第6話 記憶崩壊序曲
最近、俺はひたすらパソコンのキーを打ち続けている。
特に目的があるわけでもないが黙々と……。
何かわからないものに怯えているのだろうか?
それとも自分の変化に酔いしれているのだろうか?
あらゆることが頭に記憶されていく自分自身に驚きと、そして少々の戸惑いもある。
それでもキーを打つ手は止まらない。
知識が吸収されていくのが、おもしろくて仕方がなかった。
「まぁさぁとっ!」
声とともに、後ろからにゅっと手が伸びてきた。
「うわっ!あぶ…な…!!」
背にもたれながら椅子に腰をかけていたためか
正人は「ドシン」と大きな音をたて椅子から転げ落ちた。
「あぶねーなぁ!なにすんだよ!」
「だって正人チャイム鳴らしてもでてくれないんだもん」
美国がちょっと不機嫌そうに俺の顔を上から見下ろす
「だからってなぁ…」
「最近付き合い悪いぞ!」
美国は顔を膨らましながら正人の頬を引っ張った。
確かにここ数日美国にあってなかったな…。
「悪い!悪い!最近パソコンとか勉強が面白くてさ」
「えー正人が勉強?雨でも降るんじゃない?」
ケラケラと笑いながら俺の顔をみつめる美国。
本当、こいつはコロコロとよく表情が変わるな。
でもそんなところがけっこう好きなんだけどな……。
「な…何ジロジロみてんのよ!照れるじゃない」
普段、あまり見つめないためか美国は恥ずかしそうに視線を逸らした。
逸らした視線の先に、美国は何かを見つけ反応した。
「あら!あらら!なんか懐かしいもの発見!」
そこには一枚の写真が転がっていた。
「おいおい!人の部屋荒らすなよ!」
正人は仏頂面で言うも、美国はおかまいなしに写真を手に取り、懐かしそうに語りだした。
「ねぇ、この写真覚えてる?」
その写真は俺と美国が写っていて
美国の左手にはアクセサリーがぶら下がっている写真だった。
「二人で初めて買ったペアのアクセだったよね。
限定品だったから一日中歩き回って探してさ」
美国はその日の思い出を嬉しそうに話すなか、正人の頭の中では疑問が生じていた。
あれ?そうだっけ?
なんだ…?全然思い出せない。
「そ…そうだったけ?」
「もう何言ってるのよ!正人も言ってたじゃない!
こんなに歩いたのは人生で初めてだぁってさ!!一生忘れないって!」
「あ、ああ……。そうだったよな……確か……」
なんでだ?絶対忘れないはずなのに、思い出せない。
というより撮ったのかそんな写真……?あれ…?
どれだけ考えても思い出せない。
美国との記憶にすれ違いが生ずるなか
突然大きな頭痛が俺を襲った。
「イタっ!!」
俺は美国の膝元から起きだした。
「どうしたの?正人?大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込む美国。
「あ…ああ、大丈夫だ」
頭痛とともに自分の中で何かが変わりはじめることに気づくまで
時間はかからなかった。




