7 訪問者との対面
本文よりフェイト視点になります。
前の話と少し文体が変わりますが、ご了承下さい。
もしそれでもよろしければ、お付き合い下さい。
「フェイト!……フェイト、どこにいるの?」
(エイミアが呼んでる?)
私は立ち上がると声のする方へ向かい、大きな声で答える。
「エイミア、ここ!バスルームだよ」
すると、エイミアが慌てた様に姿を現した。
「ああ、良かった。フェイト、早く来て!着替えないと」
「ち、ちょっと待って、まだ掃除が終わってない…」
手をひっぱって、バスルームから連れ出そうとするエイミアを押し留める。
「そんなの、ハーティにさせるわよ。体力有り余ってるんだから」
そう言われ、半ば引きずられるようにエイミアの後をついて行った。
エイミアの部屋に連れて行かれ、そこで彼女の服に着替えさせられた。
服は少し大きく、丈が長かったが気にするほどではなかった。
それよりも、スカートなど着けたことがないので落ち着かない。
「何なの?エイミア---スカートなんて落ち着かないんだけど」
「今日、ナスリィ様が来るそうなの!フェイトに会いに来るってことで、エミネントが着替えさせておけって」
エイミアが言うには、ナスリィと言うばぁさんが、私に会いに街からわざわざここへ来るそうだ。
何の為に?私には訳が判らない。
「いい?フェイト。ナスリィ様に失礼な事は言わないでね。彼女は平民だけど先代のヴァーストの相談役だった人なの。今は街に住んでいて占い師として生活しているけど、凄い人だから」
エイミアの話を聞いて、気分が憂鬱になって来た。何でそんな人が私に会いにくるの?意味が解らない。
落ち着かない格好の上、何故か謁見の間という所で待ってろと言われ、私は1人でその部屋の中でナスリィが来るのを待った。
どの位の時間がたっただろう---あまりにも暇で睡魔が襲ってきた。
うつらうつらとし始めたその時、バンっと大きな音をたてて扉が開いた。
その大きな音に驚いてそちらを向くと、そこには小柄ながら何故か威圧感のある老婆が立っていた。
(この、ばぁさんがナスリィ?---)
ナスリィは年の割にはしっかりした足取りで部屋の中へ入って来ると、真っ直ぐに私の前にやって来た。
咄嗟に椅子から立ち上がったけど、彼女に見つめられると身体が動かない。
「お前がフェイトかい?」
しわがれた声でそう問いかけると、私の顔をじっと眺める。
「……ふん、あまりいい生活はしてなかったね。やせすぎだし、目つきは悪すぎる。それに何だい?躾もなってない様だね。挨拶もろくに出来ないのかい」
呆れたようにナスリィは、首を振る。その態度に私は---キレた。
「何だよ!人が大人しくしてれば、調子に乗って。『いい生活してない、躾もなってない』?余計なお世話!」
私は大声でそうまくし立てた後、はっと我に返った。やばい、エイミアに注意されてた事を忘れていた。
恐る恐るナスリィを見ると、無表情でこちらを見ている。
怒ってる?目付きが凄く怖いんだけど……
うわぁ、エイミアにまた怒られる!
私はどうやってこの状況を乗り切ろうかと、必死に考えを巡らせた。
そんな私の前でナスリィがいきなり笑い出した。
「そうか、そうか、なるほどな!さすがはソルドじゃ!」
何だ?ばぁさん、気でも違ったか?
呆然と見ていると、笑い声を聞いてエミネントやハーティといった他のサーヴァントの皆も部屋へ入ってきた。
「おお、エミネント!おぬしの予想通りだ。間違いない!」
ばぁさんの言葉にエミネントが安心した様な顔をした。
何だ?全く意味が解らないんだけど…
私が状況を呑み込めていないのを見て、エミネントが----跪いた!
それにはさすがにその場にいた全員が驚いた。
「な、何してんの!エミネント」
さすがにいくら仇とはいえ、一応年上である彼が私に跪くっていうのは正直焦る。
しかし彼は気にする風でもなく、むしろ当たり前といった顔で私を見た。
真剣な表情の彼と目があった瞬間、信じられない言葉をエミネントが言った。
「お帰りなさい。我が君主−−−フェイト様、この日をどれだけ待ち望んだことか」
その場にいた全員が固まった---何て言った?今。
「な、何言ってるの?エミネント、ふざけないで!」
我に返った私はそう言うと、エミネントを立ち上がらせようと、腕を引っ張った。
しかし、彼はじっと動かず私を見ている。
「いいえ、ふざけてなどいません。あなたは間違いなく幼い頃に行方が判らなくなった『ヴァースト』です。その証拠にあなたの瞳は碧眼だが、感情が高ぶれば金色へと変化する。しかしそれだけでは確証が持てなかった。だからナスリィに確かめてほしかったのです。彼女が間違いないというのです。あなたは私たち『サーヴァント』が守らねばならない君主---」
エミネントの言っている言葉の意味が解らない。父さんの仇だと思っていたサーヴァントの君主?私が?じゃ、私はどうすればいいの?
私の思考の許容範囲を遥かに超えたエミネントの話に、私は逃げるように意識を失った。