プロローグ
-とある世界、魔王の城の最奥、玉座の間にて…
『はぁ…はぁ…ぐっ、貴様ぁ…!』
『ようやくここまで追い詰めたぞ、魔王!!』
そこは、魔王軍と勇者一行の戦いの最中。
魔王の腹心たちは傷つき倒れ、後は魔王が辛うじて立っているのみだった。
『吹き飛べ、《シャドウブラスト》!!』
魔王が残された魔力を振り絞って放った黒いオーラの塊は、しかし勇者に付き添っていた賢者の祝福によって弾かれる。
『すまない、*****。後は二人の回復を』
『あぁ、分かった』
賢者は、倒れていた他の仲間の回復へと向かい、この場には魔王と勇者の二人だけとなった。
『お前の悪しき野望もこれまでだ、魔王』
『悪しき野望だと?!われら魔族を退治と称して蹂躙する貴様らに、わが大願を悪しき物と断ずることが出来るほどに崇高な大義が、はたしてあるのか!?』
『…ふん、お前にはどうせ理解できないだろうさ』
勇者は、魔王に最後の一撃を見舞おうと剣を振り上げる。
『どちらにせよこれで終わり、さらばだ魔王っ!!』
『ぐっ、神の傀儡ごときがぁぁあ!』
負傷で身動きすらとれぬ魔王の首に、勇者の剣が振り下ろされ-
◇
「ぎゃぁぁぁあ!!!」
と断末魔の叫びを上げたところで、少年は目を覚ました。
一連の出来事が夢であったことを知り、ほっと胸を撫で下ろす。
「はぁ…ただの夢だったか。ふぅ、良かったよかっt」
「いいわけ、あるかぁ!!」
と、後頭部に重い一撃が炸裂した。
「いつまで寝てるんだお前は!そして今何時かわかってんのか!」
布団から身を起こした黒髪の少年の後ろにもう一人、同じくらいの年の、鮮やかな金髪をもつ少年が鬼の形相で立っていた。
「うぐぅ…ぐ、グーだと?!お前、人様の頭をグーで殴っていいと思っているのか!?」
「何か問題でも?」
怒り狂っていた金髪の少年は、今度は凍てつくような視線を寝ていた黒髪の少年に向ける。
「お前のような怠惰で無能なやつは、グーで殴るどころか剣でも使ってぶった斬ってやりたいくらいだ!大体なんだお前は、ここに来てから毎日毎日っ」
「分かった、分かったから!起きれば良いんだろう、起きれば!」
そう言って、黒髪の少年はさっきまで潜っていたベッドから降りた。
「ほら、朝食はとっくにできてるぞ。というか、食べてないのはお前だけなんだからな」
「ハイハイ、分かりましたよ、ユ・ウ・シャ・サ・マ」
「-やっぱり、あのとききっちり殺しておけば…」
立っていた金髪の少年がぼそりと物騒なことを呟いたのを聞こえなかったふりをして、黒髪の少年、『魔王アラングリッド』は、金髪の少年『勇者サフィール』にせき立てられ、食堂へと向かうのだった…




