3、慟哭
託宣の巫女達に会うから、案内人が来るまで紅茶でも飲んで待ってて。そう言われ、まだポットに残っていた紅茶を飲んで待っていた。
それにしても、ほんとにシルバーポットって冷めにくいんだね。ティーコジーを被せているのもあるだろうけど、淹れたてっぽく湯気でてるし、びっくりだ。
あ、シュトレイは紅茶をカップに注いだら、入ってたら紅茶を楽しめないからって身体から出て行ってくれた。会話とか出来ないけど、傍にはいるらしい。
幽霊というか、守護霊というか、そんな感じだよね。
紅茶を飲み終わる頃、ドアがノックされると、すぐにシュトレイに乗っ取られた。
(うー…現地人とまったく交流ができないっ!)
「僕が起きたらいくらでもさせてあげる。だから、待ってて?」
そんな事を言って、シュトレイは入出の許可をだす。
まあ、このままでも名前とか顔は分かるけどさ。相手は神様に対しての対応してるから、人となりがわからない!
「失礼いたします、神の器様。私、託宣の巫女を擁する神殿統括責任者のロディ=マクスウェルと申します。」
「…神殿責任者が、これ、か。」
ぽつりと零れたシュトレイの声。ソファからドアまで離れているために、その男性―――ロディさんには聞こえなかったようで、跪いて頭を下げたままだ。
「託宣の巫女は何人いるの?」
「はい、現在十名です」
「そう、見てみたいから案内してもらえる?」
「えぇ、ぜひ。神の器様に来ていただければ闘神様もきっとお喜びになられます」
(えっ…この人、シュトレイが入ってるの、知らないの!?)
神の器様、だなんていうから驚いてそう言うが、なんだか華麗にスルーされ…
「すぐ行きますので、外でお待ちいただいても?」
「はい、お待ちしております」
失礼します。そう言って出て行く人。部屋から誰も居なくなると―――
「あのね、沙耶ちゃん。しばらく沙耶ちゃんのフリするから。問いに答えてあげられなくなるけど、ごめんね?」
(うん、それはいいけど…)
「うーん、神殿責任者の癖に、目が悪いな。いや、なんかいろいろ駄目そう…」
(目?)
「うん、見える人には見えるはずなんだけどね、神が降りてる人って。ただでさえ神の器の沙耶ちゃんに入ってるんだから、なんていうか、オーラ? そんなのが見えるはずだよ」
(なんか、それを聞いたらあの人、可愛そうになってきたよ)
「ちょっとなんかありそうな気がするなぁ。そんな事する為に起きる訳じゃないのにぃ」
なんだかいじけはじめた雰囲気に、思わず笑ってしまった。
(待たせてるんでしょ、早く行こう?)
「はぁ…」
シュトレイはそんなため息をついて、ようやくソファから立ち上がると、部屋のドアを開ける。
神殿は城から出て裏へと回った所にあった。城の神殿は役目だけ行っているとかであまり大きくないんだそうで。
ロディさんから、街にある神殿は街の住人が訪れるたに、かなり大きいのだと聞いた。建造物も立派で、一度見てみるといいと薦められもした。
まぁ、それに答えてるの、シュトレイなんだけどねっ!
でも、こんな説明をするという事は、私が何も知らない異世界人って事が分かってる訳で。なのにシュトレイが入ってる事がわからないって、変なの。
「こちらが神託の間です。こちらに全員集まっております」
そう言って、大きな、重厚なドアがゆっくりと開けられて行く。
完全に開き、前を見れば、両膝を突いて頭を垂れている人達。だけれど、なんだろうこの気持ち悪さ―――
「最悪」
(―――え?)
シュトレイがぽつりと零すと、くるりと元来た道を引き返して行く。背後であのロディさんが呼んでいるけれど、どんどんと歩いていってしまう。
(どうしたの?)
「いい。沙耶ちゃんが知る必要ない」
(…なにか、怒ってる? 辛い?)
そんな、硬い声で言うなんて。曲がりなりにも、自分の声だ。
どうしようもなくやるせない気持ちの時、親と、言い争った時。そんな時に、一人になると自分を呪った、声。
でも、シュトレイが知らなくていいと言うなら、教えてはくれないだろう。
だからといって、何もせずに居られないのだけれど。
(…ほんと、抱きしめてあげられないって、辛いね?)
