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第18話 混濁

俺は何時間……いや、何日寝ていたんだ?

ものすごい長い時間を寝ていたような気がする。


ぼーっとする頭をあげ、辺りを見渡すと、

部屋の中が自分の部屋とは思えないくらい綺麗になっていることに気づいた。

綺麗に整理された本棚。ゴミ一つ落ちてない床。

そして特に気になったのが、買った覚えのない机の上のパソコンやスーツの数々。

不可解に思ったが、何故か妙に気だるい感じがして考えるのすら億劫だった。


「あ、正人。気づいた?」

台所から美国が駆け寄ってくる。

「大丈夫?」と心配そうに言いながら、正人の額に手を当てた。


「え?大丈夫って何が?」

正人はその行為がよくわからなかったが、その反応に美国は違和感を感じた。


「正人、今朝倒れたじゃない。頭痛で……」

美国は今朝あった出来事を説明したが、正人は何のことかさっぱりの様子で

「倒れた?そんなことあるわけないだろ。今、起きたのに!」と答えた。


「でも、辛そうなのに仕事行こうとして倒れたのに……」


「仕事?俺が?どこに?どこの?」


二人の会話は全く噛み合わない。正人は美国の言っている意味が全くわからなかった。

「俺、バイトはしてるけど就職はしてねーぞ?」

美国に確認するかのように話し、近くに置いてある長鏡を見ると、自分の姿に驚いた。


「うあ!なんだこの社会人っぽい髪型。だせぇ」

正人はクシャクシャっと髪をかき乱すと、

その姿を見ていた美国は、何かの恐さを感じ、恐る恐る聞いてみた。

「ね……ねぇ、正人……。昨日、な……何してた?」

すると正人は、なんでそんなこと聞くのか不思議に思ったが

「昨日はあれだ。パチンコ屋のイベント行ってたじゃんか。その後、メシ食ったべ」

と普通に答えた。

その答えに美国はペタンと腰を落とした。


――記憶がとんでる……。正人の利き手が変わった日に戻ってる。


「ところで、腹減ったなぁ。ガツン朝から肉系の飯でも食いに行くか」

のんきな正人とは対照的に、美国は言葉が出てこない。


「ねぇ……。今日は一緒に病院にいこう。正人」

美国は震える体を抑えながら手をひこうとすると、正人の携帯の着信音が部屋に鳴り響く。


「誰だ?なんだ?どこの会社だ?これ……」


その瞬間、正人に再び頭痛が走った。

そしてまた正人は何気ない顔で「ああ、会社か……」と言い、電話にでた。


その行為に美国は混乱した。

しかし、その口調はまだ「正人が入社したころ」と同じようなぎこちない敬語。


「あ、すんません。今日、急に体調が悪くなって休ませてもらいたいんすけど……」


つい数秒前まで「どこの会社?」と言っていたはずの正人だったが、

瞬間的に変わりなんなく対応している。その態度に美国の顔は青ざめる。


「へへ、なんかさ。めっちゃ優しい声で「休んでいてください」だってさ」

嬉しそうに言ってくる正人に対して言葉がでない。

美国は、もはや何がなにやらわからなくなっていた。


「あの……正人、今日は少し寝ていたほうがいいよ。うん。絶対寝てて。

あたしちょっと出掛けてくるから……」

美国はいそいそと上着を着ると、外へと駆け出していった。


「なんだ?あいつ……」

不思議そうな表情で、正人は美国の後ろ姿を見送った。

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