第20話 再会
美国とナナは喫茶店で待ち合わせ出会うと、ナナはすぐに勤務先の人の話を聞きたいと言い、
正人がバイトをしていたファミレスに連絡をして店長とアポをとった。
昼のピークタイムを過ぎた時間でなら大丈夫ということを確認すると、
指定された時間に二人は出向いた。
「私に一体どんな話があるのです?」
店長も全く面識のない二人に話があると言われ、少々戸惑った様子。
ナナは簡単な挨拶の後に
「朝霧正人についてお聞きしたいのですが」
と冷静な態度で尋ねた。
「何故、彼のことを?」
店長は不思議そうな顔をしながらナナの顔を見た。
「私達は彼の友人なのですが、最近の彼の行動について不可解な部分がありまして。
それで、彼がここでの仕事ではどのような感じの人間だったかわかる範囲で教えてもらえればと思いまして」
ナナはしっかりとした口調で用件を伝えると、ナナの態度が遊び半分ではないと感じ取り、店長は正人について話し始めた。
「彼の変化には、私も驚いていたんですよ。
確かに長い間ここで働いてましたけど、なんというか……いつも「やる気」というか「覇気」がなくてね。いつもどこかボーっとして遠くを見てるような感じだったんですよ」
二年前から正人のことを知っている店長は、今までの正人の勤務態度について話してくれた。
それまでの正人は、仕事は普通にはするが、常に疑問を持ちながらやっている感じで働いていたらしく店長から見て、向上心が見当たらないために頼ることができないなど決して褒められる内容ではなかった。店長の話は続く。
「でも……とある日からかな?急に何か黙々と仕事をやりはじめてまして。
というのも私は全然気がつかなかったのですがね。ある日、うちのマネージャーが気づいたわけですよ」
二人は真剣に店長の話を聞き入る。
「そこで彼が作っていた資料がマネージャーの目に入り、随分と気に入られたみたいで。
私も後で目を通してみたのですが、本当に彼が作ったものかと我が目を疑いましたよ。
その後、彼の作ったマニュアルは今じゃ全店舗公式採用候補にあがっています。
不思議ですね。あの朝霧君に、こんな才能があったなんて……」
店長は腕を組みながら首をかしげた。
二人は店長に数点質問をした後、
時間を割いて話してくれたことにお礼をすると店をあとにして歩き始めた。
「やっぱり店の人も違和感を感じていたんだね」
美国は自分だけではなかったのだといった感じで言った。
どちらかというと驚いていたのは美国よりもナナのほうだった。
思っていたよりも正人の変化は普通ではありえないことだとわかった。
誰もが感じたはずの違和感だが、誰も否定せずにそれを受け入れ、自然と変わってしまっていることに驚いていた。
「こんなことって……ありえない。ねぇ、そのころ正人君は美国に対して何か変化あった?」
「この頃は、まだいつもどおりの感じだったよ。ただ急に頭がよくなったのとかぶっているかも」
「そっか……。次、行ってみよう」
二人は正人の勤めている会社に向かっていった。
――面会とほぼ同時刻
正人は度々くる頭痛に耐え、頭を抱えながら全力で走っていた。
あのじじい。どこにいやがる!
絶対、何かしたに違いない。あの時……。
気を抜くと今の自分がまた消えてしまいそうな恐怖と戦いながらも、
必死に自我を制御しつつ繁華街へと向かった。
繁華街の片隅に、易者はいつもどおり商売をしていた。あの時と同じ場所で。
易者は正人の姿を見るや否や「やはり、来たね」と呟いた。
それと同時に正人は易者の胸倉を掴みあげると、声を荒げた。
「じじぃ!どうなってんだ!これは!」
易者は表情を変えずに、胸にかかった正人の手をゆっくりと掴み
「手を離しなさい。私は何もしていない」
とゆっくりとした口調で言うと、手を払いゆっくりと席についた。
「頭が!記憶がおかしいんだ!なんだよこれは!元に戻りてーんだよ!」
正人は息を切らしながら叫ぶと、易者は目を閉じ一拍おいてから口を開いた。
「これは君が望んだことだ」