「っ・・・沙耶、ちゃん…泣いても、いいかな」
(いいよ?)
「うん、ありがとう。―――飛ぶよ」
ひゅっ と、僅かに風を切る音が聞こえた。飛ぶってどういうことだろうと思った次の瞬間には…遥か上空にいた。
そう、剣に乗って。
下見ないでぇぇぇぇ!こわいぃぃぃ!
「ごめん、ね。誰も居ないとこ、思いつかな、くて…ふっ…く…」
ぼろぼろと涙が流れる感触がする。こんな状況なのに、そんな感触を感じるものなのかと思った。
けれど次いで発せられたのは―――大きな声。これ、は…叫び?こんなにも、苦しいの?
『泣いてるな』
『慟哭、というのじゃ、あれは』
『我等では手が出せぬ。故にひどくなった』
『かわいそうに。あの子は裏切られる事に慣れていない』
『なれど…あれなら別の道が生じよう』
『僥倖じゃな』
『僥倖だな』
「ごめんね」
(ううん。私は大丈夫。もう、平気?)
「…うん、やるべき事も、決まったし」
(教えては、くれないの?)
「知られたく、ないから」
(そっか。うん、分かった。聞かない)
そうは言っても、気になるんだけどね。でも、あんな風に泣くなんて…あれは泣くって言うより叫ぶ、だよね。
そんな事を考えていると、ペタペタと顔に触れている。
(何してるの?)
「盛大に泣いたからねぇ、顔大丈夫かなとおもって。沙耶ちゃんの身体なのに、ほんとごめんね」
(もういいってば~)
「うん、じゃあ戻るけど、せっかくだからスカイダイビングしながらもどろっか」
(え? ちょ、まっ! いやぁぁぁぁぁ)
ふ、と床が抜けるような感じがして、落下していく!
「あははははっ! 気持ちいいねぇ」
(目瞑って! こわいってば!)
「えーこんなに綺麗なのにぃ…ほら、飛んだりするのって面白いでしょ?」
くるくると回ってみたりするけど、スカイダイビング初心者にそんな余裕がある訳ないでしょ~~~!
そうこうしているうちに、もう目の前は地面! という所まで来た。頭が下だから、これじゃ確実に…
(死ぬ! 死ぬぅぅぅ!)
「大丈夫だよーっと」
地面と衝突する! と、思ったら、くるりと一回転して、重力を無視したようにふわりと着地していた。
(ふえっ?)
「だから大丈夫だっていったでしょーそ・れ・に! 風、感じた?」
(あ…そう、いえば)
上空に居た時も、そして落ちている時も、無風だった事に今頃気がつくなんて。
(でも、どうして?)
城の入り口近くに降りていたようで、部屋へと向かう為に剣に乗って移動し始めたシュトレイにそう訊ねる。
「んー上空だとねぇ、何もしないで吹きっ曝しだと、立ってられないし。それにドレスだしねぇ。捲くれても嫌でしょ」
(う、それはそうだけど。どうやってそんな事が出来るのか知りたいんだけど)
「自分の周りに透明な膜を張っただけだよ」
(透明な膜?)
「うん、僕が起きるまで待って。多分、その時の変化で見えるようになるから」
(え? どういうこと?)
「くすくす…楽しみにしていて? きっと、世界が変わるよ…」
くすくすと未だ笑っているけれど。世界が変わるってなんだろう。シュトレイが起きると、何が変化するんだろう。
なんでこうも、秘密が多いの。そういじけていると、まだ笑っているシュトレイが悪びれた風もなく、
「だって、今の沙耶ちゃんに説明しても、混乱するだけだよ。大丈夫、ちゃんと分かるようになるし、出来るようになるから」
そんな風に言われて、もっといじけてしまうのはしょうがないと思う。うん。
部屋へと戻りながら、ふと気がついたこと。
よくよく見れば、食卓というかリビングがあって、そこを突っ切ると皇帝とかと対面した部屋に入るようになっていた。
何で気がついたかというと、リビングにはメイドさんがいて、そのメイドさんに昼食の用意を頼んでいたから。
どういう構造になってるのやら。というか、リビング突っ切ってあの部屋に行くのってどうなんだろう。
普通客間ってお客さんを通す訳だから、食事する場所って通さないと思うんだけどなぁ?
