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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
2章:目覚めて・・・
39/59

37、こ、こんなの、知らない

 目の前に広がるのは、一面のひまわり畑だ。鮮やかな黄色が、目に飛び込んでくる。


「すごい、こんなにひまわりが咲いてるの、見たの初めて!」

「そうだろうな。ただ、これはここでは名前が違うんだが、なんだったかな」


 花には疎くて。シュトレイはそう言って苦笑いを零す。

 疎い割りに、ひまわりと同じこの花があるって分かってるなら、そこまでじゃないと思うなぁ。あれ、でも、今の気温、そんなに暑くないし、日本でいうと春先っていう気候だよね。日本でひまわりっていうと、真夏っていうイメージなんだけど?


「この花は、地球のひまわりとは違って、低温で咲く」

「そうなんだ。見た目そっくりでも、違いがあるのね」

「少し歩くか? この花は、この高さからの方が見やすいが」


 そう言われて、どうしようかと考えてしまう。確かに、馬に乗っている今だと、丁度顔と同じか、少し見下ろす位の位置に花がある。

 でも、ずっと馬に乗ってたし、少し降りようかな。

 返事を返せば、シュトレイはひらりと馬から降りてしまう。そうして手が差し出されて、馬から降ろしてくれた。


「花は食べるな。食べていい草の判断はつくな? …行け」

「え? シュトレイ?」


 馬から降ろされると、シュトレイは馬首を叩きながらそんな事を言う。驚いて見ていると、馬はゆっくりと歩いて行ってしまった。


「いいの? 馬…」

「今まで大人しくしていたあの馬が、唯の馬だと思うか? あれはかなり利口だ。放っておいても悪さはしない」

「でも、戻ってこなかったらどうするの?」

「神器をつけてあるから大丈夫だ。だが、呼べば来るだろうな」


 むむ。そういうものなのかぁ。そう感心していると、いくら訓練された馬でも、頭のよさでいう事を聞きやすいとかもあるのだと教えてくれた。

 確かに、乗る時も降りる時も暴れたりしないし、身じろぎもしないから、すごい乗りやすかった。シュトレイが馬を操るのが上手いからだと思ってたんだけど、それだけじゃなかったんだなぁ。


「おいで。バスケットは俺が持とう」

「あ、ありがと」


 ふわりと籠を取られたかと思ったら、そっと腰に腕が回されて。

 うわーうわーこれって傍から見ると、恋人同士だよ! …あ。一応夫婦だっけ、私達って。うぅ…まだ慣れないや。


 歩いてひまわり畑を回ると、やはり見上げるばかりになってしまう。でも、その力強く咲いて、太陽を一杯浴びようとする姿に元気を貰った様な気がした。

 しばらくひまわりを見ていて、おなかがすいてきたので、馬を呼んで小高い丘に来た。ここからひまわり畑も見下ろす事もできるし、近くにあの”闘神の花”がある。ここでは畑もあるけれど、所々にも咲いているみたい。

 そういえば、闘神の花って呼ばれてるとは聞いたけど、本当の名前、聞くの忘れちゃったなぁ。

 シュトレイが原っぱにシートを作ってくれて、そこへ座ってバスケットを開ける。手を布巾で拭いて、卵サンドイッチを食べると、すごくおいしい。


「おいしい?」

「うん、すっごくおいしい。シュトレイのは、フルーツサンド? おいしい?」

「ああ。はい、あーん」

「あー…っ!」


 思わず口を開いて、雛鳥よろしく口に放り込まれたのは、今までシュトレイが口にしてたモノで。


「くくく、真っ赤だな。ああ、ほら、落とすよ」

「ぅぐ、んーんー!」


 文句を言いたいのに、口の中が一杯で、ままならない。

 別に、シュトレイが食べてるものじゃなくてもいいじゃない! なんでこんな事になるのよ~!


