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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
第3章 心が通い合うのは
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44、自分の浅はかさ

 ふ、と目が覚めると、薄暗い。それになんだか埃っぽいというか、土の香りがする。


「…あ」


 体を起こして、今いる場所に呆然とした。まるで山小屋、というか片付けられてない丸太小屋というか。


「ちっ…気がついたか」

「っ!」


 そう、だ。王様に使わされた兵が呼びに来て…あれ? でも…腕掴まれたのが気持ち悪いと思って、それからの記憶が、ない。

 声がしたのは、迎えに来た人じゃないけど、一応その人も含めて三人床に座っている。でも、一体何が?


「あの、ここは何処ですか?」

「! おい、どうすんだ。封じていて話せるなんて聞いたことねぇぞ」

「だとしても力は使えないんだ。問題ない」


 な、何だろう? 何を話しているの? ともかく、この人たちは一体なんなんだろう。王様に命じられて来たって言ってたけど、何で神の剣が来なかったのか。

 あれ…今ここにいる三人が着てる服…シュトラータの兵士が着ていた服じゃない!? でも、身分を隠す為っていう格好じゃない事は分かる。だって、お城でも、街でも、見た事がない格好だから。


「その、格好…」

「我等が王に会って頂きますよ。貴方は、あの闘神を呼ぶ餌になっていただく」

「えっ…!?」


 驚いて、そう言った…私を馬車から呼び出した人を見てしまう。

 シュトレイを呼ぶ、餌? もしかして、シュトラータの兵じゃないの!? だとすると、仕掛けてきた国の、兵? もしくは別に敵対している国? どちらにしても…私が馬車から、オフィーリスから出なければこんな事にはならなかったんだ。

 自分の浅はかさから、思わず俯いてしまう。


「そういえばよ、こんな噂話きいたことあるんだが」

「あ? なにがだ?」


 急に話し出したのは、今まで黙っていた三人のうち一人。何を言うのだろうかとその人を見れば、何故かその人がじっと私を見ていて。その視線が、恐い様な気持ち悪い様な視線でぞくりとする。

 私が見たからか。にやりと下卑た笑いをした。


「闘神ってよ、目覚めて三神に会うまでは、神の器に手出ししねぇって。だから目覚めると三神に会いに行くんだって」

「あーそれ、聞いた事ある! だが、俺が聞いたのは、三神に会わないと神の器の体が不完全で、能力的に不都合があるとかだったぜ」

「試してみようぜ。どうせ連絡来るまで暇だしよ」

「? あぁ、なるほど。確かに暇だし、どうせ勝つしな」


 言ってる事が全く理解出来ない。そんな理由で三神に会いに行った訳じゃないはずだ。能力に不都合って、それなら何故シュトレイがいろいろ作れというのか。上手く出来ない事を能力に不都合だというのなら、三神に会いに行く前に物を作らせる必要もないはずで。

