~忘却と真実の狭間~
~2年後~
「お義父さん、見て見て!」
少女は嬉しそうに花冠を父親に見せた。花冠は少々歪な形ではあったが、愛する娘が作ったものだ。この花冠は、世界中のどの国の王の王冠よりも何千倍以上も価値があるだろうと、父親=ケイは思った。
娘のリラは、今日で10歳の誕生日を迎える。まだ子供だというのに気品があり、かと言って子供らしさもあるリラは、まるで天使をそのまま写したような美しさを持っていた。
「誕生日おめでとう、リラ」
ケイは懐から小さな包を取り出し、リラに手渡した。
「ありがとうお義父さん!」
ケイは、リラの銀色の髪を撫でた。翡翠色の綺麗な瞳が、まるで宝石をはめ込んだように美しく輝いていた。
「開けてもいい?」
そう言いながらも、リラは包を開き始めていた。中身は綺麗な装飾品が数点、まだ子供のリラには少し早いような、かなり高価なものだった。
「わあ!綺麗・・・・!!」
リラは目を輝かせた。実は今日リラの誕生日パーティーがあるのだが、ケイは主役であり義理とは言え愛娘であるリラを、もっと美しく見せたかったのだ。
「今日のパーティーでそれをつけなさい」
ケイは喜ぶリラを嬉しそうに、そしてどこか寂しげに見つめていた。
「ねえお義父さん・・・」
ケイを呼ぶリラの表情からは、笑みが消えていた。
「なんだい?」
ケイも真剣に聞き返した。
「私って、ここに引き取られる前はどこにいたの?」
実は、リラはずっとある違和感を感じていたのだ。
見覚えのある景色が脳裏を過るのだが、懐かしい誰かの声が蘇るのだが、まるで霧がかかっているように、その風景が、声の主がぼやけて思い出せないのだ。
「何を言ってるんだい?リラはネガミ孤児院にいてこのうちに来た。前にも言っただろう?」
ケイは苦笑しながらリラを撫でた。しかし、リラは悲しげな表情になった。
リラは、ケイを本当の父親のように思っているのだが、それ故にわかるのだ。
ケイがリラに対して嘘を吐くとき、決まって笑いながらリラの頭をワシャワシャと少し乱暴に撫でる。
父親が、自分に何か隠し事をしている・・・それがリラにとっては悲しいのだ。
「そう・・・わかった・・・」
リラはケイに心配させまいと、必死で作り笑いをして屋敷の中に戻った。
「どうしたんだろう・・・」
リラは頭を抱えた。最近リラ自身も、ケイの様子もおかしい。