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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
2章:目覚めて・・・
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38、中央国へ行く事になりました。

 ぐずぐずと悩んでいても、日々は過ぎて行くのだけれど。


「え? 中央国に?」

「ああ。一通りやる事は終えたし、何より三神にも挨拶に行かないとな」


 朝食を食べた後、ソファでお茶を飲んでまったりとしていると、シュトレイにそう言われた。

 確かに、巫女を通しては会ったけど、ちゃんと会った方がいいんだろうなぁ。それに、あの時はそんなに話せなかったし。


「本当だったら、沙耶が自活出来る様になってからの方が良かったが」

「え? 自活って?」

「一人でもちゃんと身を守れる様に、だな」


 身を守れる様にって、どういう事なのかと思っていたら、どうやら道中で危ない場所を通るのだとか。

 …どういう、”危ない場所”なのか教えてくれないのは、なんでなんだろう。地形的に危ないのか、治安が良くないのか、いろんな理由があると思うんだけど。


「それと、本当ならこの城でもパーティが行われる。貴族向けのお披露目という名目だがな。ただ、人員変えたばかりだし、うまく調整つかないみたいで、もう1、2ヶ月は掛かる。それを悠長に待っていられる状況じゃないから」

「そうなの? でも、確か三神が王様にも会わせたいとか言ってたよね? もしかして向こうの偉い人たちとも会うかも知れない?」

「そうなるな」

「それって、いいのかな? この国の王様とは会ったけど、偉い人とかにはまだ会ってないのに」

「問題ない。あちらに行くのは、『三神に会う為』であって、『王に会う為』ではないから。それに、三神を蔑ろに出来ないのは、その力を思えば、誰にでも分かる事だ」


 む、言われてみればそうだね。三神がこの世界では一番重要な神様だし。もし、偉い人を紹介されたとしても、不可抗力って事か。


「と、いう事で、今日中に身を守る術位は覚えてもらう」

「え…それって護身術みたいなもの!? 一日で覚えられる訳無いじゃない!」

「護身術と言えばそうだが、それほど難しくない。自分の周りにオフィーリスを張り巡らせればいい」


 言われた事に、以前シュトレイがそのような方法で身を守るから、攻撃が当たらないなんて言ってた事を思い出した。確かに当たらなければいいんだよね。


「だから、ちょっと外に出ようか。室内でもいいが、大きさを誤ると部屋を壊しかねないから」

「う、うん。…ん? 壊しかねない?」

「例えばこのテーブルの中央に、オフィーリスで作ったそれが現れたらどうなる?」


 示されたカフェテーブルに、金属の膜が現れた所を想像する。金属で、攻撃を防ぐんだから、通り抜けるなんて事はないよね、きっと。という事は…


「分断、される?」

「そうだ」

「え、じゃあ…その、人とかは…」

「もちろん、同じ事だ」

「っ…そんな、出来ない。人を巻き込むかもしれない方法なんて」


 周りの人を巻き込むかもしれない防御方法って、なんなの!?そんなのアリなの!?そう憤怒していると、シュトレイがくすくすと笑う。


「大丈夫。俺がついてる」

「どう大丈夫なのか分からないんだけど」

「そう、だな…」


 シュトレイは少し考えているのか、黙り込んでしまった。なんだろう、難しいことなのかな?そう思っていると、そっと耳元に、『これからいう事は秘密だよ?』と、囁かれて、ぞくりとしてしまった。


「くすくす…沙耶は、俺。俺は、沙耶。分かるか?」

「とんちしたい訳じゃなくて」

「そうじゃない。この世界での、存在としてそうであるという事だ」

「…どういう事?」

「言ったとおりの事だ」

「わかんないよ」


 教えてくれるのはいいけれど、私がわかるように教えて欲しいよ。

 結局分からなくて、そんな危険な護身術はやりたくないとゴネてみる事にした。


「危険な所を通るといっても、シュトレイが一緒にいるんでしょう? だったら問題ないじゃない」

「それはそうだが、覚えなければならない事だ。今やろうが、後でやろうが同じ事だろう?」

「……ヤだ」

「沙耶」

「…恐い、から嫌」


 シュトレイに呼ばれた声が、怒っているような感じがした。思わず横にあったクッションを抱き込んで顔を埋め、シュトレイの視線から逃げる。

 すると、深いため息をつくのが聞こえ、そっと頭を撫でられた。


「わかったよ。今は無理にさせないでおく。だけど、保険を」


 言われた事にどういう事だと、そろそろと視線を上げれば、ひょいっと抱き上げられていて。


「え? ちょ、どこに」

「この手も、あまりやりたくないし、見せたくもないんだが、しょうがない」


 苦笑を浮かべてそんな事を言うシュトレイだけど、どんどん移動して行く方向は、ベッドルーム!?


