聖術都市
「属性」と呼ばれるものは、最近では非常に多くの種類を持つものとなり、それは今なお確実に増加しつつある。
とは言うものの、その多くはゲーム内で使われている物がほとんどで炎、氷、雷、光、闇などといった現実に存在している物質の色合いや、仮想された存在していない物質の持つであろうとされる色によって分類されている属性や、最近では恋愛シミュレーションゲームの登場キャラクターである美少女や美男子などに見られる、特定のキャラクターの性格や個性、立ち位置といったものから分類されている属性がある。
例として挙げるのならば、「妹属性」や「幼馴染属性」などといったものがある。
だが、この例に挙げた二つの属性は決定的に異なる点がある。
それは現実に存在し得るかし得ないかである。
後者に関しては実際に存在している多くの人々に当てはめることが可能であるが、前者に関してはいわゆる「魔法」に分類されるものであり現実には存在しない。
使えるのは仮想空間の中ででしかないのだ。
しかし、このことは少し前までの話である。
多くの科学者の苦労ととある物質の発見によってその「魔法」たるものが人類に扱いうる世の中に変わったのである。
そこで魔法の基礎を学ぶための学校や魔法の力を生かして日々の生活の向上を目的とした研究所なども次々と建てられるようになった。
だがその発見はまだごくごく最近のことで未だに全世界に広がったわけではない。
それまではただの一高校生でしかなかった古宮恋斗もその世界の大きな変化の中で、魔術を扱うことが可能となり、魔法少女ならぬ魔法少年?となったのである。
しかし皆が皆、恋斗のように魔法が扱えるようになったわけではなく適正というものがあり、その中でもとりわけ恋斗は魔法の能力が高かったらしく、その影響でとある学園に転校することになった。
「聖術都市」と呼ばれるその学園は、恋斗のように魔法を扱う能力に長けた高校生が集められた学園で、互いに凌ぎを削り能力を高めるために建てられた場所だという。
そしてその場所は、魔法によって周囲に悪影響を及ぼさないために、と特別な空間に建てられたらしい。
「高校に入学してまだ3か月しか経ってないのにもう転校かぁ。別に転校は初めてじゃないからいいが、よりによって時期が時期だからなぁ。はぁ、さらば俺の学園生活よ」
恋斗は落胆しながら転校先であるエルリュード学園、通称「聖術都市」へと朝から足を進めていた。
エルリュード学園とは創設者で現学園長であるルクシィ・エルリュード氏の名を採った学園でここ数年で建てられた学園の中でも上位のレベルの学園だと言われている。
「聖術都市」と呼ばれるだけのこともあり、その学園だけでも一つの都市といえるほどの敷地面積を有しており、中央のエルリュード学園を中心にそれを取り囲むように市街地や様々な商店、魔術研究所などといった便利な施設が備えられている。
もちろん、そんな凄い学園に入学できるのだから嬉しくないこともないのだがこの時期、6月も後半ともなってくるとおそらくクラス内で様々な仲良しグループが構成され始めるころだろう。
うまく馴染めるだろうか。
そんなこんな考えていると転校が決まった際に渡された地図に示されていた集合場所的な場所に着いた。
そこでしばらく待っていると一人のいかにも何事もすらりとこなしそうな執事らしき人がこちらへ歩いてくるのが見えた。
「あなた様が古宮恋斗殿ですな」
「あ、はい。そうですけど、あなたがこの地図の差出人でしょうか」
「ええ、といいたいところですが、生憎この便りを送るように言われた身でありますので私ではないのですが、その真の送り主から恋斗殿をお迎えに上がるよう仰せつかった次第にございます」
「それはわざわざありがとうございます。ええと、それじゃあお願いします」
「かしこまりました、それでは私めに付いてきてください」
見知らぬ人にはついていくな、とはよく言われるが理由が理由ならば仕方がない。
恋斗は不安を抱えながらその執事の後を追っていった。
閲覧していただきありがとうございます!
まだ書き始めたばかりですが、気ままに投稿していきたいと思います。
投稿のペースや文量は未定ですが、できる限り早く載せていきたいと思っています。
今後も読んでいただけると幸いです(>ⅴ<)/