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第24話 完了

息を切らしながら、美国とナナが正人の部屋に駆け込んだ。

「正人!」

部屋に入るや、美国は声を大にして叫んだ。

その声がすぐに消え去り、キーボードの音だけが部屋に響き渡っている。

「……おかしいな。確か鍵はかけていたはずなのだが?」

パソコンのディスプレイを見ながら、正人は静かな口調で呟くように言った。


変わりきった正人を見たナナは動揺を隠せない。

「ね……ねぇ。あれ、本当に私が知っている正人君?」

美国の肩に手をあてながら言った。

「まるで別人じゃない。髪型とかじゃない……。もはや雰囲気自体が違う」


「別人?誰のことを言っているんだい?」

ナナの言ったことに反応すると、正人は作業の手を止め、振り返った。


「ま、正人……。た、体調はどうなの?」

今までに見た正人とは全く違うことがすぐにわかってしまった美国は震えながら聞いた。


「体調?僕はいたって正常だけどね。それより今一番の問題は、僕の部屋に勝手に入ってきて、

何故か僕の心配をしてくれる君達のことについてなんだが?」


正人は冷静な口調で、聞き返した。

その話し方は、美国達が知っている正人とは違い、とても冷たい。


「まさ……と。あたしのこと覚えてないの?」


「そうだよ。あなたの彼女でしょ?」


「彼女?君達は僕のことを知っているみたいだけど、一体誰だい?

それにね、僕は誰とも付き合っていないし、それに悪いけど君みたいな子はタイプじゃないんだ」


無表情に冷たく吐き捨てるように言った正人に対して

「あんた、いくら変化したからって、自分の彼女忘れるなんてどうかしてるわ!」

ナナは声を荒げ反論した。

しかし正人は大きなため息をつき、立ち上がると

「だから、僕には彼女というものはいない。仕事のことでいっぱいなんだ。

邪魔しないで帰ってくれないか?何度も同じことを言わせる頭の弱い子は特にタイプではないんだ」

と二人の意味のわからない質問にゲンナリしたかのように答えた。


「……正人、本当にそう思っているの?

ねぇ、もう今の正人にはあたしが必要ないってこと?」


涙声で正人に言葉を投げかける美国。


「必要も何も、僕は君のことなど知らないのだが?それに気安く名前で呼ばないでもらえないか?

初対面の人に呼び捨てで言われるのは少々不愉快だ」


美国の涙を見ても正人は何かを感じた様子もなく、むしろ迷惑そうな態度をとった。


「……そう」


美国は俯きながら一言呟くと、外へと駆け出していった。

「美国!」

ナナも急いで美国を追いかけていった。


扉が大きな音を立て閉まると、部屋は再び静寂を取り戻す。

何が起きたのかいまいち理解できないが、これで仕事に取り掛かれると思いデスクに戻り作業を始めようとした時、自然と正人の目から涙が、頬を伝い流れ落ちた。


「何故、涙が……」


正人は流れた涙の意味すらもわからなかった。

何もかも書き換えられた理想の自分には、美国の存在はなかった。


そして最後の日を迎えることとなる。

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