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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
モンスター使い
20/122

20特訓の成果

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)

ガルガン   レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)

パワー    ウルの仲間モンスター。(★2ブラックベア)

 次の日の朝、俺達はマイケルさんの案内に従い斜面を登っていく。

 山と言っても勾配もゆるく森と言うほど木が生い茂っているわけではないので、見晴らしもそこそこよく、歩きにくくもない。

 ただ、もう近くには町や村はなく、何が出てきてもおかしくない場所に入ったことは確かだ。


 途中★2サーベルタイガーやその進化先の★3ライガーなどに何度か遭遇したが、向こうも襲うつもりはないようで、特に戦闘になることもなく進むことができた。

 日暮れまで戦闘することなく進むことができ、今日はこの辺りで野営することになった。

 そこまで木が多くないので、フルゴ村の時の依頼に比べればずいぶんと警戒しやすい。

 ただ、逆に言えば、相手からも俺達が見つけやすいという事でもある。


 俺達は、保存食を食べて、昨日のように順番で番をしようかと思っていたところで、狼の遠吠えが聞こえてきた。

 俺と同じ狼か。仲間を集めているみたいだ。警戒した方が良さそうだな。

 声が聞こえるのは風下の方。俺達の匂いに気が付いて獲物と判断したか。

 さらに、いくつもの足音が近づいてくる。結構数が多い。これは厄介かも。


(ご主人様、狼が近づいてきます。俺達の匂いに気づいたみたいです。)


「狼の群れなら逃げるのは難しいわね。追い払わないと。マイケルさんは後ろに下がっててもらえますか。」

 ご主人様は言うが、


(数が多いので、後ろに下がっても危ないです。マイケルさんには近くの木の上に登ってもらってください。

 ご主人様も、木の上に登って遠距離攻撃に注意しながら援護をお願いします。)

 後ろに下がってもらったとしても地上では守り切れないので、俺はご主人様にも木の上に登ってもらうことにした。


「私は、木に登るなんてできないですよ。」

 マイケルさんが言ってくる。そんなこと言っても、敵の数が多いから地上じゃ守り切れないぞ。


(ウル様、俺様が木の上まで上げてやるぜ。)

 パワーはストレングスを使った。パワーの体が2回り大きくなる。

 もともと2メートル以上あった体長が3メートルを軽く超えてきた。

 パワーは、マイケルさんを抱えると、近くの木の大きな枝の上に乗せた。

 そして、ご主人様を別の木の上に乗せる。


(パワー、偉いぞ。良く気づいたな。)

 一応気づかなかったら具体的に指示するつもりだったが、パワーは何も言わなくても察してくれたようだ。


(俺様だって、色々考えてるんだぜ。)

 技の使い方だけでなく、戦術的な考えも分かってくれたのは嬉しい。

 ちょっと俺のことを意識しすぎの気もするが。

 これで、守る必要のあるマイケルさんとご主人様を木の上に退避させたので、俺達は後ろを気にせず戦える。


「リーザ、近くの木からウィンドショット連発してね。」

 ご主人様がリーザに指示を出す。

 パワーは巨大化しているし、ガルガンも普通の狼より2回りは大きいから数が多くても簡単には負けないはずだ。

 寧ろ図体が相手と同じ大きさの俺が一番危なく見えるかも。


 足音を聞いていると、狼は俺達を完全に取り囲んだようだ。

 やはり、2人を木の上に避難させておいて良かった。

 狼が囲いを狭めながら近づいてくる。


 先頭にいるボスっぽい狼がでかい。ガルガンよりも一回り大きい。

 残りは普通の★2ウルフみたいだが、前だけでも10匹近くいる。


「★3ダイアウルフよ。群れ全体を強化する技を得意とするわ。注意して。」

 ご主人様がボスの知識を教えてくれた。


 パワーがストレングスで大きくなった図体のでかさでボスのダイアウルフを威嚇するが、敵は数で勝っているためか怯む様子はない。


 ダイアウルフが精神集中を始める。何か技を仕掛けるつもりだ。

 俺はホールドの精神集中が終わっている。どこで仕掛けるか。


「スリープ」

 ご主人様が最初に動いた。

 ダイアウルフは眠りこそしなかったが、精神集中が途切れてしまったようだ。

 精神技は途中で精神集中が途切れると失敗して、最初からやり直しになってしまう。

 だから、準備に時間のかかる大技を使おうとしている相手には、途中で精神集中を乱すのが効果的である。

 技を妨害されたダイアウルフがギラリと木の上のご主人様を睨む。


 これは、敵が強化技を使う前に仕掛けるしかないな。


(いくぜ。)