 ふっと、薄暗いながらも僅かに明かりがあったのが、急に暗くなって驚いた。その原因は、傍に三人が立っているせいだ。


「な、なに?」

「くくっ…イイ体してるもんな。楽しませてもらうぜ」

「!? ―――嫌っ! 離して!」


 急に腕を掴まれて、私が今まで座っていたベッドへと押し付けられた。その手が気持ち悪くて、腕を振ってみるけど…強い力でおさえられていてびくともしない。

 びびっと、音がしてハッとした。胸元のドレス生地がナイフで裂かれていた。


「や…嫌…」

「大人しくしてれば気持ちよくさせてやるよ」


 噂話を持ち出した男が、裂いたドレスから手を差し込んで…胸に触られた。嫌だ…気持ち悪い…シュトレイにも、された事ないのに…


「しゅと、れい…」

『―――やっと呼んだな、沙耶』


 突然聞こえたその声に、その場の時が止まったかのよう。

 聞こえた声に、ほっとしたのも束の間…自身の身体、特に心臓のあたりが熱くなる。

 次の瞬間には、この旅行の前に胸へと突き立てられたナイフが空中に浮きあがったかと思ったら、それは人の形へと変わり…

 シュトレイが、現れた。


「え…しゅ、とれい?」

「だから言っただろう? 覚えておけと」


 シュトレイがそう言ったと思ったら、周りにいた男達は体を吹き飛ばされ、その胸をいきなり現れた剣に刺し貫かれていた。


「っ――――――!」

「…怖い?」


 思わず声にならない声を上げると、心配そうな表情をしてそっと頬を撫でられ、思わずシュトレイの胸に飛び込んでいた。


「……戻ろうか。フェイが心配している」


 そっと抱き上げられて、その小屋をでれば、まだ明るい。破かれたドレスは、別の物に変わっていた。


「シュトレイ、ありがと」


 そう言うと、ふわりと笑って、額にキスをされた。は、はずかしい…

 どうやら森の中の小屋だったみたいで、ゆっくりと森を移動している。シュトレイの腕に抱かれて、その温もりにほっとする。さっきまでの、気持ち悪さなんて消えていた。


 馬車まで戻れば、フェイさんが物凄い勢いで駆けてきてびっくりした。そしてお湯を用意してあるからと促されたけど。


「あの、シュトレイ。お願いが…」

「ん? どうした?」


 馬車に入って、お湯が張られた桶の前に降ろされた途端、恐くて声を掛けた。


「恐い、から…傍にいて?」

「…それは、見ていていいって事かな」

「あっ…ちがっ…だって、だ…って」

「あぁ、もう。ごめん、意地悪したな。そこに居るから、安心して入ればいい」


 そこ。と指したのは衝立だ。レース生地だけど、向こう側が見えない様になってる。ほっと息をつくと、くしゃりと頭を撫でられて、シュトレイはその衝立の向こうへと行ってしまった。

 身体をきれいにしよう。あんな男達に触られたままなのは、気持ち悪い。そう思って、ドレスを消そうとして…出来ない事に気がついた。


「あれ? なんで…」

「どうかした?」

「服が、消せないの」

「あぁ、言うの忘れてたな。今沙耶は能力を封じられてるから、前の様にするしかないな。服は俺が用意する」

「え? 封じられ…?」

「手がおろそかにならないなら、話すけど」


 そう言われて、わたわたとドレスを脱ぐ。背中のリボンを五つ解けば、あっという間に脱げる物だったから、すぐに脱げる。

 服を脱いで、大きい桶に体を入れる。腰湯みたいな物で、桶も大きくないから体育館座りになっちゃうんだけどね。もう一個の桶にもお湯があって、それにタオルをつけて身体を拭く。

 そうしながらシュトレイの話を聞いた。神の器にしか効かないらしいんだけど、神の器の力を封印して、延いては闘神―――シュトレイも封じる事も出来る物らしい。それは、神の力が発動する原理を理解されてしまったからなのだとか。

 神は、振るった力を神の器に一度プールさせて、それをまた引き出すというか、神の器から移動させて、永久的に力を振るう事が出来るんだとか。私の場合、その能力がいいらしくて、全く遅延なくできてるらしい。

 で、神の器が力を使えるというのは、神の力を自分に持って来る事で使えるのだとか。封じられたのはその…繋がり、っていうのかな。それとも受け皿? それを封じられたから、使えないっていう事らしい。


 あれ? そういえば、三神の神の器…ミネアさんとキャロルさんに聞いた時、そんな事一言も言ってなかったけど…あ。そっか、役割を聞いただけだから、こういう力の仕組みとかは別だよね。そう納得した所で、ふとした疑問が沸きあがった。


「でもこの封印って、いつか切れるの?」


 一通り身体を綺麗にして、シュトレイが用意してくれた服を着ながらそう聞けば。


「フェイが解ける。その封印の事は調べていたみたいでな」


 と、いう事で…お風呂が終わればその封印を解除する事に。フェイさんはいろいろと片づけが終わると、ソファでくつろいでいた私達の元へと来てくれたのだけれど…何故かシュトレイに抱き上げられて、ベッドへと横にされた。しかも、ドレスを変化させられて…布面積が少ない!


