黒幕と言う可能性が頭をよぎってしまった。

 しかし、俺達がアムルさんの依頼を受けたのが偶然だと考えると、さすがにそれはないと言う結論になった。


「場所はどの辺?」


「船着場から数十メートルくらい沖に行った辺りねえ。」

 間違いない。ブランカを連れていけば、すぐに見つかりそう。

 だけど、ブランカには貸しを作られたくない。パワーを連れていかれそう。


 そんな話をしている間にアムルさんが呼ばれていたようだ。


「証明できないと、センターは動いてはくれないのですか?」

 ご主人様の声が聞こえる。


「相手側にも主張はあるでしょうし、当事者間で話し合ってもらってそれでも埒が明かない時にもう一度来てください。」

 担当者の事務的な声が聞こえてきた。


「何か難しいみたいね。

 私でよければ相談に乗るわよ。

 私のマスターはこの町の治安維持責任者だから力になれると思うわ。」

 ブランカが相談に乗ってくれると言っているけど、下心が見え見えだ。

 と言うか、センターのコーチが自分の都合で町の治安責任者を動かすのって、明らかに権力の私物化だよ。


「何を企んでるんだ?」

 俺は、ブランカに聞く。


「パワーを1日貸して欲しいなと思っただけ。」

 正直に答えるんだ。


「パワーはものじゃないぞ。それにパワーをどうするつもりだ?」


「パワーに遺伝子をちょっと分けてもらうだけよ。」

 答えが直球すぎる。ある意味清々しいほど正直とも言えるが。


「パワーが嫌がることをさせるわけにはいかない。」


「パワーも忙しくなければ乗り気だったわよ。」

 厄介なことになってきた。この町は早い段階で離れておくべきだったと後悔した。


「いずれにしても、パワーに確認を取ってからでないとだめだ。」


「そこまで警戒しなくてもいいじゃない。

 分かったわ。パワーの答えが聞けたら教えてね。」

 ようやく俺はブランカから解放された。


 とりあえず、このままでは埒が明かないので、一旦外に出ることになった。


「ウル、ブランカコーチに絡まれてたけど、何かあったの?」

 センターを出てからご主人様が事情を聴いてきた。


「あのコーチ、この町の治安責任者がマスターだから、便宜を計ってもいいと。」


「代わりに、パワーを求められたのね。」


「その通りです。仲間モンスターが他人の仲間モンスターを妊娠させたりするとまずいですよね?」


「合意ができてないと問題になるわよ。こちらもマーチャ並みに厄介そうね。」


「パワーに確認取ってから、その治安責任者に抗議に行けないですか?」


「アムルさん、ごめんなさい。私たちの方まで問題が起こったみたいで回り道になりますけど、ちゃんと解決しますから。

 一応この町の治安責任者に会いに行きますから着いてきていただけますか。」

 アムルさんも自分の依頼で俺達を厄介事に巻き込んで申し訳ないと言って着いてきてくれることになった。


 俺達は、まずはパワーを迎えに行く。

 パワーはまだ海の中を探しているみたいなので、俺がちょっと泳いでパワーを探す。

 すると、すぐにパワーの方から俺を見つけてくれた。


「パワー、見つかったか?」

 俺はパワーに聞く。


「まだだぜ。」


「そう言えば、ブランカコーチが大きな岩の間で見たようなことを言っていたな。」


「大きな岩の間?あそこか。ちょっと待ってくれ。見てくるぜ。」

 パワーはまた、海中に戻っていってしまった。

 まあ1か所見るだけならすぐ戻ってくるだろ。

 俺はしばらく待つことにした。


 しばらくして、パワーが戻ってくる。


「見つけたぞ。これだろ?」

 パワーが見つけた指輪を見せる。


「はい、これです。ありがとうございます。」

 アムルさんが喜んでいる。

 まずい、ブランカのお陰で見つかったぞ。これは、ますます厄介なことになった。

 とりあえずブランカには、黙っておこう。


「パワー、岩と岩の間って言っていたけど、よく取れたな。」


「ウル様に、教えてもらったホールドが役に立ったぜ。」

 なるほど、指輪にホールドをかけて持ち上げたんだ。

 そうでなきゃ、ブランカが拾っているよな。


「パワー、ホールドをマスターしたんだ。凄いぞ。」


「まだゆっくりとしか動かせないけどな。」

 実際に役立てるところまで使えるようになったのは偉いと思う。


「そうそう、ブランカがパワーと交尾したいと言っていたけど断った方がいいよな?」

 まずは、パワーの意向を聞いておこう。パワーが嫌がっているなら断固として断れる。


「俺様別にいいけどな。雌に求められるのは雄としては名誉だぞ。」

 うわっ、パワーもその気があったんだ。

 まあ、これが生物の本能と言えばその通りなのかもしれない。


「ご主人様どうしましょう?パワーもその気みたいですけど。」


「仕方ないわね。

 それじゃあ、ブランカさんのマスターに話に行きましょう。

 色々はっきりさせないといけないし。」


 俺達は再びセンターを訪ねる。今日は、往復ばかりしている。

 センターに入ると、ブランカが待ってましたとばかりに正面にいる。


「マスターと話がしたいのだが。」


「都合を聞いてくるから待ってて。」

 ブランカは、パワーにウィンクすると、自分のマスターを呼びに行った。

 これだけ自分だけで色々判断できることから、ブランカはほぼ間違いなく限界突破種。

 パワーもかなりの確率で限界突破種と思われる。

 これはある意味、帝国の宰相がやろうとしていた限界突破種同士の繁殖と言える。

 生まれた子供はどうするんだろ。そのあたりもはっきりさせておかないと。


 そんなことを考えているとブランカが戻ってくる。

「こちらへどうぞ。」

 ブランカは俺達を会議室に案内する。

 中には1人の人間の女性が待っていた。


