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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
第3章 心が通い合うのは
53/59

51.え? 引越し!?

「沙耶。街に家を用意したから、引っ越すぞ」


 クマ型害獣(ノーブル)を退治した事で、鍋パーティが城下街で開催され、私たちもそれを楽しんだりた。その時に街の人たちがとても温かくて、また街の情報も教えてもらったりした。

 そのおかげで、ネアさんやメイドさん達とも街に遊びに行くようになった、そんなある日。朝食を食べている時に、シュトレイから言われた事に、思わず呆然とした。


「え、家? 引越し?」

「そうだ」

「な、なんで?」

「城で生活していたいなら、それでもいいが?」

「そういう訳じゃないけど…でも、急にどうして?」

「色々理由もあるんだが…」


 そう言って、シュトレイはその理由を話してくれた。

 まず、今は害獣の被害が少ない事と、出現しても神の剣だけで事足りる事。

 だから、シュトレイ本来の力である製作に力を入れる為には、街が近い方が助かる事。これは街の人の意見が聞き易いという理由もあるみたいだけど。

 それと、フェイさんの一家…というか、せめて奥さんと子供だけでも一緒に住まわせた方がいいという事もあるようで。確かにお城に小さな子を住まわせるのは、ちょっと大変だもんね。


 と、いう事でお引越しとなりました。荷物は無いし、クローゼットにあった大量の洋服は…シュトレイが力でなんとかした、らしい。

 あとは中央国に行った時に買った家具位で。




「……ここに、住むの?」


 馬車から降りて、目の前にそびえる建物に呆然とした。いや、フェイさんのご実家よりは小さいよ!? 庭とかもあんなに広くはないよ!?

 でも、家の玄関まで野球のグラウンド位の庭園があるし…家は二階建てらしいけど、高さは四階建て位あるんじゃなかろうか。地下もあるって言うんだから驚きだ。

 地下は使用人が生活する部屋があったり、食料などの貯蔵庫になっていたりするみたいで、貴族の屋敷はこういう作りが一般的なのだそうで。


「奥様、こちらはある郊外の領主の別宅でした。城に用がある時に屋敷として利用するのですが、別の場所に新たに作ったそうで、こちらは必要なくなったそうで」

「ほ、ほんとに?」

「えぇ。気になるようでしたら仲介者を呼びましょうか?」


 フェイさんに説明されて思ったのは、闘神様の為にお布施…という考えだ。けれど、仲介者まで呼んで問いただすのも、失礼かと思って、促されるままに玄関を入る。


「おかえりなさいませ。闘神様、奥様」


 メイドさんも、ネアさんも先に到着していたのか、玄関で出迎えられてびっくりした。フェイさんの奥さんのラビーさんにイシス君もすでに生活していたらしく、一緒に出迎えてくれた。

 そしてこの屋敷にはサロンがあるらしく、そちらへと案内され、すぐにお茶が出された。


「一息ついてから、屋敷を見て回ろうか。全てフェイとネアに任せていたから、俺もよくわからないんだ」

「そうなんだ…でも、いつの間に?」

「用意は、パレードから戻ってすぐに始めた。沙耶が、街で暮らしてみたいと言ったからな」


 流石に農村は遠いから無理だった。そう言うけれど、こうしてちゃんと実現させてくれるとは思ってなかった。お城で暮らすのとあまり変わり映えしない屋敷だけど、街に近いのはうれしい。


「あれ、でも…今朝言ってた理由…」

「別荘、というには城に近いが、時々泊まりに来るのも良いかと思ってな。城だと出来る事が限られるだろう?」


 確かに、料理はコックがちゃんと作ってくれてるから、自分で作るなんて言うのも悪いしね。


「沙耶がしたいなら、料理も菜園も、好きなだけやるといい。扱いが分からない物は、ネアや侍女なら分かるだろう」

「うん。あ、でもこの世界の食材とか、植物とかまだ分からないからそこから教えてもらわないと」

「そうだな」


 何度か街で食材とかスパイスを見たけど、まだよく分からない。やっぱり自分で使ってみないと。いくつか、日本で食べた物と似てる食材はあったけどね。

 お花屋さんは、たまに切花を買ってきて部屋に飾ったりする位だったし。変わった野菜とかあるから、家庭菜園とかやってみたい。


 これからやってみたい事を考えていると、サロンのドアがノックされた。そこから来たのは…


「あれ…」

「闘神様、奥様、こちらで見習いとして雇っていただきました。ありがとうございます」


 ミンファちゃんのお母さんと、おばあさんだ。涙を溜めた目で、深く頭を下げている。どうしたものかと困惑していて気がついたのは、メイドさんと同じ服を着ているという事。見習いって、メイドさんのだろうか?