「シュトレイ!」

「ココ、触れる必要があるらしいから」

「!?」


 とんとん、と、シュトレイの指で指したのは、心臓と額で。


「奥様、申し訳ありません。闘神様が行えればいいのですが…封印の性質から、闘神様では解除できないのです。お体に触れる罪を、お許しください」


 フェイさんがそう言うと、シュトレイに額に掛かる前髪を押さえられ…フェイさんが指をナイフで傷つけた…!


「ふぇいさ…」

「気になさらないでください。失礼します」


 傷つけた指から零れる血で、額にするりと何かを書かれたけれど…いや、だ。気持ちが悪い! 思わず目をぎゅっと閉じてしまう。


「フェイ、防ぐぞ」

「お願いします」


 フェイさんに触れられて、気持ち悪いなんて言えない。歯を食いしばって我慢するけど、心臓の辺りに触れられて、寒気がする。

 だけど、急にふわりと唇に触れる物。その温もりで、身体が弛緩する。そろりと目を開ければ、その原因が分かった。シュトレイにキスされてたんだ。ただ触れるだけのキスだったけど…


「もう終わった。力も使える」

「…あ…しゅとれい…」

「まずその印を落とそう」


 そう言って、シュトレイの手に握られた濡れタオルで額と胸に書かれた物を拭われて。


「シュトレイ…ひっく…しゅ、と…」

「あぁ…何故泣く?」


 そんなの、わかんないよ。でも、シュトレイの手が離れると、凄く不安になる。

 ベッド横にいるシュトレイの胴に、ぎゅっとしがみつけば、困った様にしょうがないねと言われる。


「一回手を離そうか。そう、いい子だ」

「…ん…」


 胴にまわしていた手を離せば、シュトレイがベッドに入って来て、抱きしめてくれた。

 なんで、シュトレイに触られるのは、落ち着くんだろう。この温もりが、いいんだろう。フェイさんは、下心なんてない、というかきっと役目として封印をとかなきゃいけなかっただけなのに、なんで気持ち悪いと思ったのか。

 そう言えば、どうしてあの兵に腕を握られただけで気持ち悪いと思ったんだろう…どう、して…


「…しゅとれい…」

「ん?」

「……だい、て」

「うん? 今だっこしてるだろう?」

「違うの…えっち、して」


 恥ずかしくて、シュトレイの胸元に埋めたままそう言った。シュトレイにこうされても、落ち着くなら…そう言う事も、出来るんじゃないかって思ったから。

 それに―――嫌な男に、ああいう事をされる位なら…シュトレイと…


「沙耶。それは大変魅力的なお願いだけど、出来ない」

「っ…なんでっ…だって、私はシュトレイの奥さんでっ」

「そうだな。奥さんで、恋人で、俺の器だ」

「だったらっ! あ、やっ…みないでっ」


 横向きに腕枕されて横になっていたのに、仰向けにされて上から見下ろされた。顔みられたら、恥ずかしいのに!


「沙耶。どうしてそう思った?」

「どうしてって…いや、なの…シュトレイ以外の人に触られるのが…あんな男にされる位なら…」

「消去法で導いた答えで、抱きたくはないんだが?」

「っ…でも」


 シュトレイの言う事は、確かにそうかもしれない。シュトレイに対して失礼な事かもしれない。それでも。


「俺は、沙耶の心が欲しいんだ。体が欲しい訳じゃない」


 何故か、意識が遠のく。はっきりしない意識の中で、シュトレイのその言葉が聞こえたけれど、理解まで追いつく事無く、意識が落ちた。


誤字脱字、指摘や感想等お気軽にどうぞ


ちょっと迫ってみました。

闘神様の忍耐力ぱねぇ

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