(ねぇ、この部屋って、客間?)
部屋に戻ってきてなにやら机で書き物を始めたシュトレイに聞けば。
「客間は別にあるよ。ここは、うーん、ダイニングというか、休憩室というか、サロンっていうか」
(でも、ここに皇帝来たよね? いいの? 皇帝を客間に通さなくて)
「皇帝…ああ、ファルの事? ファルは子孫だし、客っていう括りじゃないよねぇ」
ああ、なるほど。子孫、て事は、家族や親戚みたいなものだから、客間じゃなくても問題ないのか。
皇帝って偉い人だから、こうしなきゃいけないっていう先入観があるんだよね。それらしく思えないのでうっかり忘れちゃうけど、皇帝より偉い、神様だったっけ。
…皇帝から見て、私の扱いがどの程度なのかわからないんだけども。
そんな事を考えていたけれど、ふと気がついた事。
(何書いてるの?)
「沙耶ちゃんはこっちの文字読めないよね?」
(う…正直、絵文字にしか見えません)
そう、さっきからシュトレイは紙にサラサラと、一見絵文字にしか見えない物を書いていた。
正直に答えると、くすくすと笑って楽しそうだ。
「沙耶ちゃんに知られたくない事だからぁ、わざと文章にしているんですぅ」
ちょっとふざけたような声で言うけれど。
(…さっきの、事?)
「……そうだね」
(そっか。あ! そういえば、私って文字の勉強しないといけないの!? 英語だって苦手なのに!!)
さっきの事なら、しつこく聞いた所で答えてくれる訳がない。なので、強引に気になった事を聞けば。
「言語だけならねぇ、あっちの神様にお願いして融通してもらえたけど、こればっかりは覚えてもらわないとねぇ」
(うぐっ…)
「知らないままでもいいよ? 僕が読んであげるし、代筆もしてあげるよ」
(そう言う訳には! 日本語を不自由なく使えたから、英語は出来なくてもいいやって開き直れたけど)
「文字は難しくないよ。あっちの『あいうえお』と同じような物だから。ただ、物の名前が違うものもあるんだよね。多分そっちに混乱すると思うよ」
そう言って、一通りきょろきょろと見回す。意外とないな、なんてぶつぶつ言ってるけど。
「これはシュリ。あとは宝石とか金属なんかも違うねぇ」
紙を指した後でそう言う。うう…確かに、物の名前なんかは、その土地で変わったりする訳だから分からないでもないけど、これは大変だ。
「文字については、そうだねぇ、子供に教える方法でやったほうがいいんだろうけど、どうしようか」
(勉強とかってどうしてるの? 学校があったり、個別で先生に教えてもらったりするの?)
「そこらへんは分からないねぇ。ふむ、ついでにそれもお願いしておこうか」
シュトレイはそう言って、さらさらと書き足して。
机の引き出しから封筒と何か銀色の固まりを取り出すと、紙を折りたたみ封筒へ。
そして、何をどうやったか、銀色の塊が封筒の封の所に溺れ落ちる。
それが、何か意思を持ったかのように蠢くと…盾に剣が2本クロスしたような模様になっている。
(盾、と、剣?)
「うん、僕だけの印。普通は蝋でやるんだけどねぇ」
(勝手になったよね? 普通はこう、指輪とかで形作るよね?)
「そうだねぇ、でも僕神様だし?」
うっ…こういう所でも神様補正か!
「ちなみにぃ、これ、偽造しようにも大変なんだよー」
(え? ていうか偽造しようとする人間がいるとは思えないけど)
「あはは、バレたら死ぬから確かにそうなんだけどねぇ、ほら、これ、オフィーリスていう金属なんだけどね。加工が難しいし、先に加工してこうやって貼り付けようとしても、無理なんだよねぇ」
(なんで?)
「沙耶ちゃんの世界でいう糊でくっつけてる訳じゃないから、糊で付けてれば僕がやったものじゃないって分かるし、かといってこの金属、一万度で熱しないと紙にくっつくほど柔らかくならないんだよねぇ。ね、そんな温度でくっつけて、焦げない紙って、ある?」
(ないと、オモイマス)
なんだ一万度って! 焦げるどころか燃える!
