表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能な魔王と短気な勇者 ~宿敵二人組の異界奇譚~  作者: 籾と茅
第1章 魔王と勇者、学校へ行く
3/25

幕間 始まりのはじまり

それは、俺たちが『こちら』に来た時の話。


俺たちが、『こちら』で、


魔王は『鈴木 亜蘭』として。


勇者は『伊藤 犀』として。


そんな風に。


二人の、唯の人間として暮らしていく。


そんなお話の、最初の一ページ。


その始まりの、少し前のお話。


はじまり、はじまり。


≫≫≫


魔王城、玉座の間。

混濁する意識の中、魔王アラングリッドは、自らへ迫る白刃を、どこか達観したような気持ちで見ていた。


(俺の夢も、理想も、覇道も、今この瞬間、露と消えようとしているのか)


静かに、己の死期を悟りつつ。


(正義を語り、神を騙る、こんな勇者(まがいもの)に)


最期の時特有の、緩やかな時の流れの中で。

自らの悲運を嘆くように。


(俺は斃されるのか-)


魔王は、ゆっくりと眼を閉ざす。

その瞬間、

胸元から、真っ白い輝きが溢れ出した。


「な、なんだ、これは!?何をした、魔王!」


勇者もまた混乱しているようだったが、何をしたと問われても、自分も身に覚えが無いのだから、答えようがない。

そうこうしているうちに、光はどんどんあふれでて、玉座の間を満たしていく。

そして、完全に視界が白く塗りつぶされたと思った瞬間、


「う、うおぉ!!」


床が消失したかのような感覚と共に、間違いなく、落ちていく感じがする。


「こ、これは…高所から、落下してる、のか?」


と、独白してまもなく、その答えは提示された。

先程まで、光に包まれたままだと思っていたのが、不意に視界がもとに戻る。

どうやら雲の中にいたらしいということは、すぐにも理解した。

そして、眼下の景色を見下ろして- 魔王は、呆気にとられた。


「な、なんだこれはっ!!?」


魔王の下には、

巨大な金属製の建造物や、緑に染まる畑の間を、黒ずんだ道が張り巡らされた町が存在していた。


「…これは、明らかに俺の世界のものじゃない…!?まさか、この目で『異世界』なんてものをまのあたりにする日が来るとはな」


少し興奮気味の魔王は、ふと、自分がものすごい速度で落下していることに気づいた。


「む、このままでは探索の前に墜落死してしまうな。どれ…《フライ》!」


魔王が魔法を唱えると、ふわりと魔王の体が中空に浮き上がる。

魔王は、満足げに笑みを浮かべた。


「よしよし、異世界に来ても魔法は有効のようだな。これは幸先が良い。それにしても- 」


と、魔王は首をかしげた。


「なんだろう、体が軽い…?それに、なにやら声も高く聞こえるな。落下中に耳をやられたか?」


しかし、魔王は首を振り、その一抹の不安を払拭する。


「いや、別に構わん。下に降りてから治せばすむ話- 」

「とらえたぞ、魔王っ!」

「ぐあっ!」


突如、背中側からなにかがのし掛かる。

その衝撃に耐えきれず、ぐらりとかしいだかと思うと、魔王と襲撃者はまとめてゆっくり落下を始めた。


「くっ…勇者、なのか!?」

「おうとも!さっきは妙な魔法を使って逃げ延びようとしたようだが、もう離さないからな!」

「ま、待て、勇者!このままでは、おち、落ちるぅぅぅ!」

「な、何!?う、うわぁぁぁぁあ!!」


遂に、二人は、町の一角に墜落したのだった。



ガラガラ、ガシャン!


けたたましい音をたてて、魔王は金属とも石ともわからぬもので作られた箱を押し退け、立ち上がる。

と同時に、少し離れたところから、一つの人影が立ち上がった。


「ぐっ…もう、逃がさんぞ!」

「チィッ!」

「行くぞっ!ここが貴様の墓場だっ!」


そう叫んで飛び出してきた人影に対抗するように、魔王もまとわりついていたマントを振り払う。


「望むところだ!勇、者…」


そして、今にもぶつかる、といった距離で、二人とも立ち止まった。

何故ならば- 目前の相手が、明らかに齢十四、五の少年(・・・・・・・・)だったからだ。


「…あれ?」

「えーっ、と…?」


お互いに剣と手を下ろし、歩み寄る。


「お前、魔王、で良いんだよな?」

「そっちこそ、本当に勇者か?若々しいどころではない、それではまるで…」


…永遠とも思える、数秒の静寂の後。

勇者は、おもむろに剣を振り上げた。


「もう知らん。斬る」

「ちょ、待て待て待て!何をどう考えたら、そんな浅慮な結論に至るんだ!?」

「うるさい!元々お前が悪あがきをしたのが悪いんだ、黙っておとなしく斬られろ!」

「そ、それが勇者の言うことか!?クソッ、だ、誰か- 」


「おい、そこの二人。そこで、何してる」


二人は動きを止め、声のした方に揃って顔を向けた。

そこには-


青い制服らしきものに身を包んだ男- 轟が立っていた。


≫≫≫


こうして、俺たちは轟と出会った。


このあと、またもうひと悶着あってから、南郷のいるサウスパーク・ホームへと滞在することになるのだが。


-それは、また別の機会に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