 その後、なんとかどきどきしならがらも食事を終えたけれど、そんな心情で食べたから、せっかくのサンドイッチも、ほとんど味が分からなかった。

 紅茶を飲んで、ようやく一息つけた所で、行儀悪いかもしれないけど、ごろりと仰向けになる。


「んー、いい天気~。そういえば、こうやって外に出たのって、あのパレードの時以来かも?」

「そうだな。ほとんど勉強でこもりっきりだったからな」


 少し急ぎすぎたか? そっと頬を撫でられながらそう聞かれて、慌てて身体を起こして『そんな事無い』と口にした。


「字を読めるようになりたいって言ったのは、私だし、マナーとかそういうのは、必要な事だと思うし…たまにはこうやってお休みの日があればうれしい」

「そうか? だが、城下街に出る位の時間を少し取ろうか」

「いいの? うれしい!」


 そう言って笑うと、シュトレイが微笑む。その瞳が、綺麗な翡翠色をしていて、じっと見つめてしまう。

 と、急にシュトレイの表情が、急に真顔に変わって―――ぽすり、と、肩を押されて仰向けに押し倒された。


「シュトレ、いっ! んっ…」


 何をするのかと言い募ろうとしたら、唇に重ねられた、それ。

 え、ちょ、まって、なんでいきなりキスされてるの!? しかも、あの時と違って…強く唇を吸われて!?


「ぅむっ…んんっ…っ!?」


 止めて欲しいと、シュトレイの胸を押し返すけれど、びくともしなくて。

 そうこうしてるうちに、ぬるりと熱い物が唇を割って、入って来た。びっくりしているうちに、ソレは口内を蹂躙して。

 うそ…話には、聞いてたけど…こんなの、知らない……




「っ、はっ…」

「…沙耶」


 ようやく開放されて、呆然としてしまったけれど、耳の下辺りに触れる柔らかい感触に、ぎょっとした。


「ま、まって、シュトレイ! やだっ!」

「っ…あぁ、すまない。余りにも沙耶が可愛い瞳をするから、押さえが利かなかった」


 首元にキスされるなんて…まさかこんな所で!? と、条件反射に近かったけれど抵抗してみれば、あっさりとシュトレイは引いた。苦笑を零しながら体を起こすと、手を引かれて身体を起こすのを手伝ってくれた。

 でも、そう言われるとなんだが…


「私のせい、なの?」

「いいや、沙耶の全てが可愛くて、全て取り込みたい俺のせい。早く、落ちておいで。じゃないと、我慢ができなくなりそうだ」


 『だからキスをしないでいたのに。』と、口を尖らせて言うシュトレイが、子供が拗ねている様に見えて、思わず噴き出してしまう。


「何故笑うかな」

「ぷぷっ…だって、ギャップがっ…」


 カッコいいイケメンが口尖らせて拗ねるとか、合わなさ過ぎる! 子供だったら、かわいいんだろうけど…いつも、カッコいい姿しか見てなかったから、余計におかしく思える。


「…まったく」

「きゃあ!…ぁ」


 また押し倒されて…そっと、唇が重ねられた。



 城へ戻って、お風呂に入ってほっと一息ついたら、思い出してしまった。

―――シュトレイと、キスしちゃった。あんな、キスを。

 思い出してしまうと、もう居ても経ってもいられなくなって、湯船に浸かったままじたばたしてしまう。


 なんで今まで気がつかなかったの! やだ、はずかしい…思い出すな、私! 感触とか…うわわわっ!


 散々じたばたとしていたけれど、今更無かった事にはできないし。と、強引に気持ちを切り替える。

 そうすると、考えてしまうのは、あの時の気持ち。…翻弄されるばかりだったけど、嫌じゃなかった…その事実に気づいてしまった。


「好き、なのかな…」


 ぽつりとそう、零してしまう。今だに、自分の気持ちが分からない。あんなに愛されているのに、自分の気持ちがはっきりしなくて、申し訳なくなる。

 確かに、もう結婚はしちゃってる、訳だし、嘘でも愛してると言ってもいいとは思う。嫌いじゃないしね。でも、それもちょっと違うと思うし。


「あぁ、もう、ほんとにどうしたらいいの」


 人を、本気で愛するって、どんな感じなんだろう…

誤字脱字、指摘や感想等お気軽にどうぞ


お待たせしました!

さらっとキスの描写を書き流したけれど、詳細に書いたほうがいいのか悩む。

詳細に書いたらコッチじゃNGなのか!?とか。

キスくらいで詳細もなにも無いだろうと言ったソコのアナタ!

うん、正解デス。

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