「後もう一つ。封を開ける為にこれを外せば、消えるんだよね」
(……は?)
「ちょっとまってね。実際やったほうが早いよねぇ」
引き出しから空の封筒を取り出して、さっきと同じように、盾と剣の模様が作られる。
「身体から抜けるから、開けてみて?」
言うが早いか、あっという間に出て行ってしまう。突然の自分の身体の感覚に驚いてしまう。
シュトレイが入ってるのが当たり前になって来てる…
「うぅ…自分の身体じゃないみたい…」
ぼやいてしまってから、シュトレイに聞かれたらまずかったかもと思ったけれど、後の祭りだ。
ああ、悪い方に捉えられなければいいんだけど。シュトレイが入っているのが嫌な訳じゃなくて、馴染みすぎてるって事なんだけど。
「と、ともかく、これを開けばいいのよね…」
恐る恐る封の隙間に指を入れて、ベロを引っ張って見ると、金属で止まってるとは思えない程するりと取れた。
その瞬間に、その金属がきらきらと粒の様になって消えて行ってしまう。
「…きれい…」
光の粒子が飛んでるみたいに見えて、すごく幻想的だった。見えたのはほんの数秒だけれど。
「今のなに? すごいきれい!」
見えないけれど、傍にいるのだろうと思いそう言えば、シュトレイが入っていた。
「くすくす…あの粒子、気に入る子なんて初めてだよ。何って聞かれると説明が難しいんだけど、まぁ、これで偽造不可能ってわかったね?」
それに返事を返すと、ベルを使ってメイドさんを呼んで、その手紙を皇帝に渡すように頼んでいる。
「あと、姿見の鏡の場所は変わってない?」
「変わっていないと思いますが、私どもで確認したのは寝室傍のドレスルームにございました」
「変わってないみたいだね、ありがとう。じゃあその手紙よろしくねぇ」
「もしメイクや髪結いが必要でしたら…」
「大丈夫。いろいろ試してみたいだけだから~」
シュトレイはひらひらと手を振ると、メイドさんを振り切って移動してしまう。
寝室を通って部屋に入ると、大きな鏡となにやら両開きドアが壁にびっしりと見える。
シュトレイは次々とそれを開けているが、どうやらクローゼットみたいだけれど、中には何も入っていない。
いや、一箇所だけ両開きドアの中に引き出しがあり、宝石や指輪などが何箇所か入っていた。
「やっぱりないか。まぁいつも僕が作ってるからなぁ」
ぶつぶつと言いながら、宝石が入ってる引き出しを取り出して、傍にある大きな机へと引き出しを並べて行く。
箱に入ってるのもあるけれど、それらも開けている。入っていたのはネックレスと耳飾り。
それにしてもすごいなぁ…こんなにたくさんの宝石なんて、お店でしか見た事ないよ。あ、でもこんな大きさのものはなかったかな。
(何を、するの?)
「うん、沙耶ちゃんに合う服とアクセサリーを作るんだよ」
そう言われるけれど、今までシュトレイが一瞬で作っていたから、これからもそうするのだと思っていた。
(作っておくの? いつもその場で作るじゃない?)
「うん、一応ね。万が一僕がいなくても困らないようにね。」
なるほど。今は四六時中一緒にいるけど、居ない可能性もあるなら服がないのは困る。
宝石を全て開けると、部屋の隅にある、ワインレッドの重厚な布で覆われた板みたいなものを持ってくる。足が付いていて、それ単体で置くようになっている。
それを鏡の前に持って来て覆っていた布を取れば、それも鏡で。これは、合わせ鏡にしているのかな?
そして、なぜか机にある椅子に座ると、目の前の机の上になにやら色とりどりの布が現れた。
(何これ?)
