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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
第3章 心が通い合うのは
48/59

46、ぶっつけ本番に近い式典

「あーもう、どきどきする…」


 そう、本日お披露目パーティ当日だ。朝から化粧にドレスにアクセサリーと、ドレスルームで大忙しだった。まぁ、ドレスとアクセサリーはシュトレイが一瞬で作るから、そうでもないんだけど。

 このパーティは一般市民も城に入場可能で、この国全体で行うというような体裁になっている。城内の開放エリアと、街中の一部がその会場という事だ。だから、まぁ…街中にも行く必要があるらしい。

 あと、こういう風に大掛かりなパーティだから、3日間開催されて、ダンスは最終日になるらしい。嫌な事はさっさと終わらせたいのに。


 さて、今何処にいるのかと言うと…お城の謁見の間という場所の、舞台袖と言えば良いだろうか。玉座に直通のドアの前で、出番を待ってる状態だ。なんでも、まず式典があるとかで、玉座に2人で座ってシュトレイが決まり文句を言うらしいんだけど…ただ微笑んでいれば良いって言われてもね!?




「沙耶。さーやー?」

「はっ!?」


 目の前にいるシュトレイにひらひらと手を振られて呼びかけられていた。いけない、どうやら余りのすごさに、玉座から下がってから魂飛ばしてたみたい…

 だって、玉座についてみれば、人がたくさんいてみんな膝を突いて頭を下げてるんだもん…! その中に王様とか皇子もいて、みんな綺麗に統一された正装してさ!

 多分あそこにいた人たちって、役職の人だよね。なんか本当に神様扱いなんだなぁと、それらの遣り取りをみて思ったよ。ある意味、今になってようやくそれっぽい事してもらえたという事なんだけど。


「これからミンファを連れて行くんだろう? しっかりしろ」

「あ、うん。ごめんね、もう大丈夫。なんかすごかったから…」


 私なにかヘマしてないといいんだけど…心配になってシュトレイに聞けば、大丈夫だとお墨付きをもらえてほっとした。

 服装を変えるからと、一度ドレスルームへと戻るとフェイさんがいた。


「フェイ、来てるか?」

「はい。ただ、その前に闘神様にお願いしたい事が」

「なんだ?」


 フェイさんが苦笑しながらシュトレイに言った事。それは、ミンファちゃんの家族…母親と祖母の二人に、この城に入る為にとフェイさんに頼んで、シュトレイが用意した服を贈ったそうなんだけど、こんな良い物は頂けない。と、綺麗ではあるけど普段着で来た様で。


「何処にいる?」

「予定されていたテーブルへ。侍女を数人就けております」

「では、ミンファは後にしよう。先に服を変えればいい」


 そういいながらも、私のドレスを変化させられた。先程は、これでもかというくらい華美な物だったけれど、今度のは…シックな物に。街中も歩くみたいだからこういう風にしたみたい。

 でも…シュトレイの格好がラフなシャツとズボンに。


「さっきの方がカッコいいのに」

「だが、あれで街中をうろうろするのもな」

「それは分かってるけど…詰襟とか軍服みたいでカッコいい」

「なら、飾りを省いた物にすればいいか? …どうだ?」


 ラフなシャツとズボンから一転して、詰襟の軍服になる。でも、上着、っていうのかな。詰襟の上着がコートのようになっていて、でもお腹の辺りで正面は切れてるんだよね。


「うん、カッコいいよ。でもなんでここ、長いの?」

「何でと言われるとな。少し崩した方がいいかと思って」


 それで崩した感じになってる、のかなぁ?ともかくとして…ミンファちゃんの家族の所へ、フェイさんに案内されて向かう。


 そのテーブルに座っていた二人の格好は、余り裕福ではない家庭であるなら、上等な格好かと思う出で立ちだった。メイドのイザベラさんとチェルシーさんがお茶の世話をしながら、リラックス出来る様に話をしていたようだけれど。


「っ、と、闘神様!」

「あぁ、そのままでいい。俺はお前達に礼を言わねばな。ありがとう、よくあの子を生かしていてくれた」

「そ、そんな…あの、あの…」


 母親と祖母の二人は、いきなり現れたシュトレイと私を見ると、慌てたように立ち上がった。シュトレイが制したけど…続けられた言葉にどうしたらいいのかと涙目になって、わたわたしてる。そりゃそうだよね、神様にいきなり頭下げられてお礼言われるなんて思わないよね。


「あの、シュトレイ。まず座ったら?」

「…そうだな」


 席に座れば、間を置かずにお茶が出された。ほんとよく出来たメイドさんなんだよ!


