~覚醒の兆し~
注意!
この作品は、RPGっぽくしている都合上死ネタなどが入っていますが、
できる限り抑えます。
最後まで安心して読んでいただけたら幸いです
prologue
私は何だったのか・・・
私は何をしていたのか・・・
思い出さなくてはならないはずなのに、まるで記憶に蓋をされたように何も思い出せない。
私の名は[エデン]・・・そうであるはずなのだ。そうあるべきなのだ。
『××よ、お前は私についてこられるのか?』
『××~早く行こうよ!』
『私は貴女様に忠誠を誓った身、どこまでもお供します!』
『ほら行くぞ?アンタの目的を果たすためにも、俺のためにも』
頭の中に、確かに声が聞こえるのだ。どこか懐かしく、その声を聞くと何故か悲しくなる・・・
これは、私の追憶の物語である。
1章、旅の二人
「・・・ラ、リラ、もうすぐカナルの国に着くぞ。そろそろ起きろ」
リラは、師匠ゼリアの声で目が覚めた。
まだ6歳のリラだが、訳あってゼリアと言う名の女性と共に旅をしている。今はその途中の馬車の中だ。
「ふぁぁぁ・・・・おはようございます、師匠・・・」
まだ寝ぼけながらリラは荷物の中を漁ったが、特に意味はなかった。
「ほら、あれを見ろ」
ゼリアは遠くを指さした。リラは、ゼリアが指差すものを見て目を輝かせた。
「わぁぁ・・・とっても綺麗ですね・・・!」
それは、巨大な水晶でできた門だった。白水晶の門には、カナルの国の王家の紋章の形をした青水晶が飾られている。
「カナルの国は、別名“水晶の国”だ。ここでの調査が終わったら、土産に何か買っていこうか?」
「はい!」
リラの目はもう覚めていた。
~カナルの国:ホフマン邸宅~
ケイ=ホフマン、彼はこのカナルの国一の豪商である。貴族とも変わらぬ程の豪邸に暮らし、何人もの使用人を雇っている。
そんな彼は、ゼリアの古い友人である。雇っているメイドから、『ゼリア様がお見えになりました』と聞いて、すぐに二人を屋敷の応接室に通した。
「ゼリア、久しぶりじゃないか!」
ケイはゼリアを見て歓声を上げた。
「ん?そちらのお嬢ちゃんは誰だい?」
リラを見て、ケイは首を傾げた。リラは深くお辞儀をして言った。
「ゼリアさんの弟子、リラです」
ケイが目を見開いた。
「本当かい?・・・まさか君が弟子をとるなんてなぁ・・・」
「悪いか?私だって一人旅ではきついものなのだ・・・」
ゼリアがコーヒーを啜った。
「リラ、これから少しこいつと話をする。お前は屋敷の中でも見させてもらっていろ」
リラは頷くと、メイドと一緒に部屋を出た。
~リラside~
「えっと、リラちゃんだったかしら?」
使用人の女性が訪ねた。
「はい」
「ゼリア様のお弟子さんなのよね?」
「はい・・・」
こんな会話をしている間に、屋敷の一室についた。 [メイド室]と書かれたプレートが、ドアに貼られていた。
「さ、入って」
そう言われて、リラは中に入った。
「お、お邪魔します・・・」
中に入ると、5人のメイド達が待ってましたとばかりにリラを取り囲んだ。
「こんにちは!」
「綺麗な子ねぇ・・・・」
何故か、リラは彼女たちの着せ替え人形になってしまった。
「あ、あの・・・」
彼女らとお揃いのメイド服を着せられたり、まるで童話に出てくるお姫様のようなドレスを着せられたり、かと思えばお芝居で着るような村娘のような服を着せられたり・・・
「そろそろやめてください!!」
リラは基本怒らない性格なのだが、あまりのしつこさにとうとう怒鳴った。不機嫌そうに自分の服に着替えると、メイド室を出て行った。
~ケイside~
「・・・で、わざわざ訪ねてくるなんてどうしたんだい?」
ケイは真っ直ぐゼリアを見つめている。まるでゼリアの心の底を暴こうとするように、ゼリアの黒い瞳を見つめているのだ。
「そんなのわかっているだろ?私の旅の目的くらい・・・」
そう言ってゼリアは笑ってみせたが、目が笑っていない。ケイとゼリアは昔からの親友だ、この他人ではわからないような表情までも読み取れる。
「[エデンの聖典]・・・これの情報だろ?」
[エデンの聖典]・・・それは、遥か昔に世界各地に出現した聖書の呼び名だ。かつて、この書物の持つ不思議な魔力を求めた人間達によって争いが絶えなかった為、[禁書]として扱われている書物だ。
ゼリアは、この禁書を求めて世界中を旅しているのだ。
「あぁ・・・もちろんただで教えろとは言わない。それなりの報酬はやるつもりだ」
ケイもゼリアも理解している。これは、単なる友人同士の会話などではなく、客と商売人の取引である。
「わかったよ、僕は君のこと嫌いなわけじゃないし、教えないなんてそんな意地悪するつもりはないさ・・・[エデンの聖典]の一冊、[生の章]は・・・」
ガシャン!!バリバリ!!
『ああああぁぁぁぁぁぁ!!!!?』
何かが割る声と、少女の叫び声がした。ケイが立ち上がるよりも先に、ゼリアが声を上げた。
「リラ!?」
ゼリアは声のする方へ走っていった・・・