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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
はじめての冒険
3/122

3初めての戦闘

ウル     主人公 狼に転生し、レンディールの僕となる。

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    イーグル。モンスター仲間。

ガルガン   ヤングタイガー。モンスター仲間。

 夕食の後片付けも終わり、夜がふけて、俺達は寝ることになった。

 ご主人様は荷物の中から寝袋を出している。


 俺達は地面にそのまま丸まって寝るんだよね。当然。

 前世では暖かい布団で寝ていたから、地面の上に直接寝るのは初めてである。

 リーザは近くの木にとまって、ガルガンは俺と同じで地面に丸まって寝るようだ。


 俺は今は狼なんだから、狼らしく地面で寝ることに慣れないといけないよな。

 自分でそう納得して、ガルガンと同じように地面の上で丸くなった。

 狼の体には毛皮があるから、冷たくはない。毛皮がちょっとした毛布代わりになっている。これなら何とか寝れそうだ。


 とは言え、気になることがある。

 実は、俺は前世でゲームの中で冒険をしたことがある。

 こういう時は、寝ている間に盗賊や野生動物が襲ってきたりするから、交代で起きて見張り番をするのだ。この世界ではどうなのだろう?

 ご主人様に聞いてみよう。


(ねえ、ご主人様。寝ている間に何かに襲われたりしないの?)

「そんなこと滅多にないわよ。何かあってもガルガンが吠えて起こしてくれるから。」

 前世で野生動物はいつ襲われるか分からないから寝ていても音には敏感だと聞いたことがある。俺にもできるのだろうか?


 そして、滅多にないということは全く襲われないわけではないということだ。

 それでもモンスター使い同士で集まらず、1人で旅をしているということは、この世界は前世のゲーム内で冒険した世界よりは安全なのだろうか。

 いずれにしても、ご主人様はこのやり方で今まで旅を続けているわけだから、俺が今ここで口を出すのも変だよなあ。


(それじゃあ、俺も寝ます。おやすみなさい。)

 そう言って、俺も寝ることにした。


 しかし、中々寝付けない。前世のゲームでの冒険のことが気になっているのかなあ。

 とりあえず、体だけでも休めよう。そのうち気づいたら寝てしまうかもしれないし。


 その後1時間くらいしたが、まだ眠れそうもない。

 そうしているうちに、遠くで何かの足音が聞こえてきた。耳を澄ましてみる。

 結構大きな動物っぽい足音。こっちに近づいてくる。


 まだガルガンは寝ているのか気づいていない。ここは俺が起こさないと。

 俺は、ガルガンの体をゆすって起こした。

 ガルガンはさっと起きる。ガルガンも近づいてくる足音に気が付いたみたいだ。


(ご主人様、何か近づいてくるよ。)

 ガルガンが慌ててご主人様を起こしに行った。


 俺は、近づいてくる足音の方に向かって警戒を続ける。

 しばらくして、1匹の虎がやってきた。ガルガンと違って大人の虎だ。でかい。


(ニク、ニク)

 虎は俺達を見て唸った。


 腹が減ったから襲いに来たのか。勝てないと分かれば逃げ出すだろう。

 俺はそう思ったものの、何か策があるわけでもない。


「ガルガン、ファイアー。リーザ、岩石落とし。ウルは私を守って。」

 起きたご主人様が、素早く俺達に指示を出す。


(あっちいけ。)

 俺は、さっとご主人様の前に立つと、虎に向かって唸り声をあげる。


 しかし、虎は余程腹が減っているのか、逃げていく気配はない。

 ガルガンのファイアーが虎に命中するが、効いているようには見えない。


 ここは仲間の中で図体が一番でかい俺が虎と噛みつき合うしかないよな。痛そう。


 虎が飛びかかってきた。


(ご主人様に手を出すんじゃない。)

