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サーヴァント  作者: ミサ
第1章
6/16

6 新しい環境

「フェイト、お皿取ってくれない?」

 エイミアに言われ、フェイトは棚の中から比較的大きめの皿を取り出すと、彼女へ手渡した。

「ありがとう、悪いけど、この料理を食堂に運んで頂戴」

「わかった」

 素っ気なく答えると、2つの大皿を両手に持ち台所を出て行く。

 フェイトがここの住人になって、3か月が過ぎていた。

 勿論、その間平和だった訳ではない。

 事あるごとにサーヴァントのみんなの命を狙おうとし、その度に金縛りの状態になる。

 ミンの暗示は強力で、彼女は金縛りの状態が解けるまで、かなりの時間を要した。

 それでも懲りずにまた命を狙う。

 唯一、エイミアだけには多少心を開いているようで、彼女の言う事だけは聞くようになっていた。



「野生の生き物か……あいつは」

 フェイトの様子を見ていたハーティの感想だった。

 彼女はどうやら女の子として育てられておらず、剣術などは並みの男以上の腕前なのだが、普段の仕草や作法が粗野、揚句にサーヴァントと見れば誰彼構わずに牙をむく。

 そんな彼女にエイミアが根気よく接していた結果、やっと少しづつではあるが話をしてくれる様になっていた。

「まぁ、しょうがないと言えばしょうがないですけどね」

 ハーティの言葉を聞いて、エミネントは苦笑した。

(もしも本当に彼女がそうならば、あの方はそうしただろう)

 未だに自分の予感が正しかったかどうかが判らず、エミネントも不安ではあった。

 しかしナスリィが回復してこちらへ赴くという連絡を受けた為、少しだけ気が楽になっていた。

(彼女ならおそらく見極めてくれる…)

 退屈なのでフェイトをからかう事にしたらしいハーティと、むきになって突っかかっている彼女を見ながら、そんな風に思っていた。




「おい、フェイト。ナイフとフォークの置き方間違っているぞ。いい加減覚えろ」

(あーまた出た。口うるさいのが)

 ハーティの言葉に、フェイトは微かに苛立ちを覚えた。

 彼は何かと絡んできては、フェイトが怒るのを楽しんでいる。無視すれば済むことだが、彼女の性格上無理と言うものだ。

「別に食べられれば何でもいいでしょ!」

 イラついた口調に気づいたハーティは、ここぞとばかりに絡んできた。

「お前な…仮にも女だろ?少しくらいエイミアを見習えよ。ったく、頭悪ぃな!」

 さすがに、これにはフェイトもカチンときた。

「ハーティ!言い過ぎ!言葉には気をつけなさい……フェイト、彼の言う事なんて気にしなくていいから。ほら、エイミアのお手伝いをしてらっしゃい」

 近くで様子を見ていたドーラが、慌てた様に2人を引き離した。

 ハーティを睨みつけると、フェイトはキッチンへと姿を消した。

「まったく、いい加減にしなさいよ!ただでさえ、あの娘は私たちに良い印象なんて持ってないのに、これ以上神経逆撫でするような事言わないで」

 楽しんでいる様子のハーティを見て、ドーラは呆れたように言った。

「だってよ、あいつからかうとすぐにムキになるから面白くて」

「もう、知らないわよ。フェイトの剣の腕はあんたでも互角なんでしょ?」

「大丈夫だって!ミンの暗示のおかげで狙われたとしても、あいつは金縛りにあって俺を襲うことは出来ないさ」

 余裕の発言をするハーティに、ドーラはやれやれと首を竦めると自分の席に着いた。

「ハーティ、君も座りなさい」

 エミネントに言われ、席に着いたハーティは自分の席にまだスープが来てない事に気づく。

「おい、俺のスープまだか?」

 キッチンへ向かい大声で尋ねると、エイミアの声で『今、出すわ』と返事がきた。

 そして、フェイトがトレーにスープ皿を載せてハーティの元へやって来る。

 すでに食事を始めていた彼は、フェイトの方を見ていなかった。

「スープ……持ってきました」

「ああ、サン……キュ-----」

 周りにいたみんなは、突然目の前で起きた事に声が出なかった。

 フェイトはトレーに載ったスープ皿ごとハーティの頭の上にぶちまけ、彼は自分に何が起こったか理解できないようで呆然としている。

 当の本人はしてやったりとばかりに、満面の笑みを浮かべていた。

「……くっ、あははは!ハーティ、やられたな。いい気味だ!」

 ミンが堰を切ったように、笑い出すとみんなも腹をかかえて笑い出した。

「な、何すんだ!お前」

 我に返るとハーティは頭からスープを滴らせて、フェイトに掴みかかるが彼女も負けじと襟元を掴みあげた。今にも喧嘩が始まりそうな空気に包まれた瞬間。

「食事中に何なの!2人とも今日は食事抜きだから!」

 キッチンから出てきたエイミアが、仁王立ちで叫んだ。

「そんなぁ」

 2人の声がハモった。

「フェイト、あなたはここを片付けなさい!ハーティ、早くお風呂に行って!これ以上周りを汚さないで」

 睨み合っていた2人は、しぶしぶ離れるとそれぞれエイミアに言われた通りにした。




 キッチンへ皿を片付けに来たフェイトは、まだ怒りが収まらなかった。

「あー、腹立つ!何なのよ、アイツ!やたらと喧嘩売ってきて、腹立つったら!もし、暗示が解けたら真っ先にあいつを殺す!」

 この3か月間、この神殿にいながら仇が討てない上にさきほどのハーティに馬鹿にされて、フェイトのストレスは限界に来ていた。

 唯一救いなのは、エイミアが優しく自分を受け入れてくれている為、少しづつ彼女にだけは心を許している事くらいだ。

 「エイミアに怒られたし…それに食事なしか」

 はぁ、と溜息が漏れる。

(私は一体いつ、父さんの仇が討てるのだろう…)

 フェイトはキッチンのテーブルに突っ伏した。



 

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