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第19話 自覚

外へと駆け出すと、美国は携帯を取り出しナナへ電話をかけた。

「もしもし、ナナ?」

「どうしたの?随分余裕がなさそうじゃない?」

「ナナって心理学専攻だったよね?」

「そうだけど。一体どうしたっていうのよ」


相変わらず落ち着いた口調で話すナナとは対照的に、美国には全く余裕がなかった。


「正人が、正人の様子がおかしいの!」

足を止め、息を切らしながらナナに叫んだ。


美国の状態が電話越しでもわかるくらい余裕がないことにナナは気づく。

「ちょっと待って……。落ち着いて話して」

あまりに唐突な発言に少々困惑しながらも、美国を諭した。

「ご…ごめん。いきなりこんなこと言ってもわからないよね」

ハッと我に返った美国は、大きく深呼吸をして少し落ち着きを取り戻すと、

正人の変化についての経緯をナナへ話し始めた。



「多重人格……なのかな……」

この不可解な現象について、ナナもはっきりとした答えが見つからなかった。

「でも、聞いたところによると、それともどこか違うような……」


「正人は易者の人に出会った以降からどんどん変わっていって……。

でも、それがすごく自然すぎて、あたしも気づくまで時間がかかって……」


思い返せば、正人の利き手が逆になったところからおかしかったと気づくべきだった。

急に頭がよくなったりした時に感じた違和感も間違っていなかった。

突然、就職が決まったことなど、あまりに全てがうまく行き過ぎてて、

でも正人があまりにも嬉しそうな顔で話してくるから、大丈夫かなと思っていたけど

普通に考えてみれば、どれもこれもあまりにもおかしい現象なんだ。



「美国、落ち着いて……。少し調べてみようよ。彼のこと」

焦る美国に対してナナはあくまで冷静に対応しながらも優しく美国に言った。

「でも、調べるって」

「そうね。まずは彼の職場の人から聞いてみたり、彼がそこでどう変わったか知りたいわ」

「う……うん」

頷きながら、小さな声で美国は返事をした。

「今日は時間が空いてるから一緒に聞きにいこう。じゃあ、いつもの喫茶店で」

二人は会う約束をして電話を切ったが、美国の表情は晴れない。





――同時刻 正人の部屋


正人に異変が走る。

美国の後ろ姿をボーっと見送っていた正人は次の瞬間、ふと疑問がよぎる。

あれ?俺、さっきなんて言ってたっけ?

自分が先ほど言った言葉を思い返してみた。


確か昨日はパチンコ屋のイベントに行ったと美国に言って……。

それから電話がかかってきて、知らない会社だと思ったにもかかわらず

次の瞬間、「会社か」って思って……。

あれ?なんだ?この違和感は……。


でも俺、昨日は会社に行ってて……。

そうだ。僕は今日、会社に行こうとして倒れたんだ。


違う!俺は昨日まで……何してたんだ?


正人は自分が何を言っているのかわからなくなってきた。


ちょっと待て。なんだよコレ……。なんだこの感覚は。

頭がおかしくなりそうだ。

しばらくグルグルと廻る記憶に翻弄され、困惑していると再び頭痛が起きた。

そして脳裏で、パンと空気がはじけた音と同時に光がはじけたかのような感覚に襲われる。

そして次の瞬間、正人は全てを理解した。

今までの変化の流れが一気に脳内へと駆け巡る。

「うああああああああ……!!!!」

あまりの衝撃に思わず叫び声をあげた。


なんだよ……なんだよコレ? 


利き手が変わったこと

頭脳明晰になったこと

味覚の変化

口調、髪型、記憶


小さな変化から目に見えてくる変化まで、その過程の全てが走馬灯のように巡る。

そして多少の疑問を持ちつつも、拒絶することもなく、

自然に変わっていったことに正人は初めて恐怖した。


「なんだよ。俺が俺じゃなくなってきてる」


『でも、それは僕なんだ』


頭の中で『僕』と名乗る自分が囁く。


「違う!俺じゃないじゃないか」


『でも、僕なんだ……。何もおかしいことはない』


相反する考えを持った自分の声に頭がおかしくなりそうになる。

頭を抱えながら、正人はあの易者の言葉を思い出した。


「君は消える」

「きっとまた君はここにくる」


その言葉を思い出すと、フツフツと怒りの感情が溢れ出してきた。

「あんのじじぃ!俺に何かをしやがったのか!」


正人は頭を抑えながら外にでると、易者と出会った場所へと向かいはじめた。

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