24、シュトレイって、シュトレイって・・・!
「おはよう、沙耶」
ふわりとうれしそうに微笑んでそう言うシュトレイの声は、低くもなく、高くもない声質をしていた。瞳の色ははっきりしないけれど、切れ長の目は凛々しく、男らしくもあり知的でもある。
だからなのか、いやに心臓がどきどきするのはっ!
「…っ! きゃあ」
「あぁ、愛しいよ、沙耶」
「あ、ちょっ…やめ、んっ」
急に頭を抱えられて引き寄せられて、思わず上に重なってしまった。しかも僅かに掠れさせた声でそんな甘い事を言うなり、頬にキスされて。
それだけならまだしも…っ!
何度も唇を重ねる軽いキスをされた! 最後には下唇を吸われたしっ!
「う、ぅぅ…」
ファーストキスは、もっとロマンチックな雰囲気でしたかった。いくらシュトレイにときめいていたとしてもっ!
ぎゅっと抱きしめられて、はっとした。
「しゅ、シュトレイ?」
「ん? どうした?」
「あの、ふ、服、は?」
そう、抱きしめられてその腕の中に囲われているのだけれど、手や頬に触れる感触が、肌そのもので。上半身だけ裸なのか、まさか本当に素っ裸なのかわからないけど、こんな状況は心臓に悪い!
「ふふ、このままここでシても俺は構わないけど、ね」
「なっ…」
「沙耶の心が落ちて来るのを待つよ」
耳元でそんな事囁かれて、ぞくぞくしたとか絶対言わない!
そっと身体を離されて、慌ててベットから降りれば背後でくすくすと笑う声が聞こえる。うぅ…今までのシュトレイより性格悪くない!? 今まではあくまで自分の身体を乗っ取られる位だったけど…これからは、手が出てくるのか。なんだか怖いな。
そんな事を考えていたら、いきなり身体が浮いた。こ、これは俗に言うお姫様抱っこ!
「さ、戻ろうか。まだ夜は明けてないしね」
「あっ…待って、片付けてから」
「構わない」
問答無用とばかりに、すたすたと歩いて行ってしまう。じたばたと暴れてみても、全然離してくれないし、動きに支障もでないみたいでどうにもならない。
「あんまり騒ぐと迷惑になるから、少し黙って」
「だ、だって」
「聞き分けないと、強引に塞ぐよ?」
にやりと笑うなり、ぺろりと舌なめずりしてみせるその顔に、なんだか恥ずかしくて思わず顔を伏せてしまった。
くっそう…嫌味と取れる言い分と所作なのに、なんでサマになるんだ。いや、ちょっとまって。これってもしかしなくても、物凄くセックスアピールされて、る?
そろりと顔を上げて見て見ると、にっこりと笑うなり額に柔らかい感触。デコちゅーされたーうわぁー
「くくく、ほんと、かわいいね」
うう…もしかしてずっとこんななのかな?心臓に悪すぎて体が持たないよ…
ダイニングへと到着したけれど、今日は蝋燭が灯されていて部屋の中は明るかった。現代日本に比べるとそりゃ暗い方だけど。
シュトレイの歩みは止まらずに、寝室へと向かって行く。まさかもう子作りするなんて言わないよね? でも、元々神の器は神様との子を産む為にって言われたし…え、でもそんな急になんて…いや、前もって言われてたけど、そうじゃなくって。
「くすくす、安心して。ただだっこして寝るだけだから。でも、沙耶には小悪魔な格好してもらうけど」
「え?」
頭上からそんな声が聞こえて、すぐに着ていたドレスが変わった。ロングスカートなドレスだったのに、足がっ足が出てる!しかも生地が透けて…
「や、こんな格好はやだっ」
「そう? すごくかわいいのに」
「恥ずかしいだけだよ、こんなの」
そっとベットへと降ろされたけど、慌ててリネンに包まって、シュトレイの視線から隠れる。
「嫌なら自分で変えてもいいよ。それだけの力はあるはずだし。でもまぁ、俺も譲らないけど、ね?」
シュトレイはそんな事を言いながらベットへと乗って来ると、リネンごと背後から私を抱きしめたかと思ったら、そのリネンを消されてしまった。
「っ、や、離して」
「何もしないよ。あ、何もって言うのは語弊があるな。こうして居たいだけだから」
できればこっち向いて欲しいけど。そんな事言われても、向かい合わせで寝るなんて恥ずかしくて出来る訳ないじゃない! 今もいっぱいいっぱいなのに。
腕枕とか、腰、というかお腹をがっしり腕でホールドされるとか、ぴったり背後に温もりがあるなんて。そりゃ、知識だけは知ってたけどっ!
「今日はちょっと忙しくなるから、少しは休んでおいたほうがいい」
「忙しくって、どうして」
「やらないかもしれないが、国民にお披露目するから」
「やっぱりそういうのあるんだ」
「だから、おやすみ」
そっと頬に優しくキスされて。恥ずかしくて、おやすみっ! と、言い返せば、ふっと笑われてしまう。これ以上起きてると、もっとからかわれそうだし、眠れるかわからないけど目を閉じた。
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セックスアピールって、するものというか、あ、ここが好き。と思うものだと思うんだけど。使い方間違ってそうだ。
次はシュトレイの思いというか考えというか。短いでっす。