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第17話 頭痛

ここ最近、正人に起こる頭痛の頻度が、明らかに多くなっていた。

今までだったら、「壁」にぶつかるたびに起こった頭痛。

その頭痛の発生とともに、正人はなんなく乗り越えることができた

この「魔法」のような頭痛であったが、

その頭痛は普通に生活していても頻繁に起こるようになっていた。


クソ……。今日は朝から頭痛が止まらない。

なんだよ。仕事の時だけでいいのに……。

最近の寝不足も重なり今朝の気分は最悪

どうなってるんだ?僕の頭の中は……。

最近飲み続けている頭痛薬の効果はなかった。

休みたいけど、今日は重要な会議があるのに……。


頭を抱えながら正人は無理矢理体を起こし、仕事に行く準備にとりかかっていた。

突き刺さるような鈍い痛みに耐えながら、

それを凌駕する精神力でどうにか抑え込んでいる状況。

誰かに頼られ、それに応えることの喜びを知った正人にとって、

今の生活は自分の人生において最大の幸福と感じていた。

それほどまでに正人は今の生活が大事だった。



僕がいないとまわらない仕事もある。

僕が必要なんだ。行かないと……。

僕は必要とされる人間なんだ。


ふらつく体に鞭を打ち、痛みを抑え家を出ようとしたその時、ドアチャイムが鳴った。


「誰だ……。朝っぱらから……」

玄関を開けると、そこには美国が姿があった。


「あ、正人、おはよう」

少しだけ正人の顔を見に来たつもりの美国であったが、

正人の顔を見ると、美国の表情が変わった。


「ど…どうしたの?正人、顔色真っ青だよ!!」


「なんでもないよ……」


明らかに体調がおかしい正人の様子に、美国はすぐに出勤を止めようと促した。

「ダメだよ。今日は休もう。ね?ね?」


「休めるわけがない。行かないといけないんだ。今日は大事な……」


止めようとする美国の手を正人は払い押しのけようとしたが、美国は力いっぱい両腕を掴んだ。


「だめ!今日は無理だよ!立っているだけで精一杯じゃない!」


「うるさい、黙れ!僕は行かないといけないんだ」


掴まれた手を強引に振り払おうとしたはずだった手が、美国の頬をかすめた。


「いたっ!」


美国は頬を押さえた。


「あ……。悪い……」


少しだけ冷静になったのか正人は謝った。


「……最近ちょっとおかしいよ」


少しの静寂の後、頬を押さえ、俯きながら美国はポツリと呟いた。


「どこがおかしいんだ!」

その言葉に反応し、正人は声を荒げたが、美国は顔を上げ、正人の眼を真剣に見ながら

「絶対におかしいよ!「口調」も変わってきたし「髪型」も「好み」も全部変わってきてる」

と涙をためながらも、強い眼で訴えかけるように言い放った。


「変わってなんかない!僕は前からこうだ!社会にでれば口調も変わるさ!」

正人は強い口調で美国に言い返した。


「違う、違うよ……。ねぇ、お願い。せめて今日は休もう……」


「僕の邪魔をするな!僕は休めない!必要とされているんだ!」


右手でこめかみを必死に抑えながらも、正人は強行姿勢を崩さない。


「おかしいよ!正人。なんか……正人が正人じゃないみたい!」


美国は涙を流し、悲しそうに声を震わせながら、積もりに積もった心の叫びを正人にぶつけた。


「ひつこい!!ボクハ…僕は……い……ってぇ……」


言いかけながら、正人は意識がなくなりかけ、その場に倒れこんだ。


「正人!正人!」

美国は正人の頭を膝に乗せ、心配そうに顔を覗き込んだ。


――薄れ行く意識の中、僕は思った。

あれ……?美国がいうように、僕はどうしたのだろうか。

一体、この短い期間で、僕の中で何が変わってしまったのだろうか。


正人はすでに何がどう変わったのかすらもわからなくなってきていた。


美国は体を震わせながら、正人をギュッと抱きかかえた。

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