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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
第3章 心が通い合うのは
50/59

48、ようやく色々と学習できる環境が整いました

 パーティが終わった次の日。緊張と、一日中外に出ているなんて久しぶりの事が三日も続いたせいか、遅めの朝食になってしまった。


「やる事も終えたし、ようやく落ち着いたな」

「え? そう、なの?」

「ひとまずはな。やらないといけない行事は終わった。だから、今日からいろいろ勉強も出来るが…まず何をしようか?」


 朝食を取りながら、シュトレイに聞かれた。まず教義を知りたいかな。


「やっぱり教義を読みたい」

「ふむ。文字も読めるし、それも良さそうだな。フェイ、頼む」

「かしこまりました」

「…俺としては、武器の扱いを覚えて欲しい所だがな」


 うーん、武器、かぁ。扱いって事は攻撃とかそう言う事だよね。でも、どっちかっていうと…


「私は、その…前にシュトレイが覚えろって言ってた、防御の方がいい。…まだ恐いけど…」

「そうか。なんにせよ、やる気になったのならいい」


 シュトレイは、ふわりと本当にうれしそうな笑顔で言う。その笑顔を見てしまって、思わずかぁっと顔が熱くなってしまう。

 でも、よかった。あの時、駄々をこねて嫌がったから…なんであの時素直に覚えようとしなかったのかなんて言われなくて。



 食事を終えダイニングへと移動し、教義の勉強となったのだけど…フェイさんがどこかへ行ってしまった。

 五分程で戻って来たフェイさんの手にある本。


「それ…」

「はい、一般的に出回っている教義です。どうぞ」

「ありがとうございます」

「そして…こちらが、レヴァン直系者のみが見る事が出来る、原本となります」

「…え?」


 渡された本は、ハードカバーの小説の様な大きさと厚みの物だった。でも、フェイさんが原本と言った物は―――薄く、本と同じ大きさの一枚の金属だった。色からしてオフィーリスだろうけど…


「えっと…これが、原本?」

「はい。こちらを利用して、欲しい情報を念じる事で、ここへと表示されます」


 そう言って出されたのは、フェイさんが綴る時に使う、金属の棒で。呆然としていると、フェイさんが苦笑を零して、実際にやってみてくれた。

 金属の板の右端中央に、僅かなくぼみがあって、そこに棒を押し当てた状態で念じるらしいんだけど…文字が浮かび上がった!?


「え、うそ…」

「量が多い物もありますので、その場合は次へと念じると次のページへと変わりますし、最初からピンポイントで念じる事で、その一文だけ表示する事も出来ます。そして、この文字は、棒を離してしまうと消えます」

「わっ…ほんとだ。すごい、これすごい! あ、でも、どうして離すと消えちゃうの?」

「それは、沙耶の国で言う所のセキュリティの為だ。消す為に何かしなければならないとなると、それを行わなければ表示されたままになる。表示させたままレヴァンが死んだら困るだろう?」


 なるほど。ページの移動とか、新しく知りたいページを開く事は出来ないかもしれないけど…重要な所を表示させたまま固定されたら…確かに困る。

 それにしても、表示される文字の色が綺麗な青色だ。綺麗という理由もあるんだけど…このシステム凄い! 私達の世界よりもすごい技術だと思うんだけど!?


「てっきり原本も、こういう本みたいな物だと思ってたのに」

「流石に、原初の民はこういう記録媒体を持っていなかったし、また神も与えなかった。そして未だ劣化する物だ。その度に書き直したり写し変えたりしていては、間違いが起こるだろう? それに戦火による消失もあるからな。持ち運びしやすく、また何かあっても失われる事がないように創った」

「えぇ。それに、もし万が一レヴァン家が絶えて、この神器も消失してしまっても…闘神様の手に戻る様になっています。だからと言って、レヴァン家が絶えてしまって良い訳ではないですが」


 確かに絶えないほうがいい。でも、そっか。シュトレイって千年眠ってる訳だし、その間に人間がどうなるのか分からないもんね。フェイさんが、昔はレヴァン家が色んな街へ行って、口頭で教義を教えていたみたいで、それを聞いて大変だっただろうなぁと同情してしまった。


「まずは、こちらの教義を使われるといいかと思います。原本には、一般の人に知られては困る事が書かれていますし、分けられていないのです。その為、秘されている物なのかの判断がつかなくなってしまいますから」

「そ、それは…困ります、ね」

「教義の事を俺達以外と話さないならば、俺は構わんがな」

「…闘神様…」

「沙耶を異界から得たんだ。全く知らなかったとしても、なんらおかしくはないだろう?」

「シュトレイ、あの、いいの。まずはこっちで勉強するわ。原本の方は…ずっと棒を押さえておくの大変そうだし」


 二人が言い合いを始めそうで、慌ててそう言うと、フェイさんは毒気を抜かれたような…へんな顔された。シュトレイは噴出して笑ってるし。


「ちょっと、シュトレイ?」

「くくっ…いや、ごめん、そう言われるとは思わなかった。沙耶の好きにするがいい」


 ぽんぽんと頭を撫でられて、シュトレイはそう言うけど…まだ笑ってる。むぅ…


「では、俺も少し出てくるか。ネアはいるか?」

「はい。侍女と一緒にいるか、食卓にいるかと思います」

「沙耶、分からない事があったら、ネアに聞くといい。俺が必要なら、呼んでくれていいしな」

「え? 呼ぶって、どうやって?」

「名前を呼ぶだけでいい。沙耶の声で呼ばれれば、どんなに離れていても聞こえる」


 どういう仕組みだと聞けば、どうやら中央国に行く前に埋めた、あのナイフがそういう役割があるのだとか。

 …そういえば、あのナイフから、シュトレイが出て来た…けど、まさかまた出てくるわけじゃないよね?


 シュトレイがフェイさんを伴って出て行くと、少ししてネアさんが来てくれたけど…


「これ、読んでる間、ネアさん…きっと暇になっちゃうと思うんですけど」

「…そう、ですね。もしお許しいただけるなら、刺繍させていただいてもいいでしょうか」

「はい、かまいませんよ。でも、刺繍かぁ…教義も気になるけど、それも気になる…」

「時々息抜きになさるのも、いいと思いますよ」


 なるほど、息抜きかぁ。上手い事言うなぁ。

 そんなこんなで、私は教義を読んで、ネアさんが刺繍、時々私も刺繍という、今日一日のメニューが出来上がった。






「闘神様。声が聞こえる、とは今までなかったはずでは」

「沙耶だけだ。だから綴る必要はない」

「それは、適応率ではなく、奥様だからという事ですか」

「そうだ」


 闘神様の思考を綴る事。それが、私―――レヴァン家当主に課された使命だ。なのに、この私にさえ秘されている事が多い気がする。闘神様だけが知っていればいい事なのだろうが、その事柄がどのように我々シュトラータの国民に影響するのか、判断できない。

 今代の神の器は、ただでさえ異界から召されるという、前代未聞な事象であるというのに、これでは先の代へ必要な情報を渡す事が出来るのだろうか。

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