 俺はそう唸りながら、俺も虎に飛びかかった。


 俺は虎の腕に噛みついたものの、虎も俺の肩に噛みついてきた。

 さらに、飛びかかってきたときの勢いで、俺を後ろに押し倒す。

 俺は虎に嚙みついたままではあるものの仰向けになり、さらに虎に上から乗っかってきた。


 痛いとか言っている暇はない。

 とにかく、攻撃しないと。


 ガルガンも横から虎に噛みついているみたいたが、虎は意に介さない。

 俺から先に仕留めるつもりらしい。


 俺も虎の肩に噛みつく。

 虎は今度は俺の首に噛みついてくる。

 負けないぞ。

 俺も噛みつく歯に力を入れる。


 その時、急に虎の口が俺から離れた。しかも虎の動きが止まった。


 リーザが虎の頭の上に石を落としてくれたらしい。

 俺はその隙を逃さず、虎の体を押し倒して虎の下から脱出する。

 しばらくして、虎も我に返ってよろよろと身を起こす。

 が、リーザの岩石落としが結構効いていたらしい。

 さらにご主人様が虎に向かって弓を構えている。


(お前に勝ち目はない。あっち行け。)

 俺は、再度虎に向かって唸る。

 虎は俺が無事なのを確認すると、獲物にはできないと悟ったのか、さっと逃げていった。


 ふう、助かった。

 それと同時に俺は、虎に咬まれた痛みを急に感じ始めた。


「リーザ、ウルにヒーリング。」

 ご主人様は虎が逃げたのを確認するとリーザに指示を出す。リーザって回復技も使えるんだ。


「リジェネレーション。」

 ご主人様も俺に技をかける。魔法かもしれないけど。

 でも、どちらも回復技に見えるんだけど、重ねかけにどういう意味があるんだろ?


「ウル、大丈夫?

 また痛む?。」

 ご主人様が俺のことを心配して聞いてきた。

(もう大丈夫です。)

 治療技で痛みがほとんど消えている。まだ多少痛むが、これくらいなんてことはない。

「無事でよかった。ウル、守ってくれてありがとう。」

 ご主人様はそう言って、俺の頭を撫ででくれた。


(ご主人様を守るのは当然のことです。)

 俺はそう答える。


「リーザ、虎を追い払えたのは、岩石落としのおかげですよ。ありがとう。」

「ガルガン、起こしてくれてありがとう。そして、ウルを守って虎の気を引いてくれてありがとう。」

 ご主人様はこうやって俺達みんなのことを見ていて、何か終わる度にちゃんと褒めてくれる。

 俺はその度に、今度はもっとご主人様の役に立つぞと強く思った。


 では、寝ようかとも思ったが、俺は気になったことをご主人様に聞いてみた。

(ご主人様のリジェネレーションというのは、俺達が使うのと同じ技なの?)

「そうね。原理は同じものよ。モンスターが精神力を使って技を出すのとは違って、人間は魔力を使うんだけどね。」

 魔力という言葉が出てきた。そう言えば、最初俺を助けてくれた時も魔法と言っていたはずだ。

 技と魔法はどう違うのだろう?

 俺は気になったことを、ご主人様に質問にしてぶつけていく。


(人間はどうして精神力ではなくて魔力を使うの?)

「魔力はね、使いこなすのに高い知識が必要だから、人間にしかできないの。そして、魔力は予め準備しておくことができるの。だから、強力な技でも準備しておけば、すぐに放てるわ。それが便利だから人間は精神力を使う技ではなくて、魔力を使う魔法を使うの。」

 高い知識か。人間の記憶を持っている俺はいつか魔法も使うことができるのだろうか。

 だけど、差し当たって普通に技を覚えないことには話が始まらない。これはいつかの課題に残しておこう。


(あと、ヒーリングとリジェネレーションって違う技なの?)

「ヒーリングはね、出血を止める技なの。傷を塞いでこれ以上悪くならないようにするの。

 それに対して、リジェネレーションは出血で失った生命力を回復させる技なの。

 出血でなくなった分の血を作ると言えば分かりやすいかな。

 と言っても、一瞬で回復するわけじゃなくて、生物が自然に回復する速度を上げる技なのだけど。

 だから、大きな怪我をした時には両方をかけるの。」


 ご主人様は、俺がどんなにしつこく質問してもいつもこうやって、優しく教えてくれる。

 おかげで、俺は少しずつこの世界のことが分かってきた。

 俺はもっとこの世界のことについて知りたい。

 そして、ご主人様と一緒に冒険したい。そう思った。

 俺は、ご主人様におやすみを言うと、そんなことを考えながら眠りについた。


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