8 語られる真実~1~
「あ、気が付いた?」
目を開けるとドーラが、覗き込んでいた。
「え、私……」
「エミネントの衝撃発言で、フェイトその場で倒れちゃったのよ。まぁ、無理ないわよねー私達も驚いてるんだから」
---そうだ、さっきエミネントは私を『ヴァースト』だと言った。
私はベッドから起き上がると、ドーラに尋ねた。
「エミネントは?」
水をいれたグラスを私に差し出しながら、ドーラは肩を竦めた。
「それがね、あのあとエミネントとナスリィの2人して、執務室に籠って何か話をしてるのよ。他の皆は食堂に集まってる」
私は水を一気に飲み干すと、ドーラと一緒に食堂へと向かった。
食堂の扉を開けると、中にいた皆が一斉にこちらを見た。
そこには、神殿内にいるサーヴァントの面々が揃っていた。
「フェイト!大丈夫?」
エイミアが心配そうに私の方に駆け寄って来た。
私は無理に笑うと、エイミアが心配しない様に明るく答えた。
「うん、大丈夫。全く---エミネントは冗談が過ぎるわよね。私がヴァーストだなんて、ありえないっての!」
私の言葉に、窓際にいたハーティが睨んだ。
「ホントだよな!こんな奴が俺達が守らなければならないヴァーストなら、俺はサーヴァントなんか辞めてやるよ」
「ハーティ!馬鹿なことを言うな。」
ミンが戒める。ハーティにはそれが気に入らなかったようだ。
「馬鹿な事?こいつは俺達の命を狙ってるんだぞ。そんな奴を何故、俺達が守るんだ。おかしいだろう」
自分のことながら、確かにそうだと心の中でハーティに同意する。
私が奴でも同じ事を言うだろう。
「とりあえず、エミネントとナスリィが戻ってくるまでは、何とも言えないな」
エリアスが冷静な声で呟く。
「でも…俺はフェイトは間違いなく、ヴァーストだと思うよ」
その言葉に一同、彼の方を見る。
「エリアス---何を根拠に……」
ミンが彼に問いかけようとした時、食堂の扉が開きエミネントとナスリィの2人が入って来た。
全員が2人に注目する。私もそれは同じだった。
「どうしたんだ?みんな揃って……エリアス、君までいるのか。大丈夫なのかい?ここへ出てきても。防御室の方はどうなっている?」
エミネントはエリアスへ問いかけた。
「問題はないさ。結界は完璧だ。そんな短時間ではどうこうなるものでもない……それに、ヴァーストが戻ってきたなら、俺が結界を張る必要もなくなるんじゃないか?」
エリアスは笑いながら私を見た。
な、何?私は関係ないから!
「結界が破られたって聞いた時、信じられなかった。今まで一度もそんな事なかったからね。でも、フェイトがヴァーストならば結界を破るのなんて簡単だ」
エリアスの言葉にその場にいる全員が納得しそうになった---が、
「冗談じゃない!俺は認めない」
ハーティが突っかかるように言う。
「---ハーティ」
エミネントが宥めるように名前を呼ぶと、彼はぷいっと食堂を出て行った。
しばらくの沈黙の後、私は恐る恐る声を掛けた。
「……あの、私が言うのも何なんだけど、私も間違っていると思う。ガテーリアにも今まで来たことないし、父さんからそんな話も聞いたことない」
「でも、君のお父さん---ソルドは、先代のヴァーストに仕えていたサーヴァントです」
エミネントの言葉に私は唖然とする。ソルド?誰…
「私の父さんの名前はソルドじゃない。カートよ!」
すると、私の目に前に玉石が付いているペンダントを差し出す。
「それは父さんの形見……」
「無断で借りました。すみません」
エミネントは申し訳なさそうに言うと、私の手の中へペンダントをそっとのせた。
私はギュッと握りしめた。
「その中にソルド…いえ、あなたの父親であるカートの残留思念が残ってました。それを私とナスリィで読ませてもらいましたよ。おかげで、今まで謎だった事がやっとわかりました」
何?どういう事?父さんの残留思念って……
そして、エミネントとナスリィは、今まで誰も知らなかった真実を語りだした。