「あの、私、神の器の沙耶です。その…シュトレイが中に入って動かされていたとはいえ、いきなり押しかけてすみませんでした」

「えっ…入って?」

「奥様、それは言わない方がいいです」

「そ、そうなの? じゃあ忘れてください」


 言っちゃいけないのかぁ。慌ててそう言うと、ぽかーんとした顔をしてる二人。シュトレイは笑ってるし。むぅ。


「それより…服、気に入らなかったか?」

「い、いえっ…あの様な高価な物を頂く訳には」


 そう言った御祖母さんが、抱えていた袋をそっとシュトレイへと渡していた。


「高価も何も作っただけだからなぁ。まぁ、視界にいればどうにもできるが」


 シュトレイは、受け取ったその袋をそのまま消してしまい…一瞬後には、二人の格好が変わっていた。


「わぁ。綺麗…だけど、やりすぎ感がする」

「そうか? 沙耶を飾るより控えてるぞ」

「でもほら、普通こんなドレスなんて一生着る機会ないし」

「その割りに沙耶は平気そうだが」

「それは、ほら、夢見る乙女という事で…」

「子供って事か。なるほど、覚えておこう」


 言われた事に思わずぷうっとふくれっつらをしてしまう。だけど…正面の二人ががくがくしてるよ。


「ねぇ、ちょっと手加えてもいい?」

「構わないよ」

「失敗したら直してね」


 シュトレイって、普通の服装とか、余り分からないのか…それとも、程々という言葉を知らないのか。紺色のロングスカートのドレスなんだけど、生地がつるつるというか、光沢がある素材で、首元に豪華なレースがあしらわれてる。母親と祖母とで、多少の違いはあるけど、ザ・ドレスだ。

 生地を綿にして、えーと…ワンピースにすればいいかな。メイド服みたいに、生地の仕立てでバルーンになるようなスカートにして…


「うん、これでいいかな?」

「沙耶の成長は喜ぶべきだけど…その生地だと売れないだろう」

「いえ、十分売れます。闘神様はもとより、奥様が製作した物は市場に出ていませんから」

「え。なんかレア物扱いなの?」


 なんかとんでもない話が出てきたよ。なんだそのレア認定…ていうか、シュトレイは売ってしまう事前提でドレスを作ったという事? 確かに、どれくらいの値段になるか分からないけど、生活の足しにはなるよね。


「こ、こんな、頂けませんッ。下賎な者に、この様な…」

「俺に身分など関係ない。神である俺は、このシュトラータにある民全てを導くんだからな」


 あの下町はどうにかしないとな。そうシュトレイが言うと、二人は目を見開いて呆然としている。確かに、ミンファちゃんを迎えに行った時に見たあの景色は、恐かったけど…シュトレイはそれを改善しようと考えていたのか。

 でも、どう改善するんだろう。日本でも、そういう人はいたけど…支援とかしてたのかなぁ?


「フェイ、あの話をしておけ」

「はい」


 色々と考えていたら、シュトレイに手を取られてミンファちゃんのいる神殿へ向かう為に移動をする。うーん、あの2人は納得できたんだろうか。フェイさんに後を頼んでいたから、何かあるのかな?



 神殿に着くと、ミンファちゃんがそわそわした様子で待っていた。格好は、いつもの…巫女服だけど。


「ねぇ、シュトレイ、ミンファちゃんって巫女服じゃないとだめとか決まりあるの? ちょっとゴスロリにしたいんだけど」

「特に決まりはない。神を降ろす時には必要だがな」


 シュトレイの許可を貰ったので…ピンクのふりふりのゴスロリにした! 靴も厚底のピンク色に。


「あぁん、かわいい~~~」

「沙耶もそうしようか?」

「私がそういう格好しても、自分で見られないからいい」


 ミンファちゃんは自分の格好が変わった事に驚いて、服装を見下ろしたりしてる。ミンファちゃんまだ小さいから妖精さんみたい。そういえば、何歳なんだろう?

 と、そんな事を考えていると、何か変化した感じがした。…ちょっと! シュトレイ! 何勝手にゴスロリの格好にしてくれちゃってるのーーー! うぅ…色が黒だからそんなに悪目立ちはしないだろうけど…


 服装を戻す戻さない、で、喧々囂々と言い合いながら、ミンファちゃんを連れて、先ほどのテーブルへと行けば。


「ママ! おばあちゃん!」

「! ミンファ!」


 いいなぁ。家族。しっかりと抱き合って、母親は涙を流してるし。私も、会いたいな…


「シュトレイ、家族に会いたいよ」

「駄目」

「だって、ちゃんと挨拶もしてないんだよ」

「駄目」

「どうして…」


 なんで駄目なの? その理由は、以前に聞いたけど…シュトレイの手を離れるってどういう事なのか、説明してくれないから納得できないままだ。それを聞いてみると、シュトレイは困ったような表情をした。


「沙耶は元々あの世界の魂だ。あの世界の神に手助けしてもらう事で、強引にこちらへと移動させた。だから、沙耶の魂は今でもあの世界から影響を受けている。そんな状態であの世界に戻したら…戻せない事になるかもしれない」

「そう、なの?」

「だから、駄目だ。沙耶を手放す気はない」


 シュトレイの気持ちも分かるけど、でも…こうやって家族を見るたびに、会いたい気持ちが湧き出て来ちゃう。

 …諦めなきゃ、駄目なのかな。

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