「シュトレイ?」

「住み込みで働くならちょうどいいだろう? この地区は貴族が多いからな…治安がいい。託宣の巫女の親族をあのような場所に住まわせておくのは、問題だ」

「そうなんだ。でも…他の巫女と差別じゃない? 大丈夫?」

「あの二人は貴族だぞ。爵位はそれほどでもないが…いや、あの処罰で爵位が上がったかな。まぁ、だから問題ない」


 確かにあの場所じゃあ、ミンファちゃんがお家に帰るのも危ないし、この二人も仕事に就けるし住み込みなら生活に困らない、のか。

 けれど、差別になってしまうのではと懸念したけれど、貴族だと分かってほっとした。それでも闘神の傍に仕える事は名誉だろうし、差別にはなっちゃうだろうけど。

 シュトレイは永属させるつもりはないらしく、他でも働けるようになれば解雇するつもりらしい。同じ様に、あの地域の人を自立出来る様に、他にも考えているとか。


「分からない事だらけで、迷惑かけるかもしれませんが…よろしくお願いします」

「いえ、とんでもない! 精一杯お仕え致しますっ!」


 名前を紹介されて、声を掛けたけれど…こんな事いわれて、すごく恐縮してしまった。

 日本ではこんな事なかったしね。ネアさんとかで多少は慣れてきてるけど、やっぱり根は一般人だし。


 お茶を飲み終えると、フェイさんが部屋に案内してくれた。シュトレイと私、両方に部屋があるらしく、それぞれ案内されたけど…


「なんで寝室は一つなのよ」

「当然だろう? それに、城でもそうだったし、今更だ」

「う…それは、そうだけど」


 それぞれ部屋があるっていうんだから、その部屋にベッドがある物だと思うじゃない!? なのに部屋にベッドが無いと思ったら、寝室が一つだなんて。

 …まぁ、世の夫婦を考えれば、当たり前だろうけども。




 生活してみて、地理が分かって来た。この屋敷は城に近い場所に建っているのだけれど、実際は城壁に阻まれる為に、市場を通って城門まで行く事になる。緊急性がある場合、シュトレイは城壁を飛び越えちゃうからあっという間らしいけど。

 神様ずるい。と、思わず言ったら、私も同じ様にできるから、ずるいと言われるのは納得できないと言って…何故か罰として頬にキスするように強制された。なんでだ…

 そ、それはともかくとして、食料の買い出しは、私も一緒に付いて行ってる。食材の事も分かるし、値段の相場とかもね。時々カフェはもちろん、屋台で食べ歩きもしている。シュトレイも一緒に行くときもあるけど、なんだか色々やっているみたいで忙しいみたい。

 でも、今日は二人だけで…所謂デート、だ。


「ほら、沙耶」

「ありがとう。でもこれ、食べるのもったいないね」


 シュトレイに案内されて連れて行かれたのは、飴細工の店。この世界では、飴は子供向けという認識だそうで、親子連れや子供、もしくはお子さんがいるお家へのお土産としてのみなんだとか。

 シュトレイが、日本で大人も食べているのを見て驚いたそうで。

 固定概念って怖いわぁ。

 ネコの形で作られた物を選んだんだけど、こんなに可愛いしおいしいのに、なんでなんだろう。

 お店を出て歩きながら、店内を思い出す。お店の中でイラストから欲しい物を選んで、注文を受けてから作るのはいいとして…


「ねぇ、シュトレイ。これっていくつか作っておいて、透明な袋に入れて販売とかはしてないの?」


 そう、この棒付きの可愛い飴は、包装の類がないらしく、食べ歩き専用らしい。お店の宣伝にもなるだろうけど…持って帰って少しは飾っておきたい。

 それに、作る工程を見るのも楽しいけど、時間が掛かるし。


「透明な、という物はないな。…そもそもこの世界には、沙耶の世界にあったビニールという物がない」

「あ、そうなんだ。確かに買い物も布袋使ってるもんね」

「ビニールを作り出すことは可能だ。だが…あれは色々な問題が内包されているからな…」


 ぶつぶつと何か言ってるけれど…確かにビニールとか便利だけど、環境問題かな? この世界は空気綺麗だもんねぇ。


「沙耶。セロファンとかなら材料に問題はないんだが、ただ製造方法がな…科学が入ってしまうと…」

「そっかぁ。じゃあ、人形を入れるみたいにガラスは? 値段高くなっちゃうけど、貴族向けならいいんじゃない?」

「確かにな。ガラスは大地神なんだが、窓ガラスの応用になるとはいえ、一応断っておこう」


 窓ガラスとか、グラスがあるなら出来るだろうとおもって言ってみれば…ガラスは大地神の関係なのか。でも、出来そうでよかった~。

 そいえば、科学ってなんで駄目なのかな。



 そうそう、料理も引越しして次の日から始めた。皆お料理上手でうらやましい限りだ。

 包丁はシュトレイにより、自分でナイフを作れという指令の元、能力で作ったナイフで材料を切ってる。うん、すっごく切れ味いいけどねっ!

 調味料が分からないから、最初は渡された調味料を言われたように入れるという、なんとも拙い調理方法だったけど、最近では基本の調味料はなんとかマスターしたよ!


「今日はカルネスープか。…うん、美味しいよ」

「ほんと? よかった~…ふぅ」

「…どうした?」


 最近、落ち着いてきた事もあるのか、それとも料理をするようになったからなのか…やっぱり馴染みの味が恋しい。美味しいと言って貰えて嬉しいんだけど、思わず零したため息をシュトレイに気づかれてしまった。

 このカルネスープ、材料だけ見ると豚汁なんだよね。だから余計懐かしくて。

 中央国では醤油味の焼き鳥があったけど、城下町にはないし。


「ちょっと、味噌と醤油が欲しくなっちゃって」


 そう言うとシュトレイは、困った様な、そんな顔をした。


「すまない。すっかり忘れてた。今は少し立て込んでいるから…もう少ししたら、醤油と味噌を手に入れに行こう」

「ほんと!? ありがとう! 絶対だからね!」


 思わずシュトレイの腕を掴んで、そう言ってしまったけれど、シュトレイに頭を撫でられながら、嬉しそうな笑顔を向けられて、顔から火が出てしまった。


誤字脱字、指摘や感想等お気軽にどうぞ


ちなみにこのお屋敷は、処罰した貴族の物でした♪

フェイさんがさらりと嘘ついてます。(ゝω・) テヘペロ 闘神様もわかっててスルーしてます。知らなくてもいい情報ですしね。

爵位の変化とかでそういう空き屋敷へ引っ越した貴族も他にもいますよ。


うーん、それにしても糖度が足りない

…面白さも足りない。←致命的だorz

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