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星を継ぐもの  作者: 朝霞
第一章 魑魅魍魎の晩餐
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第八話 全員集合

騎士達と主人公達全員集合

「だれ? あの人達」


 ユナはメア達と対峙する白い外套を着た男達を見て首を傾げた。


アクアが彼らの胸についてあるバッジを見つけて、自信なさそうに答える。


「う~ん。多分、王都から来た聖騎士じゃない? なんでこんな所にいるのかは、わからないけど」


 目を細めて、二人は両者の成り行きを見守っていた。しかし、少し離れているため両者の会話は聞き取れない。


だが、アクアは両者がいい雰囲気でないことを敏感に感じ取った。



 で? 私達はどのタイミングで、出て行けばいいのかな?



 アクアは困ったように、通ってきた道を振り返る。


そこには、広場の比ではないほどの狼が点々と倒れていた。わりと梃子摺ったな。



「参ったな~。私、あまり騎士とは関りたくないんだけど」


「ユナも〜……」


 二人は溜め息を吐くと広場へ視線を戻す。


広場では、メアが金髪の騎士を問い詰めているところだった。



多分、ソフィア関係のことだろうなあとユナは思った。


聖騎士のような彼らがこの時期にこんな田舎の方へ来る理由など一つしか思い当たらない。


なので、ユナは会話の内容を容易に推測することができた。


 しかし、そんな事情がわからないアクアは会話の内容どころか状況に全くついて行けず、困り果てていた。


とりあえず状況を把握しようと、二人の会話を聞こうとして、身を乗り出した。


そこで不意に身を強張らせる。


なんだ? この寒気がするようなプレッシャーは。



 ばっとメアから視線を移すと、真っ直ぐにこちらを見ている藍色の長い髪の騎士とバッチリ目が合った。



こんなに距離があるのに、ここに私達がいることに気づいているのか? 何者だ、あの人。



「……ユナ、気を付けて。気づかれている」

 

「わ、ほんとだ。強そうな人だね、あの騎士さん」


 のほほんとしたユナの言葉に頷きつつ、その騎士をもっとよく見ようと身を乗り出した。その瞬間。



「フギャッ!!?」


 滑る草に足を取られ、アクアは広場へと滑り落ちていった。


「えぇ〜!?」


伸ばした手が虚しく虚空を掴み、ユナは頭を抱えてその場にうずくまった。







「だから! なぜ、ソフィアをそんな危険なことに巻き込むんですか!」


「いや、それはね」


 詰め寄るメアの剣幕に押されるファウマは、ユエの様子がおかしいことに気がついた。


「ユエ、どうかしたのかい?」


「いや。こちらを観察している者がいたので」


 隣でそれを聞いたリュキアは、さっと身構えると小声で尋ねた。「どこ?」


 ユエは黙って指を指して示した。


 その時、彼の指差した木々から突然、何かが転がり落ちてきた。それは土埃を上げながら勢いよく地面に転がる。





「あいたた……」


 斜面を勢いよく滑り落ちたアクアは涙目になりながら、頭を摩った。タンコブが悪化したかもしれない。




 そんなことを思いながら呻く彼女をファウマ達はぽかんとしたように眺めた。



 女神が落ちてきたのかと思った。

 

 それが、ファウマの第一感想だった。大げさに聞こえるかもしれないが、それほどこの少女は美しかったのだ。


 腰まである銀色の美しい髪は、日の光を浴びてキラキラと輝く。


星が瞬くような輝きを宿す青い眼は見るものを魅了する。こんな美しい存在を彼は今までに見たことが無かった。




 しかし、当の本人は騎士たちが自分に見とれているなどとは夢にも思わず、目を細めて騎士達を見返した。


 なぜにこの人たちは、固まっている?


というかいきなり出てきてしまったけど、どう言い訳をしよう。



 うーんと悩む彼女をメア達が取り囲んだ。


「あーさん、遅い!」


「なんで、滑り落ちてきたの?」


「アクア、怪我はない? あと、ユナちゃんは?」


「また転んだのか?」


アクアは呆れたように目を細め、「いや、同時に喋られても答えられないからね?」と抗議した。




 騒ぐ五人の声で我に返ったファウマが不思議そうに聞く。


「き、君たちの知り合いかい?」





 アクアは騒ぐミユ達を制し、ファウマの方へ向き直ると恭しく礼をした。


「初めまして騎士様。この先のティルフォンに住む、アクアです。突然の無礼をお許しください」




 真面目なファウマは正式な騎士の礼で返し、自分と他の四人の名前を言った。


アクア以外の四人はユエの名を聞き、驚いたように目を見開く。



「なっ! ユエ・アルフォースって、あの!?」



 メアがあまりの驚きに思わす聞き返した。


ただ一人、意味がわからないアクアはキョトンとしたように彼女を見る。


「ん? 知っている人?」


「アクア、知らないの!?」


 ハルティアは驚いたように振り向く。アクアは益々首を傾げた。そんなに有名な人なのだろうか。


「知らない人の方が稀ってくらい超有名な人だよ」


 ミユが呆れたように目を細めた。





 ユエは特に気にした様子もなく木に寄りかかっていたが、彼の名前を知らない者を初めて見たレルネとカロンは目を丸くした。


「あいつの名前も案外、知られていないんだな」


「君よりは知られていると思うけどね」


 可笑しそうに肩を揺らすカロンにリュキアはさらりとひどいことを言った。


レルネはいつもの彼らしくない直球な毒舌に小さな違和感を覚え、小さく首を傾げた。


「リュキアさん。どうかしたんですか?」




 彼はさっきから呆然としたようにアクアを見続けたままだった。


両脇に下げられた手は爪が食い込むほど強く握りしめられ、小刻みに震えている。


「…… ……いや。なんでもない」


 心配そうなレルネにそっと微笑むが、視線はすぐにアクアへ戻された。


その目は少しだけ厳しい。





「ところで、君はいつまで隠れているつもりかな?」


 ユエはアクアが転がってきた斜面を見上げて、腕を組み直した。


 その言葉に反応したアクアが、しまったという顔をする。ユナのことを忘れたままだった!



 数秒後、アクアが落ちてきたところからユナが綺麗に降り立った。



「お初にお目にかかります、騎士様方。ティルフォンのユナ・カーティスです。すみません、出て行くタイミングがわからなかったので……」


 言いながら彼女は軽くアクアを睨んだ。睨まれた本人は申し訳なさそうに頭を下げる。



「ところで……。君たちは、ソフィア様の友人か何かかい?」


 とりあえず害はなさそうな少女達を見回し、ファウマは疑問を口にした。


ことの事情を知らないアクアは、ここでソフィアの名がでてきたことを不思議に思いながらも頷いた。


「はい。ソフィア・ラカリエール様は、私たちの友人ですが?」



 なるほど、ソフィア様の友人なら、今回の件を知っていても不思議ではないだろう。


ファウマは納得すると、不思議そうに見上げてくるアクアに優しく微笑んだ。


「血の匂いに釣られて、魔物が来るかもしれないから話は歩きながらでもいいかい?」


 

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