「色見本だよ。沙耶ちゃんの好きな色、選んでもらおうかなって。あとねー、こっちは布見本ね。見た目とか、好きな素材とか、肌触りで選んでね」
そう言うと、シュトレイは身体から出て行く。
残された私は、色見本から好きじゃない色を抜き取る作業を開始する。
ぱらぱらとめくるようにして、直感で決めた。悩む色もあったけど、これは駄目!っていうのだけ抜き取る。素材に関しては、シャリシャリと音がなる物を外しただけだ。
「こっちは嫌いな色。素材もこれだけ嫌い。ということでシュトレイ、いいよー」
声を掛ければあっという間に身体に入って来る。
そうしてまるでトランプを広げるように色見本の布を広げると、鏡の前に移動した。
「こっちのデザインの物は多少希望は聞けるけど、勝手に作るね。地球の服も作れるから、欲しい物があれば作るよ」
(ほんと!? シフォンチュニックとか、クロップドデニムとか、ちょっと高くて買えなかった靴とかも!?)
「デザインのイメージが口頭だと難しいけどねぇ。絵が描けるなら別だけど」
(うぅ…プロ級じゃないけど、画伯じゃないから描く…)
「まずはこっちのデザインからねぇ」
そう言うと、ぱっと鏡の中の服装が変わった。童話なんかのお姫様が着るような、ドレスだ。
(肩とか胸元とか、できれば出したくないんだけど・・・)
そう、地球でもキャミやチューブトップも可愛いのはあったけれど、上着やカーディガンで隠していた位だ。
なんか恥ずかしいんだよね・・・友達には怒られるんだけど、胸が大きいからチラチラ見られたりとかするのが嫌っていうのもあるし。
「じゃあ上着を着るタイプにするなら、こんな感じ。もしくは元から見せないタイプにすると、こんな感じ。どっちがいい?」
(う…どっちも好き…)
「なら、スカートの形とか変えて両方作っとこうか」
そんな感じで、いろんなデザインを見せられる。
作るという割りに、作った服が何処に行っているのか分からずに聞けば、なぜか先程空っぽだったクローゼットの中に収められていた。
最初から収める場所に作っているのだとか。神様の能力って、謎だ。
謎といえば、どういう原理で服が作られてるんだろう。ちゃんと織った布のように見えるし、一見して人が作ったかのようだ。刺繍とかも入ってる物もある。
「うーん、ほんとはねぇ、僕の本業はこっちなんだよねぇ」
収めた服の数を確認しているシュトレイに疑問を口にすれば、そんな返事が返ってきた。
「僕はねぇ、元は鉱物を司り、そして加工技術を編み出す神だったんだ。でも、害獣被害とか、戦争とかあって、武器を作らないといけなかった。で、作った武器の使用感を試したりしたら、いつの間に闘神として祭られてたってワケ」
(えっと、闘うの、強かった?)
「まぁ、神様補正ってやつでねぇ。だって攻撃当たらないもん」
(え?)
「えっとね~こうして、こうすれば…ね?」
言いながらやってくれたけど、自身の周りに鉄の壁のようなものを出して、剣で一閃させて見せた。
「身体能力も悪くないしぃ、まぁ闘うのも嫌いじゃないからねぇ」
(嫌いじゃないなら、なるべくしてなったような気もするけど)
「あはっ、確かにそうだねぇ」
そういえば、人が苦しんでいても気にならないようだったし、もしかして…傷つけるのに、抵抗がないのかな。
私は、平和な日本で過ごして来たから、っていうのもあるけど、傷つけたり出来ないしやりたくない。
でも、必要であればやらなくちゃいけないというのは、分かる。日本だって、昔は戦争してたし、戦国時代もあった。
だから、分かる。でも、だからといって納得は、できない。
「さて、じゃあ次は、ネグリジェかなぁ。あ、こっちではサリューって言うよ?」
(へ?)
「普通のパジャマも作ってあげるけどねぇ。サリューは僕の好みでかわいいの、いっぱい作っておくねぇ」
(え!? 普通のパジャマでいいじゃない!)
「だぁめ。かわいい沙耶ちゃんを小悪魔にしてみたり、妖精にしてみたりしたいもん」
その後も、『作らないで!』『ダメ』と、応酬していたが、その言い合いの間にも勝手に作られ、きっちりクローゼットの中に収められていた事に気がついたのは、闘神が”起きた”後の事だ。
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コディさん、メイドのコーディさんと名前が似るので変更しました。
旧:コディ=マクスウェル
新:ロディ=マクスウェル