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おしごと

作者: 武ナガト

魔女っ子の話です。


魔法少女や魔女っ子はジャンルとしてなぜか惹かれます。


現実では受け付けませんが、二次元でロリはアリっぽい。

 あたし、マコ。10才! これでも魔女っ子なのよ。とおい魔法の国からお仕事をするためにこの世界へやってきたの。


 あたしのお仕事はね、あたしが持つ魔法の力でこの世界の人たちを幸せにしてあげることなんだ。この世界の人たちは魔法が使えないみたいだから、困ってる人がいたらあたしが魔法の力で助けてあげるの。


 あたしが持つ魔法はね、人を元気にする力……。元気にしてあげたい人を見つめながらあたしが魔法を心のなかでとなえると、その人は元気と自信がわいてきてがんばれるようになるんだ。すごい魔法でしょ? あたしいつかこの力でみんなを幸せにしてあげるの。


 この世界にはおもしろいものがたくさんあるね。そのなかでもあたしはテレビが大好き。


 テレビはね、この世界へきたばっかりのあたしにいろんなことを教えてくれるあたしの先生なの。テレビ先生によるとこの世界の人たちは株? とかいうものを気にしてお仕事してるんでしょ? いま好景気らしいね。



 マコだよ。小学校で国語のじゅぎょう中だよ。とおくのお席でクラスメイトの山田くんが作文を発表しようとしてるよ。


 だけどいま山田くんは気がはりすぎてとってもビクビクしてるんだ。作文用紙を持った手はプルプルふるえて山田くんはすぐにでも泣き出しそう。山田くんはなんども作文を読みはじめようとするんだけど、自信がないからかなかなか発表をはじめられないみたい。


 大丈夫よ山田くん。あたしが元気をあげる。


 あたしは山田くんへ向かって心のなかで元気が出る魔法をとなえた。早く元気になりますようにって。


 すると山田くんの丸まっていた背中はピンとのびて手のふるえもとまり、山田くんは元気よく作文の発表をはじめたよ。いまはハッキリと聞こえやすく大きな声で生き生きと作文を読み上げてる。うん、いい感じ。


 でもちょっとやりすぎたかな? 山田くんの変わりっぷりに先生がかなりおどろいてる。

 だ、大丈夫だよ。山田くんにはこのくらいがちょうどいいよね、きっと。



 今日も学校すっごく楽しかった! いま下校中なの。あたし、赤いランドセルって大好き!


 実はね、これからお仕事があるんだ。これから人を元気にしてあげるんだよ。その人はね、いつも公園のブランコに腰かけながら地面を見つめてるおじさん……。


 おじさんはかわいそうなお洋服を着てるんだよ。秋だからお外の風は冷たくなってきてるのに、布きれのようなボロボロのシャツ一枚と破れかけの古ぼけた長ズボンをはいてるの。


 それとおじさんはいつも悲しそうなの。「僕には才能がない。故郷へ帰りたい」って口ぐせのようにつぶやいてる。どうやらおじさんはお仕事がうまくいかないから落ちこんでるみたい。


 おじさんのうまくいかないお仕事はどんなものかっていうと実はよくわからないの。教えてくれたんだけどあたしにはチンプンカンプンだった。


 それでも、おじさんのお仕事は世界を変えられるようなすごいものらしいってことぐらいはわかったよ。そんな大きなお仕事をまかされてるのにうまくいかないからおじさんは元気がなくなって、いつもブランコから地面を見下ろしてるんだってさ。


 こんな感じで困ってるみたいだから、あたしはおじさんのために公園へ出かけて魔法をかけてあげてるんだ。お仕事は大切だから元気が出るように頭なでなでしながら魔法をかけてあげてるっ! あたしが頭をなでるのはね、元気が出る魔法だよっておじさんには教えてるの。といっても子どものお遊びだっておじさんは感じてるみたい。


 あ! 今日も公園におじさんがいた! 


 おじさんはあたしを見つけると笑ってくれた。そして公園の土をふみしめながら、あたしが立ってる、遊び道具がないところへ歩いてきてくれた。


 そのあと少しお話しをして、いつもどおりおじさんの頭をあたしはなでなでしてあげたの。早く元気になりますようにって。


 そのおかげかな? 最近おじさんは元気が出てきたみたい。お仕事がんばれるようになってきた。


 そんなわけでいまはお空に向かって両手をピンとのばしながら「えいや。えいや」ってさけんで、立ったり座ったりしてる。このじゅんび運動みたいな変わった動きがお仕事に重要らしいよ? 