 俺はホールドを放つ。が、普通のホールドではない。

 再び精神集中をはじめたダイアウルフに石を飛ばしてぶつける。

 再度ダイアウルフの精神集中が途切れる。

 数で圧倒的に負けてるのに、仲間全体の強化技なんて使わせるかよ。予め使っておかなかったのは失敗だったな。


 そして、ダイアウルフに当たった石を、次は横に飛ばす。

 石は隣のウルフに命中する。

 さらに、俺は石をコントロールして次々と別のウルフに石を当てていく。


 昨日色々試した結果、俺がコントロールしている物体を視認し続けて精神集中を継続しており、かつ、俺から大体10メートル以内に物体がとどまり続けている限り、技が終了せずコントロールし続けることができることが分かった。

 そして、ロープをコントロールして目標を追いかけた要領で、コントロールする物体に力を加えると、物体の向きを変えられるのだ。

 特に、敵に当てた直後の石のスピードがほぼなくなったタイミングだと、ほぼ狙った方向へ飛ばしなおすことができる。

 俺はそれを利用して、10メートル以内にいる敵ウルフに次々と石を当てていく。


 石のスピードが速いので、1回でも外すと10メートル圏から出てしまうが、外さすに、コントロールしている石が10メートル以内にとどまっている限り、石を飛ばす方向をその都度変えるだけで、連続攻撃が可能になるのだ。

 攻撃技だと1発撃ったら終わりだが、ホールドは外さない限り連続攻撃ができるから敵の多い場合は効果的だな。

 ドスドスドスと沢山のウルフの体を跳ね返りながら次々と攻撃していくのは気持ちがいい。


 ダイアウルフが俺のことを厄介だと判断して仲間の強化を諦めて俺に飛びかかってきたが、ガルガンがダイアウルフに飛びかかって防いでくれた。

 ガルガン、助かったぜ。その間に、俺は敵の数を少しでも減らすぞ。


 前にいた敵ウルフ達が俺に向かってサンダーを放ってくる。ホールドの石をコントロールするために、精神集中しているのでかわせない。喰らえば俺の精神集中が途切れてホールドの技は終了する。初めての使い方だし、これだけの戦果でも上出来か。食らうまでにあと1回当ててやろう。

 と思っていたのだが、


「エレメンタルガード(サンダー)」

 ご主人様が、俺に魔法をかける。

 すると、俺の体が魔力で光り出す。そこに敵ウルフのサンダーを食らうが全然痛くない。

 電撃の防御魔法らしい。これなら、近接されない限り、ホールドによる攻撃が続けられそうだ。


 俺は、そのままホールドでの石を飛ばす攻撃を続ける。

 1回くらいならともかく、2回・3回と連続で石をぶつけられた敵ウルフは耐えられなくなって逃げていく。

 敵の数が減ると連続攻撃ができなくなったので、一旦石を地面に落とした。

 そして、技が途切れないよう、コントロールしている石から視線を逸らさないようにしながら次の目標を探す。

 とりあえず、視線を石に集中しながら石の向こう側に回り込んで後ろを見る。


 後ろでは、ストレングスで巨大化しているパワーが敵ウルフたちを蹴散らしまくっていた。

 対格差が違いすぎるからな。

 パワーが腕を振り回すだけで、敵ウルフは次々と吹っ飛んでいた。


 パワーが捌ききれなかった敵ウルフをリーザがウィンドショットの連発で追い払ってくれていたみたいだ。

 そうでなきゃ、後ろからウルフに噛みつかれて俺のホールドが終わっていただろうからな。


 俺の新しいホールドの使い方は、敵の数が多く、かつ、俺が攻撃されない時という限定した状況では効果が大きいことが分かったが、それは仲間が俺の精神集中を守ってくれることが前提になる。そう考えると、いつでも使える使い勝手のいい技というわけではなさそうだ。

 ご主人様が魔法で敵のサンダーを封じてくれた。

 パワーは俺の技の邪魔にならないよう、そして、俺の精神集中が途切れないよう自分の判断で後ろを守ってくれた。

 そして、ガルガンとリーザも自分の判断で、俺の精神集中を守ることが大事だと判断して俺を守ってくれた。

 俺は仲間に恵まれているなあと改めて感じる。


 そして、俺が残ったウルフに石をぶつけていると・・・


(撤退だ。)

 ダイアウルフが吠えると、敵ウルフたちが逃げていく。

 想定外の反撃に敵ボスも撤退を決めたようだ。


 とりあえず、撤退の様子を見ている限り、根に持つタイプではなく群れの効率優先のボスのようだ。

 逃げていくのなら問題はないだろう。

 餌狙いの普通のモンスターならこんなものだよな。



(ウル様、あれを完成させたんだな。)

(ウル、大活躍じゃない。)

(ウル、凄かったね。)

