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Moment-break ~月光~
寝静まった街を、私は見下ろす。
五月蝿い声は聴こえない。
家の明かりは消え、ちらちら点いているガス灯だけが街を照らす。
風が明日を運んでくる。
星が人々を先導する。
家事に疲れた婦人ぎ寝ている。
戦乱の中、兵士達が身体を休める。
そして私は、世界中の皆を、気付かれぬように、優しく包み込む。
汗が流れ、
血飛沫が飛び、
歓喜し、
絶望し、
生き、
死に、
戦い、
和解し。
そんな、
自分勝手で我が儘で、
どうしようもなく
馬鹿で愛らしい人間を、
私は毎夜包み込む。
風がどんなに冷たくしようと、
太陽がどんなに熱く怒ろうと、
雨がどんなに落ち込ませようと、
私は暖かくも冷たくもなく、
ただ人間を包み込む。
どんなに辛くても嫌でも来てしまう明日を少しでも良く迎えてもらうため、
今日も私は包み込む。
黄金のレースをそっと、人々に。