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お前にぶら下がってる×××(下品な表現のため規制されました)ちょん切るぞ

 婚約破棄は、なんと翌日に叩きつけられた。

 他ならぬ婚約者によってである。

 婚約者はこの国の第三王子であるフェリウスだ。

 彼は栗色の髪と同色の瞳を持つ青年であり、歳は俺の二つ上である十八歳。

 おい、お前だって原因なんだからあんな妹の言うこと信じるなよ。

 

 「そもそも、あの一度で孕むなど考えられない」


 おい、てめぇこの野郎。去勢したろか。

 

 「冗談がお上手で、と言いたい所ですが、信じてもらえませんか」


 お互い、そこまで上辺だけは感情的になっていないのは救いだろう。

 

 「なら聞くが、その腹の子が俺の子である証拠はあるのか?」


 無茶言うな。

 前世の日本のようにDNA鑑定でも出来れば良いのだろうが、それは出来ない。

 何故なら、そこまで科学が進歩していないのだ。

 

 「生まれて、貴方の面影が宿ればわかることです」

 

 「つまり、無いのだな」


 畜生。

 

 「私が不貞を働いたという証拠も無い筈ですが」


 「それこそ、孕んだのが何よりの証拠じゃないか」


 切り落としたろか。

 いやマジで。

 

 とりあえず、こんな感じで誰も俺の話を聞いてくれなかったわけで、正式に俺は婚約を破棄されてしまったわけだ。

 んで、婚約者の下から家に帰ったわけだが、案の定すでに手が回されていて家の敷地に入る事はできなかった。

 とてもよく知った警備のおっちゃんから、俺の荷物を渡された。

 ピーターさん、ありがとうございます。

 根回しはやはり大事だなと思う。


 「しっかし、旦那様も鬼だなぁ」


 「ふふ、仕方ないですよ。父は妹の方が好きですから」


 「そうは言っても、普通はしないぞ身重の、しかも他ならない自分の娘を勘当するなんて。

ミリアお嬢様、行く当てはあるのかい?」


 ミリアは愛称で、今の俺の名前はミリアーナである。

 母親譲りの白銀の髪に父親譲りの金色の瞳を持っている、自分で言うのもなんだがレベルの高い容姿のお嬢様である。


 「実は無いんですよねぇ。だからいま途方に暮れています」


 荷物は旅行鞄一個だけ、一応中身を確認すると、おそらく両親から渡す様に言われたのであろう大量の紙幣が入っていた。


 「まぁ、でも、しばらくは寝床には困らないと思います。

ほら、見てくださいよこれ。手切れ金ですよ」


 笑って言えば警備のおっちゃんが苦々しい顔になる。


 「親子の縁ってのはそんな金で切れるようなものじゃないんだがな」


 「おそらく、そのうち私は死んだ事にされますよ。おじ様ともお話するのこれで最後ですね」


 「お嬢様」


 「これからは街であえますね」


 「……これ、俺の家の住所だ。何かあったらいつでも来な」


 俺はおっちゃんからメモを受け取ると、はにかんだ。


 「ありがとうございます。でも、良い機会なのでしばらくは一人で頑張ってみようかと思います。

でも、なにも無くても遊びに行って良いでしょうか?」


 「もちろん」


 そうして、警備のそこそこ仲の良かったおっちゃんに見送られ、俺は家を出た。

 時刻は昼。

 まずは腹ごしらえだろう。

 と、そこで俺は気付く。

 俺の従者とメイドにまだ説明をしていなかったことに。

 いや、きっとこれも妹と両親が手を回したのだろう。

 今朝は違う者が起こしにきたし、身支度もいつもとは違う新人メイドが手伝ってくれた。

 あの二人、結構優秀だからな、あと何故か俺に忠誠を誓ってくれてたから、俺を追い出すと絶対にくっついていくと考えたんだろう。


 「さよならくらい、言いたかったなぁ」


 はぁ、と溜息を吐きだす。


 「さて、と。とりあえずどうするか」


 そういえば、不思議と堕胎しろとか言われなかったな。

 あの妹は俺を追い出すことしか頭に無かったから、その考えに至らなかったのだろう。

 フェリウスからも言われなかったしな。

 いや、まずは飯だ飯。

 それから今夜の宿を探して、あとは求人情報誌を手に入れねば。

 お嬢様生活十六年。前世では一応バイトをしていたが、果たして雇ってもらえるだろうか。

 あと、安い集合住宅(アパート)も探さなければ。

 やべぇ、これ、前世でも出来なかった独り暮らしできるんじゃね?

 いや確実にできるな!!

 よし、張り切ってレッツ新生活だ!!


 「えいえいおー!!」


 と自分に気合いを入れた所で、横からクスクスと笑い声が聞こえてきた。


 「元気だねー、君。

あ、その荷物旅行者??」


 見れば俺も通っていた学園の制服を来た少女がいた。


 「あ、アタシはシェリル。良ければ街の案内してあげよっか」


 なんて言ってくる少女――シェリル。

 学校はどうした、もしかして不良か?

 そう俺が思ったのは、まぁ仕方ないだろう。



 



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