最終話 チェンジオブライフ
――数年後
「あれ、朝霧さんは?」
社員が正人のことを探していると、美穂は「今日は朝霧さん、有給とってるよ」と答えた。
「へぇ、珍しいですねぇ。有給とるなんて」
「今朝、急に電話がかかってきて、何があっても休むからよろしくって」
「あはは。最近、あの人雰囲気変わりましたよね。なんかすごく人当たりとかよくなった感じが」
すると美穂はこう答えた。
「どっちかというと、ウチの会社に入ってきたころに戻ったような感じかな?
あーあ、仕事もできて、性格もよくなって、チェックしとけばよかったかな」
などと、冗談まじりで言った。
「一時期すごく触れにくかったですものね。彼女でもできたんですかね」
美穂はチラリと、正人のデスクを見た。
綺麗に整頓された正人のデスクにあるパソコンのディスプレイには、
あの時撮ったプリクラが貼られていた。
美穂は立ち上がり、窓を開け、背伸びをすると
「……かもねぇ。それにしてもいい天気だね。もうすぐ梅雨なのにね」
空は、雲ひとつない青空で、太陽の光が優しく照らしていた。
繁華街を息を切らせながら、とても嬉しそうな顔をした男が走ってくる。
「おお、あの若者……」
易者はその姿を見ると、思わず声にだした。
「見つかったんだね。何が大切なものかが……。そして乗り越えたのだね。
うむ。今の彼は、まるで翼が生えているようだ」
易者は嬉しそうな顔をしながら、彼が通り過ぎていくのを見送った。
軽快な足取りで、男はあの喫茶店へと向かった。
店に入る前に呼吸を整えると、ゆっくりと店のドアを開けた。
カランカランと鳴り響く鐘の音が、店内にこだまする。
男は店内を軽く見渡した。
そして視線の先には、いつものお気に入りの席で紅茶を飲んでいる女の姿が見える。
少し髪が伸びた彼女。しかし纏う雰囲気はあの時と何一つ変わらない。
男はニコリと笑うと、ゆっくりと女に近づいていった。
「彼女!誰かと待ち合わせかい?一緒にお茶しない?」
男は冗談交じりで、女に声をかけた。
「んー、ごめんね。先約済みなの!」
女はクスっと笑いながら、男の顔を見上げた。
「それはどんな人?」
「えーと、いい加減で適当で不器用で、でも一番大切な人。あなたは誰かと待ち合わせ?」
女は男に質問をすると、男も笑顔で
「そうだな。おせっかいで寂しがり屋で物好きで、でも一番大切な人かな」
「いい女じゃない!その子」
「俺の理想の彼女だからな」
そして女は満面の笑顔で男に言った。
「おかえり。正人」
少し照れながら男も笑顔で返した。
「ただいま。美国」
店内に張ってあるカレンダーの日付は六月十日。天気は快晴。
そして今日が二人にとって始まりの日。
人生の転換日 チェンジオブライフ
「おかえりなさい」
そして
「ただいま」
これは僕……いや俺にとって特別な言葉。
もう決して離さないように、見失わないように。
人生に無駄なことなんてないのだから……。
最終話 ~おかえり ただいま~
この話を最後まで読んでくださいありがとうございました。
二人の物語はこれにておしまいになります。
この作品は数年前に更新していたブログにて連載してました。
作品自体にも深い思い出があり、様々な想いや願いをたくさん詰め込んで作り上げました。
そして今回、この「小説家になろう」という小説サイトに出会い、もっとたくさんの人に読んでもらえたら嬉しいなと思い、掲載させてもらいました。
昔のままの原文で掲載しようと思ったのですが、個人的に足りないと思った箇所が多々あったために、当時の原文をなるべく残しつつ、追加加筆させてもらいました。思った以上に直し箇所が多かったと反省点もありますが、より読みやすい作品に仕上がったのかなと思ってます。
作品についてですが、
予想通りと思った方、予想と違ったと思った方
感想は色々あると思いますが、最後はこれでよかったと思ってます。
私はハッピーエンドが信条ですから。
お涙頂戴のバッドエンドよりも、最後は笑って終われる作品が好きです。
この小説は「変化」と「大切なもの」をテーマに創作しました。
そして非現実なんだけど、もしかしたらあるかもしれない。
そんな仮想現実の話。
自分なりの気持ちや思いを凝縮して、それをいかにおもしろく作れるか?
無名の私の作品を、読者様が飽きさずに、テンポよく読んでもらえるにはどうしたらいいのか?など、独りよがりにならないように試行錯誤しながら作ったつもりです。もちろん表現力などはまだまだ足りないところはありますが。
本当の気持ちとか、大事なものというものは、
思った以上に、ギリギリにならないと、なかなか気づかないもので、
失くしてわかることが大半かなぁと思ってます。
もちろん失くす前に気づけることもあると思うし
そうそう手遅れになることはないとも思ってます。
これは前向きな気持ちですね。
今回はとにかく
第0話の「おかえり」「ただいま」
最終話の「おかえり」「ただいま」
このセリフを言わせたいがためにやってきました。
アフターストーリーなどもありますが、今回はこれで締めさせていただきます。
そして現在執筆中の作品も、いい感じに進んでいます。
私の作品を気に入ってもらえた方はもちろんのこと、そうじゃなかった方にも次回は楽しんでもらえる作品になればいいなとがんばっています。
どうか気長にお待ちいただけたら嬉しいかぎりです。
最後まで読んでくれた読者様へ
もう一度感謝の言葉を添え締めさせていただきます。
本当にありがとうございました。
コウ