 あたしが帰ろうとしたらおじさんはあたしにお礼を言ってくれた。もうすぐお仕事が成功しそうなんだって! 成功しそうなのはおじさんへ魔法をかけるあたしのおかげでもあるんだってさ。だから、あたしとってもいい気分。



 数日たったよ。

 今日も学校とっても楽しかった! おじさんのいる公園へ行こうっと。


 あ! おじさんだ。

 おじさんはあたしを見つけるとブランコから元気よく飛びおりて近くへ歩いてきてくれた。


 今日のおじさんは手に小さなラジオを持ってる。そのラジオからはピアノのきれいな音が聞こえるの。音楽、あたし大好き! それにしてもおじさんっていつもはなにも持ってないのに、今日はラジオ持ってるなんて珍しいな……。


 あたしはいつもどおりにおじさんの頭をなでなでしてあげようとしたよ。そしたらね、おじさんは「もう頭をなでなくていい」って断ってきたんだ。あたしびっくり!


 あたしが理由をたずねると「仕事が成功したから、魔法はもういらない」って教えてくれた。お仕事が成功したんだ。すごぉい。


 だから、おめでとう! ってあたしはパチパチしたの。そしたらおじさんは照れくさそうに笑ってくれた。


 そのあとおじさんとたくさんお話ししたよ。それによるとおじさんとは今日でお別れなんだって。おじさんは自分のお仕事が成功したから故郷へ帰るんだってさ。それだからあたしね、おじさんに質問してみたんだ。故郷はどこなの? って……。


 するとおじさんは「貧乏神(びんぼうがみ)の国だよ」って教えてくれた。


 そうだった。まえにもおじさんからあたし聞いてたんだった。


 貧乏神の国……。どこにあるんだろう。よくわかんない。そもそも貧乏神ってなんだろう。あたしってこの世界のことあまり知らないからなあ。


 あらためておじさんからここへきた理由やいままでのいきさつを教えてもらったよ。


 おじさんは貧乏神の国からお仕事でこの公園へやってきたの。どうやらこの公園はとっても仕事がしやすいところなんだって……。それなのになかなか仕事がうまくいかなくて、そのせいで元気をなくしてたみたい。


 やがてもうお仕事をやめて故郷へ帰ろうとおじさんは思いつめはじめたんだってさ。そんなときにあたしと出会ったんだよ。


 そのあとあたしの魔法で元気が出たからまたお仕事のじゅんび運動みたいな動きを再開したらしい。そして今日になってようやくお仕事が成功したみたい。よかったね。おじさん。


あ、おじさんがにぎってる小さなラジオからニュースが流れはじめた。


「株式市場の株価は全面安(ぜんめんやす)の展開のため市場では売り注文が殺到(さつとう)。大暴落の様相を――」


 たいへんだ。株が下がっちゃった。いままでは上がってばかりだったのに!


 このままじゃ困る人がたくさん出るかも! 人は困るとおじさんみたいに元気がなくなるから、もしこれからそんな人を見かけたらはげましてあげないと! 


 大丈夫! あたしがんばるからっ! 困ってる人が出てもあたしが元気をあげるから!


 それはそうと、おじさんは本当にいい笑顔。心からうれしそう。


 おじさんはその笑顔のままあたしの頭をなでてくれて、そのあと公園を出ていった。あたしも自分の家へ帰ろうっと。



 帰り道である川ぞいの道をてくてく歩いてると……あれ? 体育座りしてる女の人がいる。黒スーツを着た女の人がしょんぼりと原っぱでうなだれてる。お仕事で困ってる人かな?


 さっそく元気づける人を発見! この人すごくつかれてる。顔色もわるいし、本当に元気がない。

 元気がない人はあたしが救うんだ。だってそれがあたしのお仕事! 


 だからあたしはそのお姉さんに話しかけたの。


 お姉さん、もう大丈夫だよ。あたしが元気をあげるからね。お仕事がんばろうね。


 元気が出る魔法をかけるためにあたしはお姉さんの頭へ手をのせてじゅんび完了。あとは魔法をかけるだけ。


 そうそう、お姉さんと話してて気づいたんだけど、やっぱりこの世界はあたしの知らないことばかり……。今回のお姉さんの生まれた場所もあたしは知らない。


 どこにあるんだろうなあ。疫病神(やくびようがみ)の国って――……。


 あたしはそんなことを考えながら青白い顔色のお姉さんへ魔法をかけはじめる。


 そう、もちろん。

 早く元気になりますようにって(いの)りながら――。

もう少し物語を短くできたらいいのでしょうけど、現在の技量ではここらが限界です。


掌編は文字数を削ることが重要。

もっとシャープにいきたい。


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あしからずご了承ください。

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