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闘神に気に入られた私  作者: 新条 カイ
1章:目覚めるまで
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16、水をさす者

「…邪魔をするな、レヴァン」



 レヴァン家当主の放った氷矢のお蔭か、闘神が振り下ろしたその攻撃が反れた。皇子はそれにより危機を脱する事ができた訳だ。

 だが、邪魔をされた闘神は、邪魔をしたレヴァン家当主を睨みつけていた。一方、睨まれたレヴァン家当主は…何故か笑顔である。あまりにも相反する状態だ。

 周りの者はびくびくと両者の顔を見比べて、何が起きるのだろうかと、一緒に観戦していたレヴァン家当主からじりじりと後退している。


「闘神様の怒りをかった報いだと分かっておりますが、それ以上しますと闘神様の力で治す事になります。今の怪我の状態であれば、まだ城の医師による治療が可能ですので、その辺でお止めください。その者は―――闘神様のお力で治す程、必要でしょうか?」

「一度殺す」

「起きてからにしてくださいませ。奥様の身で、治療する事になりますよ」


 言われて、はっとした様な表情をした闘神は、苦々しく顔をゆがめた。

 そう、命を復活させる為にはその身に流れる血を触媒として印を描く必要がある。

 いくら神の器の沙耶の身体が闘神の力全てを使えるのだと言っても、その沙耶の身体に傷を付ける事、他人の身体に指とはいえ触れること―――それらをこの闘神が許すとは思えない。

 レヴァン家当主はこれまでに聞いた今代闘神の性格を、短い期間で正しく認識していた。故に、どのように言えば良いのかも分かっていた。戦いを始める前に言わなかったのは、力加減が出来ない事と、その怒りを発散させる必要があったから、だ。

 ただし、目的が”皇子を殺す”事だったなら、反対にこちらが怒りを買う可能性も考えていた。だからこそ、沙耶を保険として掛けているのだが。


「…お前は、どれくらい剣を扱える」

「父の話だと父を超えたと。代々、先代に負けないよう訓練しておりますので、同じ位だと思います」


 どうやら闘神は、皇子を殺す事を止めた様だ。レヴァン家当主のいる場所へと歩きながら、そんな事を言っている。それを見た周りの者が皇子を運び出そうと動く。

 レヴァン家は闘神の傍にいる者だ。だから、戦争にも一緒に付いて行くし、害獣退治にも付いて行く。その様な状態であるから、足手まといにならない様、訓練は欠かさない。

 先の闘神が起きていた時代は、害獣が猛威を振るっていた時期だ。その当代レヴァンは闘神と一緒に闘った日記等も残しており、その戦況を想定した訓練等も取っている。

 その訓練も、来る日の為に代々同じ力量を持つようにと訓練は続けられ、実はレヴァン家直系男子は稀代の武闘派だったりする。それが表立たないのは、闘神が眠っている時は闘いの表舞台には立たず、ひたすら闘神の志向性を研究して広めているからだ。

 また、闘神が起きている時に活躍したとしても、闘神の影に隠れる為に表立たないのだ。


 ちなみに、レヴァン家は闘神が起きている代の直系男子のみを当主と呼び、眠っている時はレヴァン家を繋ぐ者と呼ばれる。闘神が起きてるか否か、それのみで動いている家なのだ。

 

「お前が相手しろ」

「畏まりました。闘神様の武器はできれば双剣でお願いします」

「ほう、死にに行くつもりか?」

「先代の日記に書かれていた事を実際に見てみたいのです」


 にこりと笑たレヴァンがそう言うと、闘神はにやりと笑い、その手にそれぞれ剣を出す。

 この双剣を戦場で使わせると、あたかも舞っているかのような剣技に魅了され、敵でさえも陶酔してしまうと日記に記載されており、レヴァン家では有名な話だ。

 レヴァン家当主は、それを目の当たりに出来る日を幼少の頃から楽しみにしていた程。元々双剣は踊る様に見えるのだが、それが敵を酔わせるとなれば、一体どれほどの剣技なのかと。


「…お前は…」


 闘神が武器はどうするのかと言いかけて、口を噤んだ。レヴァン家当主が袖から取り出したのは、あの棒だ。それを見て、ふっ、と苦笑いした。


「そういえばレヴァンはそれがあったな」


 レヴァン家当主は、にっこりと笑うと小さく呪文を紡ぐ。すると、その両手に現れたのは、剣と盾だ。

 そう、この金属の棒は、綴るのにも使うが、こうして対応する呪文を唱える事で色んな物に変化するのだ。それは、闘神がそうなるように製作した物であるのだけれど、作った本人がそれを忘れていたとは。


「両剣が得意なんですけれどね。双剣には不向きですので」

「そうだな」


 両剣とは、棒の両端が剣となっている武器だ。棍棒や槍と同じ様に使うのだが、両端が剣になっている事から、どちらでも攻撃可能と言う点が上げられる。

 ただ、双剣相手だと、攻撃を捌く際に難しいという不利な事があるのだ。その為、無難な剣と盾を使う事にした様だ。


「あぁ、沙耶を起こす」


 ふと何か考える様な表情をし、闘神はそう言う。あまり神の器の精神を眠らせて置くと、それに引っ張られるように闘神自身の意識がぼーっとしてしまう。

 その副作用とも言える事象のせいで起こそうとしたのかと言えばそうでもないらしい。それはレヴァン家当主との戦いは力を見る戦いになる為と、レヴァン家当主の力量が、先代レヴァン家当主と同じ位だと言う事かららしい。

 先代レヴァン家当主は、闘神の武器を無限出現させない限り、それ程力量の差がなかったのだ。


「それに、起きたら訓練するんだから、見ておくのも良いだろう」

「はい」


 その戦いを見られる事などそうそうありはしない。なおかつ、見るだけでも剣を扱う上で学習できる。剣筋や、どう防ぐか等はイメージトレーニングも有用だからだ。

 さて、眠らせる時は一瞬であったものだが、なかなか浮上してこない沙耶の意識だったが…


(…ん…? あれ?)

「起きた? 沙耶ちゃん」


 ふわりと笑うその顔は…先程の怜悧な表情を一変させた。闘神のこの変わり身の早さは、一体どういう事なのかと周りを恐怖に陥れていたりする。

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