114サンクチュアリ(2)
☆連合国(南部貴族連合に協力)
ウル(主人公)元連合国アドバイザー(★5シリウス)
パワー 連合国モンスター部隊副大将(★5オニクビ)
オーウェル 連合国盟主・メキロ家当主(人間)
ストライフ 連合国冒険者部隊隊長・魔法知識に詳しい(人間)
☆南部貴族連合
ピュートル公 ハキルシア帝国3大貴族の1人・南部貴族連合盟主(人間)
ブライアン エルシア商人フィロソフィー商会当主(★6ゲブ)
ジーク 元ファーレン領主ラインの側近(★5シリウス)
次の日、ガインが失踪したとの連絡が入る。
モンスター部隊と行動している連合国冒険者部隊のストライフさんの話では、エルモンドへのテレポートに成功したのではないかと言う話だ。
テレポートに失敗した場合はその場から移動しないという話だし、ガインならきっと無事エルモンドに着いているだろう。
パワーが心配しているモンスター部隊のみんなに、ガインがテレポートでエルモンドに行っていると説明をしていた。
あとは、ガインを信じて待つだけだよな。
その間に俺はサンクチュアリを実用レベルまで使えるようにしないと。
ガインがストライフさんに相談してテレポートをものにしたという話を聞いて、俺とパワーもストライフさんにサンクチュアリについて相談する事にした。
サンクチュアリの構築をストライフさんに説明した結果、サンクチュアリには効果範囲・強度・持続時間を自由に設定できるだけでなく、後からエネルギーを補充する事により持続時間を延ばす事ができる事が分かった。
しかし、もちろん最大強度でレオグラード全体を守ろうとすれば膨大なエネルギーが必要となる。
そこの問題は解決しないままだ。
また、★5オニクビのフォースフィールドは、強度の調整ができない代わりに、最大強度で固定されるらしい。最大強度を維持するために★5オニクビの器官が必要なのだろうという事だ。
(なら、パワーが使った方がサンクチュアリの強度は増すんじゃないのか?)
俺がストライフさんに聞くと、
「パワー殿が使ったサンクチュアリも、ウル殿と同じ強度でしたよ。
恐らくフォースフィールドは、効果範囲を限定することでパワー殿の力を最大限引き出しているようです。」
ストライフさんが答える。
つまり、フォースフィールドは、★5オニクビの器官の可能な効果範囲で技の発動ができるという事だ。
(それなら、サンクチュアリと言うのは種族関係なく使えるんじゃねえのか?)
パワー鋭いな。俺もそう思った。
「その可能性はあります。
私がやってみましょうか。」
構築を知ったストライフさんがサンクチュアリに挑戦してみる。
独自の器官がなくても発動できるなら、サンクチュアリは6レベルの種族専用ではない技と言う事になる。
しかし、ストライフさんのサンクチュアリは発動しない。
見ていた限り、手順に問題はなかった筈だが。
「ダメみたいですね。
パワー殿、一度フォースフィールドとサンクチュアリを最小効果で発動して、使う器官が違わないか試してみて貰えませんか?」
ストライフさんが言う。
種族専用技はその種族しか持たない器官が必要だという仮説の確認だ。
(フォースフィールドは右手首か左手首だと思うぜ。
サンクチュアリは何度やってもどこがそうなのかはっきりしないぜ。)
パワーが言う。
手首という器官は殆どの生物にある。
だけど、★5オニクビの手首の形がフォースフィールドの発動に必要なのだろう。
(俺は、サンクチュアリは頭の中のような気がする。)
俺は言う。
サンクチュアリの精神集中に当たり、どうしてもそこから意識をしないと技が上手く形にならなかったからだ。
「フォースフィールドとサンクチュアリは近い効果なのに、必要な器官が違うのですね。
そうでなければ、★5シリウスも両方の技を使える筈ですからね。」
ストライフさんが言う。
まあ、確かにそうなるか。
その後サンクチュアリの練習を行い、精神集中で大量にエネルギーを貯めればある程度大きな範囲でも発動できるようになった。
次の日、エルシア商人のブライアンがやってきた。
「ウル殿、パワー殿、破壊の魔王が現れたと聞き、対抗策を持って来ました。
サンクチュアリの習得はどんな感じですか?」
ブライアンが言う。
ブライアンが連れた★4テンマが荷台を運んで来た。
(習得そのものは出来たんだが、町を覆うには膨大なエネルギーが必要みたいで、その目途が立たない。)
俺が答える。
「そうでしたか。
私は過去の文献でサンクチュアリを使用した者が使っていたと言われるアーティファクトを手に入れてきました。
これは、魔晶球というもので、技のエネルギーを貯める事ができます。
そして、技の使用者は魔晶球に貯めたエネルギーを使って、技を発動したり維持したりできるのです。」
ブライアンが荷台から魔晶球を出して見せてくれる。
直径1メートルの巨大な黒い球体だ。台座の上に固定されている。
(どうやって、エネルギーを貯めるんだ?)
