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妹よ、子供がどうやって出来るのか知ってるかい?

 神様、なんのイジメですか?



 俺の眼前では、俺の妹が泣きながら訴えてくる。


 「お願い、これ以上あの方を縛らないで!!

婚約を破棄して!」


 いやいやいや。ちょっと待て。いきなり言われても出来ねぇよ!?

 

 「無理だよ。私には、私のお腹にはあの人の子がいるもの」


 はい、これ事実な。

 とりあえず経緯を説明しよう。

 まず俺には物心ついた頃から前世の記憶というものがあった。

 それが今の俺の人格を形成している。

 そう、俺の前世は男だった。

 そして、生まれ変わった今の俺は女性である。

 子供の頃は記憶の混乱があり、その道のプロ、まぁお医者さんにお世話になったりもしたんだが、結局時間が解決してくれた。

 人格こそ男だが、時間が今の俺は女であると認識させるのに十分な仕事をしてくれた。

 チグハグでアベコベな人生だが、これはこれで楽しまなければもったいない。

 せっかくの人生なのだから。

 そう考えて、前世では片田舎の冴えないガキだった俺はお嬢様ライフを満喫していた。

 お嬢様、そう俺はなんとこの国で一、ニを争うほど血筋の良い家に生まれてしまったのだ。

 ぶっちゃけ、とても面倒臭い人生であるが、それすらも楽しまなければやっていられない。

 俺は、この十六年の人生で手に入れた演技スキルを駆使して、妹の説得を試みる。


 「なによ、それ。けがらわしい!!はしたない!!」


 妹よ、今生の妹よ。お前は俺達貴族の女性の役目を理解しているのか?

 いや、まぁ婚前交渉はたしかにちょっとアレだとは俺も思ったよ。

 でも、このまま普通に結婚するなら先にヤルか後にヤルかの違いしかないし、婚約者と相談した上でとりあえず初夜の練習をしようとなっただけなのだが。

 お互い合意の上でやったうえ、まさかあの一回で孕むとはなぁ。

 前世では童貞のまま死んだ俺としてはびっくり仰天だわ。


 「落ちつきなさい」


 「落ちつけるわけ無いでしょ!?

なんで、姉様ばっかり!! ズルイ!! いつもいつも私の邪魔をして!!」


 きーきー喚くな、耳が痛い。

 はしたないのはどっちだ。

 俺がさらに言葉を続けようとしたら、妹は俺の部屋を出ていってしまった。

 と、思ったら妹は自分付きの従者を連れて戻ってきた。

 屈強な従者、つまりはむっちゃマッチョの男性である。

 顔も名前もよく知っている彼に、俺は犯罪者よろしく腕を後ろでにされ拘束される。

 

 「これは何の真似かしら?」


 「すみません、お嬢、マルチナ様の指示でして。あの、おめでとうございます」


 「とりあえずありがとう。父様と母様にはこれから報告する所なの」


 そんな俺の言葉に、妹――マルチナはにやりと嗤った。

 我が意を得たり、ちょっと違うか。

 それでも、どこか勝ち誇った顔になった。

 

 「そう、そうなの、やっぱりそうなのね?」


 あー、マズった。

 両親はこの妹に甘いんだった。

 少なくとも妹は転生者ではない。だから幼いころから妙な言動が多かった俺と比べると面倒が少なく素直で良い子の妹はそれはもう両親から甘やかされていた。

 そのせいで、妙な方に歪んでしまったが。

 今は幼いころの様な素直さなど欠片もない。

 どうすれば自分の欲しい物が手に入るのか、どうすれば自分の望み通りの展開に出来るのかそうした策を考える妹はまさに女狐といった方が正しい。


 「姉様、ずっと貴女が憎かった。でも、それも今日までよ。

追い出してやる!! 絶対にこの家から追い出してやる!!」


 追い出してやる、が、殺してやるに聞こえるんだが。


 「ピーターさん、ピーターさん。ちょっとお願いが」


 こっちの事にはほぼ構わず喚き散らす妹を横目に、俺は俺を拘束している屈強な従者のピーターさんに耳打ちする。

 本当は呼び捨てするくらいしないと示しがつかないのだが、まぁいいか。

 俺の指示に、ピーターさんは軽く頷いてくれた。

 ちょっとした保険くらいかけた方がいいだろう。

 それくらい、この妹は性質が悪いのだ。


 そこからの事を簡単に説明すると、俺は両親の前にひっ立てられるとマルチナから妊娠の事を暴露された。

 母親は妹と同じで俺の事を恥だなんだと喚き散らして泣き崩れ、父親からはビンタを喰らった。

 落ちつけよ、おめぇら。

 待望の孫だぞ、孫。

 それに、俺の婚約者であり腹の子の父親である男は、王位継承権こそ三位だが、それでも王族である。そもそも婚約者の子だというのに、何故こんな体罰を受けなければならないのか、解せぬ。

 と、言えたらどんなに楽だっただろうか。

 両親に俺が何か言おうとすると妹が邪魔をして、とにかく話しにならなかったのだ。

 挙句の果てに、妹の嘘八百を信じる始末である。

 いや、まぁ予想できたことなのでそこまで驚かないが。

 ちなみに妹の作ったストーリーはこんな感じである。

 どうやら俺は、街に遊びに行っては金で男の男娼を買い漁り、楽しんでいた。腹の子はそんな男娼の子供である、と。

 いやいやいや、おかしいだろ。いずれは王族の末席に連なるのだ、王妃候補に劣るとはいえそれなりの教育をほぼ休みなしで毎日こなしているというのに、いつ遊びに行ったって言うんだ、証拠出せ証拠。

 と言えたらどんなに良かっただろう。

 はい、読者の皆様お察しの通り、両親は妹の言葉を鵜呑みにするばかりでこちらと対話する気もないようだ。


 あまりだらだらと述べても飽きるだろうから、結論だけ述べる。

 婚約破棄されて家を追い出されたなう。 

 






 

 





 

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