表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能な魔王と短気な勇者 ~宿敵二人組の異界奇譚~  作者: 籾と茅
第1章 魔王と勇者、学校へ行く
5/25

幕間 作戦会議

だーかーら、俺は学校には行ったことないんだっつの。


俺は、生まれてから此の方、勉強を他人に教わったことなんて無い。


なんでって、何しろ、俺は魔王だからな。必要最低限の学問を他者から学ぶような凡夫に、魔王が務まると思うか?


じゃあどうするんだよ。学校での正しい振る舞いなんて、俺にも分からないぞ。


おい、勇者といえども人間だろう?学校に行ったことがないなんて、そんな…


…俺はもともと孤児だ。協会で育ち、協会で学び、協会にて神託を受けて勇者になった。


…使えねぇ


あ゛あ゛?


何でもねーよ。…それじゃ、最終手段と行くか。


最終手段って?


ああ、それはな-


≫≫≫


「え?学校での正しい振る舞い方を教えてくれ、だって?」


亜蘭と犀が学校に行く前日のこと。

たまたまホームにやって来ていた轟に、亜蘭は助力を頼んだのだった。


「そう。轟さんなら、いくらでも質問できると思ってさ」

「ふむ、それは良いんだが…」


轟は頭をかくと、苦笑いをした。


「なにぶん、俺が学校に通ってたのも十年近く前の話だからなぁ。ハッキリとは覚えてないっつーか」


その言葉を聞いて、亜蘭と犀は落胆する。


「そっか…」

「まあ、覚えてないんだったらしょうがないよな」

「…いや、ちょっと待て」


部屋を出ていこうとした二人を、轟は押し止める。

そして、


「いいか、ここでちょっと待っててくれよ?」


とだけ言い残して、自分は部屋を出ていった。

残された二人は、顔を見合わせると同時に首をかしげた。

そして、待つこと数分-

ドアが開き、轟が戻ってきた。 -南郷を伴って。


「あ、あれ?南郷さんまで?」

「ああ、そうだよ」


驚いた犀は、すっとんきょうな声をあげてしまう。

しかし、それを特に気に止めることなく、南郷はニコニコとしながら部屋に入ってきた。


「いやぁ、轟に『二人に学生時代の話をするから手伝ってくれ』と頼まれたから、何事かと思ったけど」

「俺だけじゃ記憶が不確かだからな。二人いりゃ、どっちかは覚えてるだろ」


そう言って、轟は近くにあった椅子を南郷に寄越し、自分はベッドの上に座り込む。


「さて、なにからはなそうかね」


先ず口火を切ったのは、轟だった。


「やっぱり、ここは転校生が来たときのことなんていかがかな?」

「あ、それはアリだな」

「は、はい!是非聞きたいです!」

「俺も俺も!」


自分達のヒントになるかもと、亜蘭と犀は聞く体勢をとった。


「いやはや、なつかしい響きだよね、『転校生』!」

「だな。当時は、まあ今もそうかもしれんが、転校生ってのは珍しくてな。来るって知らせが来たときにゃ、クラス中大騒ぎだ」

「そうそう!そのくせ、実際に来てみたら『大したことない』で終わっちゃうんだよなぁ」

「ありゃ理不尽だよな」

「それで、飽きられてた転校生の子を一生懸命構ってたのが、当時クラス委員長だった轟だよ」

「あっ!余計なこと言うなっつの」


恥ずかしいのか、轟がむくれる。

しかし、『学校』というものに通ったことのない亜蘭と犀にとって、南郷と轟の会話は、とても新鮮で面白いものだった。


「そうだ、部活!部活の話もするべきだな」

「ああ、それもそうだね」

「俺は野球部だったんだ。南郷は…茶道だっけ?」

「うちの学校にそんな上品なものないよ。俺は弓道」

「南郷さん、弓が使えるんですか!?」


あまりにも意外だったのか、犀が口を挟む。

南郷は、ニッコリと笑ってうなずいた。


「そうだよ。まあ、それこそ、前に試合をしたのはずいぶんと昔の話だからね」

「でも、腕は落ちてないだろ?練習自体は、毎週日曜日に欠かさずやってるじゃねぇか。安息日はどうしたんだよ、安息日は」


そこで、亜蘭はふと疑問に思うことがあった。


「二人とも、なんで今の仕事についてるんすか?」


そう問われ、南郷と轟は顔を見合わせる。


「なんで、だったかなぁ」

「轟は、あれじゃなかったか?ほら、いじめっ子退治したときの」

「あぁ、あれか!ん?じゃあお前はなんだったんだ?」

「さて、なんだったか…」

「…つーか、南郷さんの仕事ってなんなんですか?よくこんなおっきい家に住めてますね」

「私の仕事かい?あれ、前に言わなかったかな。というか、もう見た目でわかると思うんだけど」


そう言いつつ、南郷は立ち上がると、首もとにかけていた十字型のネックレスを持ち上げる。


「ご覧の通り、牧師だよ。それに、ここは教会とセットだからね。光熱費とか水道代は、教会の元締めの人達が払ってくれるんだよ。…そういえば」


そこで、南郷は犀の方を見る。


「犀くんは毎朝お祈りしてなかったかい?それなら、私の職業のことも知ってただろう?」

「あー、はい!」


…正直なところまったく知らなかったが、肯定しておいた方が都合が良いと判断した犀は、すぐさま答えた。

と、ここで轟が割って入った。


「話脱線してるぞー。学校の話だよ」

「あ、そうだったね。失敬。そういえば、こんな話も- 」


こうして、二人の話を聞いているうちに、時間は過ぎていった。



「おっと、もうこんな時間か。それじゃ、二人とも、明日の準備はしっかりとね」


そう言って、南郷は部屋を出ていった。

南郷が廊下を歩いていったのを確認すると、轟は二人の方に向き直る。


「参考になったか?」

「はい、とても」

「あんがとな、轟さん」

「良いってことだ。とにかく、俺の言いたいことはひとつだけ」


そう言うと、急に轟が改まった態度になる。


「せっかく『こっち』に来たんだ、楽しんでいってくれ」

「「…はい!!」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