「ちょ、シュトレイ!?」

「沙耶に、迷子札を付けるだけだ」

「まいご、ふだ…?」


 いや、だから意味分からない! 迷子札を付けるってどういう事、ていうか、だからってなんでベッドに寝かされるの!? しかも肩を押さえられて、身体の上に跨るようにベッドへ乗り上げて来て。


「暴れるなよ。…手元が狂っても知らんぞ」

「っ―――な、な……な、に、を」


 真昼間、太陽の光が差し込んで、視界を遮る物もない状況だというのに、一瞬でドレスが消され―――裸にされた。

 驚いて、身体を隠そうとしたけれど、その胸元に付き立てられた小ぶりのナイフに、がちがちと体が震え、声が途切れてしまう。


「い、や」

「傷付ける訳じゃないから心配するな。大人しくしていろ。ああ、眼は瞑るな。しっかり見てろ」

「や、なに、するつも、り」

「いいから、黙って」


 シュトレイの手に握られたナイフは、銀色の中にミルクを零したような色をしていて、違和感がある。けれど、尖ったその先端が、きらりと光るのを見ると、身体が強張ってしまう。

 そんな心情をまるで気にしていない様に、ゆるゆるとシュトレイの左手が胸元を撫でる。その感触は、場所を探しているようにさまよい―――ある一点で止まった。心臓があるとされる場所。


「…ここか。恐くないからしっかり見ておけ」


 そんな事言われても、恐いに決まってる! 身体から一気に嫌な汗が噴出して、思考が追いつかない。

 だけど、トスン。と、軽やかな音を立てて、ナイフが突き立てられたかと思ったら、一瞬でそのナイフが消えた。


「…え?」

「―――うん、ちゃんと機能してるな。ほらここ、触れて、感じて」


 左手をシュトレイに握られて、さっきナイフを突き立てられた辺りに掌を押し付けられた。


「な、に?」

「ここに、あるだろう?」


 そう言われるけれど、先程からの恐怖と混乱で、うるさい位にドキドキと鳴る心臓。それ位しか、分からない。

 何を言っているの―――?


「知覚ではない。感じて」

「…ぁ…」


 なんだろう、これ。確かに、何かがあるのだと、わかる。


「あくまで保険。その時にきちんと機能するかどうかは分からない。いや、機能はするが…」

「その、機能ってどういう風になるの?」


 少し困ったような表情をして言い淀むシュトレイ。説明が難しいのかなと思って、そう聞いてみれば…少し考えて、ニヤリと笑う。


「ヒミツ」

「っ! 言えない様な変な機能なの?」

「いや、教えてしまっては、自己防衛する気なくなるんじゃないかと思って」

「ぅ…いや、そんな事、ないよ」

「そんな、いかにもバレたっていう様な顔して言われてもな?」


 くすくすと、本当に楽しそうに笑って言われ、何も言い返せない。

 確かにその通りですよ。だって、今まで自衛が必要な世界じゃなかったもん。せいぜい知らない人に付いて行くなとか、ネット犯罪に気をつけようとか、そんなものだったし。


「それより、いつ沙耶がこの状況に気がつくのか、そっちが気になるな」

「え?」


 そう言われて、はて? と、シュトレイを見てしまう。と、シュトレイの視線が、私の目ではなく、下の方…?


「っ!!! い、いやあ!!! ばかっ!」

「ふふふ…ほら、錯乱してる場合じゃないだろう?」


 あれからずっと、裸のままだったんだ! ていうか、触られた!

 しかも、手で身体を隠そうとしたのに、手首を取られて、ベッドに押さえつけられて。


「離してっ」

「まだまだだな? 力を使えばすぐだろうに」


 シュトレイにそう言われて、はっとした。そうだ、力で服を纏えばいいんだ。でも、何を?

 あーもう、取りあえずバスタオル!


「…それでなんで、バスタオルになるんだ」

「い、いいじゃない。咄嗟に思いつけなかったんだから」


 離して。と、言えば、シュトレイは苦笑して、手を離してくれる。ベッドに乗り上げていた身体も、ベッドサイドへと降り立っている。

 バスタオルを押さえて身体を隠しながら、なんとか上体を起こせば、シュトレイがベッドへと腰掛けた。


「沙耶。俺は、基本、物ならなんでも作ったり改良したりする事が可能だ。人体でさえ、だ。まぁ、人体に関しては、ない物は作れないがな」

「どういう事?」

「今はまだ知らなくていい。だから、沙耶。これから何でも欲しいと思った物は、自分で作れ。ただし、日本に居た頃の物に関しては、出来ない物や、作らない方がいい場合もあるが」


 服やアクセサリーは、どんな物でもいい。そう言われて、今の格好を何とかしてみよう。シフォンのワンピにキュロットで。


「…それは、許可しない」

「ふぇっ!? あ、ちょっと!」


 せっかく上手く出来たと思ったのに!

 ぼそりとシュトレイが言ったかと思ったら、あっという間にドレスに変えられていて。


「むぅ。なんで駄目なの!」

「生足出すのは駄目」

「じゃあレギンスとか、キュロットにタイツとかは?」

「…それならいい。だが、今日はこれにしておいてくれ」


 シュトレイはそう言うと立ち上がり、そのまま手を差し出してくる。その手を取って、ベッドから出れば、そのまま腰を抱かれてダイニングへと戻る事に。

 もう、こういうの、慣れないからほんっと恥ずかしい。

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