 戦闘が終わると、みんなが俺の技を褒めてくれた。


(パワー、リーザ、ガルガン。みんな、俺を守ってくれたんだな。ありがとう。)

 でも、これができたのは、俺を攻撃に専念させてくれたみんなのお陰だ。



 敵が全部撤退したのを確認してから、パワーはご主人様とマイケルさんを木の上から降ろしてくれたようだ。


「ありがとう。助かります。自分では降りられないので。」

 マイケルさんが、パワーにお礼を言っていた。


「リーザ、ガルガンの回復お願い。」

 ご主人様がボスと戦っていて一番怪我が多いガルガンの治療をリーザに頼んだ。

 俺はみんなに守ってもらって攻撃を受けてないから無傷だし、パワーもあれだけの数を相手にしていたにも関わらず大きな傷は1つもない。小さな傷はたくさんあるので、あとでリーザに治してもらうが。



「ウル、凄いわ。いつの間にあんな技覚えたの?」

 木から降りてきて、リーザに回復を指示したあと、ご主人様も聞いてきた。


(あれ、実はホールドなんです。ロープの代わりに石を操っただけで。

 昨日、パワーと技の特訓して、身に着けたのです。)


「技も工夫次第で色々できるってことね。勉強になるわ。私ももっと考えないとね。

 パワーも協力してくれたの。ありがとう。」


(俺様は付き合っただけで何もしてないぜ。)

 パワーは、ご主人様に褒められて照れていた。


(ご主人様、サンダーから守ってくれてありがとうございます。

 ご主人様の防御魔法がなければ、俺のホールドの攻撃は終わってました。)

 俺は、ご主人様にお礼を言う。


「狼と聞いて慌てて準備したのだけど、役に立ってよかったわ。

 数が多かったから、本当はマイケルさんをサンダーから守るつもりで準備したのだけど、あの状況を見たら、ウルの精神集中を途絶えさせちゃだめだって思ったから。」


(電撃の攻撃を完全無効化って凄い魔法な気がしますけど、簡単に準備できるものなのですね。)

 俺がいた世界でのゲームではかなり高位の魔法だったはず。


「あれはね。一定のダメージを吸収して無効化するだけ。あと、1~2回サンダーを食らったら効果が切れていたわよ。

 相手が精神力がそこまで高くない狼だから効果が大きく見えただけで、ドラゴンとかの電撃ブレスだと1発すら完全に防げずに効果が終わるから、そんな万能な魔法でもないわよ。

 まあ、準備にそこまで時間かからないし、六属性全部に対応できるので便利ではあるけどね。」


 ご主人様が、魔法の効果について説明してくれた。

 それでも十分強いと思う。俺も早く魔法も覚えたいな。まずは、人間の文字を覚えるのが先決だが。


(そう言えば、ご主人様。干し肉の匂いしますけど、サンダー使おうとした奴の前に投げようとしてました?)

 俺は、ご主人様の手に干し肉の匂いが残っているのに気付いた。


「よく気づいたわね。もう防御魔法の効果が切れてもおかしくないと思ったから、サンダーを使おうとするのがいたら投げようかと思って。

 それに、ウルに近づいてくる狼にも注意しないといけないし、パワーかガルガンが危なくなったときも、近くに投げて攻撃を緩めるつもりだったけど、今回はみんな危なげなかったから必要がなかったわ。」


(ウルが狼の大半を追い払ってくれたからだよ。)

 ガルガンが言う。


(それは、みんなが俺の精神集中を守ってくれたから。)

 俺も反論する。


「ウルの技も凄かったし、それだけでなくて、ウルの初めての試みなのに、みんなすぐにウルの意図を察して連携できたのが凄いわ。

 普通は中々連携ってうまくいかないのだけど、それが自然とできたおかげね。

 みんなありがとう。」

 俺はいい仲間に恵まれた。ご主人様も同じことを思っているようだ。



 今回の敵は★3が1匹と★2が20匹近くいた。俺達は★2が4匹とご主人様だけだったけど勝つことができた。

 正直、★2のパワー1匹を相手にした時の方が余程苦戦をした。

 そう考えると、戦闘は★の数というか進化レベルよりも、いかに自分達のしたいことができるか、相手のしたいことをさせないか、結局戦術次第なのではないかと思う。

 明日はもっと高いレベルの敵が出るかもしれない。

 しかし、仲間を信じて最善を尽くせば、俺は何とかできるようが気がしていた。



 治療等が終わった後、俺達は交代で番をしながら寝ることにした。

 順番は昨日と同じで、ガルガン→パワー→俺→ご主人様だ。

 この辺まで来ると、モンスターも色々出てきそうなので、今日はさすがに訓練はせず明日に備えよう。

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