「私がブランカのマスターのルイですわ。

 うちのブランカが選んだ相手がいると聞いたのですが。」

 おい、そんな伝え方をしてるのか。


「その話もあるのですが、私たちの要件を先に話させてもらっていいですか。

 ここにいるアムルさんが、襲われて婚約指輪を奪われたのに、被害を届けても取り合ってもらえないのです。」


「その件については、まずは、当事者同士で話し合ったうえで折り合いが付かない場合に調停するとお答えしたはずですが。」


「で、条件次第で今すぐ調停してもいいよって話よ。」

 ブランカが同調してくる。


「折り合いが付かないのに、どうやって調停するの?」


「センターの調停結果には強制力がありますから。」


「はっきり言って、婚約指輪を奪われて海の中に捨てられて、そんな相手にお咎めなしと言うのは納得できませんよ。」


「なので、条件次第っと言っているのですが。」

 ルイさん、賄賂次第でいくらでも強権発動するって堂々と言ってるよ。悪党じゃん。

 俺は、モンスターセンターってもっと人々のために頑張っている組織だと思ってた。

 だけど、今回ここまで欲望剥き出しの対応されると正直かなり引いた。


「センターというのは腐ってるな。潰してしまえよ。」

 急に俺の頭の中に囁く声が聞こえてくる。

 周りを見るが、誰もいない。俺以外誰も聞こえていないみたいだ。

 気のせいだろうか。

 それよりも、この場での結論を出さないと。


「とりあえず確認させてもらいます。

 ルイさんとブランカさんは、パワーとの交尾について了承しているということでしょうか?」

 1人と1匹から同意の旨が返ってくる。


「パワーはどうなんだ?本当にいいんだな?」


「ああ、いいぜ。」

 反対しているのは俺とご主人様だけか。

 俺も、こんなバーター取引じゃなけりゃパワーも乗り気だったしいいかと思っていた。


「子どもが生まれたらどう育てるんだ。

 俺達は旅を続けているから、パワーは関われないぞ。」

 まあ、元居た世界のポールベアは雌だけで子育てしているが。


「子供については、私達が責任を持つから心配しなくていいわ。」

 この人、俺の反対する理由を1つずつ着実に潰しに来ている。

 俺が気に食わないのは、こいつらの権力の私物化なんだよな。

 それよりも、俺もそれに加担してしまうという事実が気に食わないのかもしれない。

 俺はそれを直接言えないから、理由を付けてゴネているだけなのかもしれない。


「だから、センターが気に入らないなら潰してしまえばそんな悩みもなくなるぞ。」

 また、俺の頭に声が聞こえてきた。

 誰なんだ?

 俺はそんな極端な結論は出さないぞ。


 俺は、世の中全てがきれい事だけで済むと思うほど子供じゃないつもりだ。

 元の世界でも、ブラック企業などの不条理を嫌と言うほど思い知らされてきたから、それは分かっている。

 ハクエンさんの誘拐事件のセンターの対応を見ていると、この世界は元居た世界よりもいい世の中だなと思ったりしてた。

 だけど、どの世界でも多かれ少なかれ政治の闇の部分はあるのだろう。

 俺は、今の世界に元の世界にない理想を求めすぎてしまっているのだろうか?


 確かに、今回彼らと手を握ったところで誰も不幸にはならない。

 強いて言えばマーチャ一家だが、あれは自業自得だ。

 世の中はきれい事だけでは生きていけない。

 そう割り切っていいのか?

 ここで了承することで全てが丸く収まると頭では分かっている。

 だけど、どうしても俺の中で釈然としないものを感じる。


「ご主人様は、反対しない?」

 卑怯であると知りつつ、俺は、ご主人様が反対してくれるのを密かに期待して聞いてみる。


「パワーも乗り気みたいだから、アムルさんの件をしっかりやってもらえるならいいかなと思ったわ。」

 これで、俺の中の堀は全て埋められた。


「後から強姦されたと言われないよう、同意した旨を書面の証拠をください。

 それが俺が認める条件です。」

 俺は、同意すると決めた以上、将来的に何が起こってもいいよう対策をうつことにした。

 こいつらが後から前言を撤回しないという保障はない。確実な証拠を残しておくのだ。


「疑い深いわね。いいわ。前言撤回するつもりなんてないから、印をつけた文書を作りましょう。」

 ルイさんは、そう言って一旦部屋を出るが、しばらくして書面をもって戻ってきた。


「この印はこの町の治安責任者であることを示すもの。そして、私が自筆で書いたわ。これでいいかしら。」

 俺は、文面を確認する。

 パワーとブランカの交尾を認めたこと。子供については責任を持つ旨が書かれている。


「ご主人様、この印って証拠になるのですか?」


「今この印を使えるのはルイさんだけだし、後から書き換えられないよう日付も書いてあるし、証拠になるわね。」


「分かりました。俺もこれで認めます。ご主人様、なくさないように保管をお願いします。」

 俺は、今回の件で、自分が一線を越えてしまったことを認識していた。

 俺はそのことで頭がいっぱいになり、他のことが頭に入らない。

 この後、ご主人様がマーチャ商会側への対応について確認をしていたが、俺はあまり覚えていない。


 方針が決まると対応は早かった。

 パワーはブランカと2匹でブランカの自室に行った。明日迎えに行くまでブランカと一緒だ。

 アムルさんの家に戻って報酬を貰っていると、マーチャ商会から謝罪と賠償がアルムさんにあった。


 とりあえず、全てが丸く収まったんだからこれでいいよな。

 俺は、そう割り切って自分を納得させることにした。

 明日以降も、引っ張るわけにはいかないからな。

 今日はゆっくり休もう。

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