パワーが聞く。
「技のエネルギーを貯め、魔晶球に向かって放てばいいです。
技を発動しないよう、使うエネルギーだけを貯め、技の効果の構築はしないでください。
試しに私がやってみましょう。」
ブライアンはそう言うと、サンダーの技のエネルギーだけを貯めて魔晶球に向かって放つ。
すると、エネルギーが魔晶球に吸い込まれていった。
次に、ブライアンは魔晶球に手を当て、サンダーの構築だけを行う。
すると、魔晶球からエネルギーが流れ精神集中した構築と魔晶球のエネルギーで上空に向かってサンダーを放った。
なるほど、魔晶球に触れるだけでエネルギーを使う事ができる訳か。
俺達も早速練習させてもらう。
エネルギーを使うにはちょっと訓練が必要だったが、1時間もせずに俺もパワーも魔晶球の使い方をマスターした。
(それじゃあ、次にやる事はある程度エネルギーを貯めて広範囲のサンクチュアリの発動をする事だよな。)
パワーが言う。
「サンクチュアリの効果範囲を人の歩いていたりすると発動が妨害されますので、一度レオグラードの外で試してみましょう。」
ブライアンにそう言われ、俺達はレオグラードの外に出る。
そして、ある程度エネルギーを貯めた後でサンクチュアリの発動を試す。
すると、半径50メートルのサンクチュアリの発動に成功した。
これなら、いけそうだ。
と、思ったところでサンクチュアリの効果が切れる。
魔晶球に貯めたエネルギーがなくなってしまったらしい。
その後、俺とパワーは再度魔晶球にエネルギーを貯めて、サンクチュアリの発動を色々と試してみる。
効果範囲の拡大・強度の調整・持続時間の延長の全ての調節ができるようになった。
あとは、実用するために魔晶球に大量にエネルギーを貯め込まないといけないか。
貯め込んだエネルギーが多くなれば、魔晶球自体が光り出すから分かるそうだ。
逆に言うと、貯め込んだエネルギーの一部が魔晶球から常に漏れ出すという事でもあるらしい。
次の日からは、魔晶球にエネルギーを集める事にした。
魔晶球はある程度大きいので、一度にたくさんの人数で同時にエネルギーを貯める事ができる。
ストライフさんやモンスター部隊の仲間にもお願いして俺達は魔晶球にエネルギーを貯めていく。
そして分かった事だが、技の構築部分と違い、純粋に技に必要なエネルギーを貯める精神集中はかなりの疲労がたまるのだ。
1時間もしたらヘロヘロだ。
仕方ないので、ストライフさんには一度休憩に戻って貰い、モンスター部隊の仲間で交代してエネルギーを貯めていく。
1日かけてエネルギーを貯め、ようやく魔晶球がある程度光るようになってきた。
次の日、ブライアンが俺達を呼びに来る。
ピュートル公と打ち合わせをするとの事だ。
ピュートル公から、近隣の町から住人を避難させる事ができるか聞かれたので、結界の範囲内であれば可能と答えた。
そして、結界の範囲をレオグラードの中心部から半径20キロメートルと決めた。ディビアンとの境界近くまで広げるということだ。出来れば、半径を60キロ以上にしてディビアンやゼルロンまで入れてしまいたかったが、エネルギー的に厳しいと分かり、半径20キロメートルとなった。
ピュートル公の指示で、レオグラードの衛兵に結界の範囲に線を引いてもらい、避難してきた住民に結界の範囲内に入るよう誘導して貰う事になった。
また、ファーレンの太守に復帰したライン・ミューゼル侯が★5シリウスのジークをサンクチュアリの交代要員として派遣してくれるらしい。
これでかなり、楽になるな。結界を張っている間は眠れないからな。3匹いれば交代して眠る事ができる。それに、センスイービルやホーリーワードを教えて欲しいしな。
あとは、結界の発動や交代で維持する練習だな。
俺は、ガインが戻って来るまでに、ジークから専用技2つを教えて貰って習得し、逆にジークにサンクチュアリを教えて習得して貰い、魔晶球にそれなりのエネルギーを貯めるなどの準備を進めておいた。
20230612 話番号修正・誤字等修正




